信用取引は行っていますか?

 株取引には、「現物取引」と「信用取引」があります。


 現物取引とは、皆さんが通常行っている取引のことであり、信用取引と区別するために「現物取引」という言葉を使っています。


 ネット証券であれば通常は買いたい株を買えるだけの資金がなければ買うことができません。

例えば1,000円の株を1,000株買いたければ、口座に「1,000円×1,000株=100万円」がなければ買えないのです。


 他方、信用取引とは、平たく言えば「証券会社にお金を借りて行う株取引」のことです。証券会社によって基準は異なりますが、楽天証券の場合は担保として最低30%の現金もしくは有価証券が必要なので、最大で3.3倍のレバレッジをかけることができます。


 そのため、30万円の保証金を担保に差し入れれば信用取引で1,000円の株を1,000株(100万円分)買うことができるのです。


 このように、信用取引の特徴の一つが、自らが保有している資金を超えた額の株取引ができるという点です。


信用取引でないとできないこともある!

 また、株式投資をするにあたり、信用取引を用いないとできないこともあります。


(1)信用売り(空売り)
(2)ヘッジ売り
(3)株主優待を得るためのツナギ売り


 これらはいずれも信用売りを用いた手法ですが、目的が異なるため一つずつ説明します。


(1)信用売り(空売り)

 純粋に株価の下落により利益を得ようとする場合に用いるものです。空売りをして、その後その株の株価が下がったところで買戻しをすることで、その差額が利益となります。


 株価が中長期的に下落するような局面では、基本的に買いオンリーでは利益を上げるのがかなり困難になります。でも空売りを使えば利益を上げることができる選択肢が増えます。
 


(2)ヘッジ売り

 大きな含み益のある保有株の株価が下落して売るべき状況となったとき、実際に保有株を売却すると売却益に対して多額の税金が生じてしまいます。


 そこで保有株は保有し続けたまま、同じ株を同じ株数空売りすることにより、実質的に売却したことと同じ効果を得ることができます。


 再び株価が反転上昇したら、ヘッジの空売りを外せば、再び現物の保有株のみを保有継続することができます。


 


(3)株主優待を得るためのツナギ売り

 株主優待を手に入れるには、基準日(受け渡しベースでいえば決算日の2営業日前)の時点で株を保有している必要があります。


 一方、株主優待を入手するためにその株を保有することで株価が変動しますから、株価が大きく下がってしまうと、株主優待の価値以上の損失を被ってしまいます。これでは何のために株主優待を狙ったかが分かりません。


 そこで株主優待の対象となる株を現物で保有しつつ、同じ株を空売りします。そして基準日が過ぎたら現物の株を売り、空売りを決済します(現渡しをしても同じです)。これにより、株価変動のリスクを回避しつつ、株主優待を入手できるという手法です。
 


要注意!信用取引のリスクはかなり高い

 筆者が株式投資を始めた時(まだネット証券は1社もありませんでした)は、株式投資の経験が豊富で、かつ金融資産が3,000万円以上あり、さらに支店長と面談してOKが出た場合のみ信用取引ができる、といったようなルールだったと記憶しています。


 つまり、ベテラン投資家で、多額の金融資産を持ち、かつ支店長から見て信用取引で大失敗して証券会社が損失を被ることがないと思われる個人投資家でないと信用取引をさせてもらえなかったということです。


 これがどういうことを意味するかといえば、「信用取引がかなりリスクの高い取引」であるということなのです。


 現在はネット証券中心に、信用取引を始めるためのハードルはかなり下がりました。楽天証券の審査基準でも、株式投資をある程度の期間行っていて、かつ金融資産が100万円以上あれば信用取引口座を開設できるようです。


(詳しい審査基準は筆者にも分かりませんので、下記に書かれていることからの推定です。)
楽天証券:口座開設基準


 ではネット証券がなかった時代と比べて、現在は信用取引のリスクは低下したのでしょうか。


 いいえ、そんなことは全くありません。今も昔も、信用取引のリスクが高いことには変わりないのです。


 そんなハイリスクな信用取引ですが、使い方を間違えなければ大きな武器になります。


 次回は信用取引を有効に使いこなし、大きな損失を出さないようにするための注意点をお伝えしたいと思います。


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(足立 武志)