配当金目的の株式投資をする個人投資家が増えている

 株式投資で得られる利益には「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」の2つがあります。筆者も含め、多くの個人投資家は、株価の値上がりによる利益、すなわち「キャピタルゲイン」を重視しています。


 成長著しい会社を見つけ、それに投資すれば10年間で20倍、50倍、100倍に株価が上昇するケースも決して珍しくはありません。

まさに株式投資の醍醐味(だいごみ)と言えるでしょう。


 一方、「インカムゲイン」の代表格といえば配当金。数年前までは配当利回りが高くともあまり買われていませんでしたが、インフレの進展とともに、それまで買われていた成長株から、配当利回りが高い銘柄(広義でいう割安株)へ投資資金がシフトしている感もあります。


 配当利回りが高い銘柄への投資は、すでに資産を多く保有している人が、どちらかというと守りの投資をする際に活用すべきものと個人的には思っています。


 例えばキャッシュが5億円ある人が、配当利回り3%の株に投資すれば、税引き前で1,500万円、税引き後でもおよそ1,200万円の配当金が受け取れます。1カ月当たりにすれば100万円が受け取れるので、資産を減らすことなく生活していける、というイメージです。


 ただ、足元では実際に配当利回りが高い銘柄の株価が上昇していることもあり、個人投資家の注目も高まっています。


 そこで今回から何回かにわたり、最近の情勢も踏まえた上で、配当金目的の株式投資について気を付けるべきポイントをお伝えしていきたいと思います。


配当利回りの高さのみで銘柄を選んではいけない

 配当金目的の株式投資で初心者がしてしまいがちな誤りが、単に配当利回りが高いかどうかだけで銘柄を選んでしまうことです。


 例えば証券会社のサイトや投資情報サイトなどで、配当利回りのランキングが掲載されていますので、それを見ればどの銘柄の配当利回りが高いかどうかをすぐ確認することができます。


 しかし、配当金目的に限らず、株式投資全般に言えることなのですが、配当利回りが高い銘柄を見つけたら「割安だ、お買い得だ!」と思うのではなく、「なぜこんなに配当利回りが高いのか?」というような思考をする習慣をつけるようにしてください。


 どの銘柄の配当利回りが高いのか、という情報は誰でも知ることができます。プロ投資家だって当然分かっているわけです。


 プロであれば、明らかに割安な銘柄であればその銘柄を買うでしょうから、通常は割安な銘柄はそうそう見つからないと思っていた方がいいです。割安なのではなく割安に見えるだけ、というものが多いので気を付けてください。


必ず過去の配当金の推移を確認する

 表面上配当利回りが高い銘柄を見つけたら、「なぜこの銘柄の配当利回りはこんなに高いのか?」を考えます。


 結論から言えば、その銘柄の配当金が将来減額される可能性が高いと投資家が思っているからです。


 例えば2023年の初頭あたりでは、大手海運株の配当利回りが軒並み10%を超えていて、配当利回りランキングの上位を独占していました。


 もし今後10%の利回りで配当金がずっと得られるなら、どう考えてもお得です。ですから表面的にみれば極めて割安な株価だったわけです。


 それでも配当利回り10%超だったのは、将来の配当金が減ってしまう可能性が極めて高いと投資家が判断していたからに他なりません。


 海運株の過去の配当金を調べてみると、2023年3月期の配当金よりはるかに少ない年も多々あり、無配だった年もあるのです。


 実際、大手海運各社の2024年3月期の配当金は2023年3月期より大きく減少し、配当利回りも3~4%台に低下しています。


株価の動向も必ず確認する

 もう1点、株価の動向も必ず確認するようにしてください。配当利回りの計算式は次のようになっていて、利回りが変動するファクターは「配当金」と「株価」です。


 配当利回り=1株当たり配当金÷株価×100(%)


 もし配当金が増額されることにより配当利回りが高まるのでしたら特段問題ないのですが、配当金はそのままで株価が下がることにより配当利回りが高まっている場合は注意が必要です。


 このケースも、「なぜ配当利回りが高いのに株価が下がっているのか?」という観点から考えてみるようにしましょう。


 特に、他の高配当利回り銘柄が軒並み上昇基調にあるにもかかわらず、一部の高配当利回り銘柄のみ株価が下落している…という場合は特に注意しましょう。プロ投資家が、その銘柄に関するネガティブな材料を知っているかもしれません。


 多くは程なくして業績予想の下方修正や配当金の減額、といったアナウンスが企業側から発表されます。


 そうなると株価はさらに一段下がってしまうことになりますから、例え配当利回りが高くても、株価が下落している銘柄は安易に手を出さない方がよいでしょう。


 なお、マーケット環境が悪く、配当利回りが高い銘柄であっても一緒くたに大きく売られるような状況であれば、高配当利回り株を安く手に入れることができる機会となりますので、注目しておきましょう。


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(足立 武志)