はじめに
今回のアンケート調査は、2025年2月17日(月)~19日(水)にかけて行われ、通常よりも少し早いタイミングでの調査となりましたが、4,800名を超える個人投資家からの回答を頂きました。
ここまでの2月相場を振り返ると、日経平均株価は月初の3日に前営業日比で1,000円を超える下落を演じるなど、波乱含みのスタートとなりました。
前月の終盤に日米の株式市場を襲った「DeepSeek(ディープシーク)ショック」からの落ち着きが見え始めたというタイミングで、米トランプ政権が「メキシコやカナダ、中国に対して関税を発動する」と表明したことが警戒感を再燃させた格好です。
しかし、株式市場自体は崩れることはなく、関税の発動も猶予されたことなどを受けて、日経平均は昨年10月から続く3万8,000円から4万円のレンジ内で推移が続きました。
今回の調査期間中の日経平均についても、3万9,000円の株価水準が上値の抵抗から下値のサポートへと、ポジティブな方向に役割を変えつつある中で実施されましたが、調査結果を見ると、全体的に「株安・円高」の見通しを強めており、先行きの不透明感を印象づけるものとなりました。
次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。
日経平均の見通し
「DI低下と先行き不安」
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がマイナス2.96、3カ月先はプラス2.10でした。
前回調査の結果がそれぞれ、プラス8.11とプラス11.47でしたので、両者ともにDIの数値を後退させたことになりますが、1カ月先DIがマイナスに沈むのは昨年9月調査(マイナス22.31)以来となります。

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
上の図は、今回調査の1カ月先の回答の内訳グラフですが、強気派の割合が18.67%となっており、前回(27.20%)から大きく減少したことが分かります。
その一方で、弱気派の割合(21.63%)は前回(19.09%)から増えているものの、強気派の減少よりは変動が少なく、中立派の割合も6割近くを占めていることを考えると、確かに1カ月先のDIの値は大きく後退しているものの、目先の株価がどんどん下値をトライしていくほど、投資家心理は悪化していないことが読み取れそうです。
とはいえ、今回注目すべきなのは3カ月先の見通しの方かもしれません。

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
3カ月先見通しの回答の内訳グラフを見ると、強気派と弱気派がほぼ拮抗(きっこう)していて目立った変化がないようにも思えます。
しかし、数値に注目して過去の調査結果を調べると、今回の弱気派の割合(24.88%)は意外と高く、日経平均が1万円を超える下落を見せた後に実施された昨年8月調査(19.35%)や、その後の9月調査(22.76%)よりも弱気派が多くなっており、それだけ中長期的な株高シナリオがイメージしにくくなっている様子がうかがえます。
前回のコメントでも述べましたが、一般的に相場は「少し先の将来を見据えて動く」傾向があります。では、「どのくらい先の将来を見ているか?」については、その時の状況によって時間軸が長くなったり、短くなったりします。
実際に、1月20日に発足した米トランプ政権の動向は、先行きの展開が読みにくく、現在の相場が見据える時間軸はかなり短くなっていると思われます。
さらに、今回のアンケート調査以降には、米国でさえない経済指標の結果が目立ち始めています。
これまでは、「(経済指標の)悪いニュースは、(株式市場にとって)良いニュース」という構図で、経済指標の悪化は利下げ期待を高めて米国の金利が低下し、結果的に株価を支える格好となっていましたが、ここにきて景況感悪化への不安が株価を押し下げる場面が足元で増え始めています。
日本株については先日で一巡した企業決算は総じて悪くはなく、今後も下値で買いが入りやすいと思われる一方、米景況感の悪化と米金利低下に伴う為替の円高進行の「合わせ技」で買い上がりにくくなる展開も想定されるため、「下値の堅さの確認と、買い上がる材料待ち」の状況がまだしばらく続くかもしれません。
今月の質問「紙ストロー廃止、どう思いますか?」
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
ここからは、テーマを決めて行っている「今月の質問」についてです。2月のテーマは「紙ストロー廃止、どう思いますか?」でした。
トランプ米大統領は1月20日の就任後、次々に同大統領の特色を持つ策を繰り出しています。先日は一部で紙ストローを廃止し、プラスチック製ストローの復活を促す大統領令に署名しました。
この件を受け、質問1では紙ストローを廃止することについてどのように感じるかを尋ねました。
質問1:「紙ストロー廃止」について、どう思いますか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
当該質問の回答者の32.9%が「紙ストローを廃止して、プラスチック製ストローを使用するべきだ」と回答しました。次いで、「紙ストローの使用を継続するべきだ」が23.6%、「紙ストローは廃止するべきだが、プラスチック製ストローの使用はやめるべきだ」が19.1%となりました。
紙ストローの廃止に触れた回答(「紙ストローを廃止して、プラスチック製ストローを使用するべきだ」と「紙ストローは廃止するべきだが、プラスチック製ストローの使用はやめるべきだ」の合計)は52.0%と半数を超えました。「紙ストロー」については、どちらかというと否定的な意見が多い印象があります。
これに関連し、質問2ではストローを使用する際に気になる点を尋ねました。
質問2:ストローを使用する際に気になる点はありますか?(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
当該質問の回答者の21.6%が「手や舌、唇に触れたときの感触に違和感がないかが気になる」と回答しました。次いで、「飲料の味・風味が損なわれていないかが気になる」が19.6%、「素材が気になる」が16.0%となりました。
比較的多くの人が、ストローを使用する際に(製造地や形、コストよりも)感触や飲料の味や風味、素材が気になると回答しました。
トランプ氏は、SNSで「BACK TO PLASTIC!」と述べた際、紙ストローについて「壊れることがある、長持ちしない」などと述べました。トランプ氏は、紙ストローの機能面について言及したわけですが、個人投資家の皆さんの一部は、紙ストローの感触が飲料の味や風味に影響を与えていると感じているのかもしれません。
質問3では、トランプ氏によるESG(環境・社会・企業統治)を否定する言動が今後さらに目立った場合、どのような業種や企業に追い風が吹くかについて、自由に書いていただきました(128文字以内)。
大変たくさんのご回答をいただき全てを紹介することはできないため、以下のとおり主要なキーワードとその出現回数を確認します(主要なキーワードはAIツールを用いて抽出。出現回数は一部調整の上、表計算ソフトで算出)。
図:トランプ氏のESG(環境・社会・企業統治)を否定する言動が今後さらに目立った場合、どのような業種や企業に追い風が吹くでしょうか(128文字以内で自由にお書きください)。

出現回数が最も多かったキーワードは「企業」(312回)でした。次点で「石油」(296回)、関連(219回)、エネルギー(181回)、追い風(124回)、産業(122回)、製造(116回)、化学(111回)、環境(103回)などがこれに続きました。
出現回数が上位のキーワードに注目すると、「石油を含むエネルギー関連の企業に追い風が吹く可能性がある」などとまとめることができそうです。
以下は、「石油」を含んだ回答(一部)です(文意を変えず、一部修正をしています)。
- 日本の高性能ゴミ処理機械の輸出が拡大したり、植物性プラスチック製品への移行が進んだりするだろう。また、石油の価格が高くなる。
- トランプ氏はESGの全てを否定している訳ではないだろう。とはいえ、石油関連企業には追い風になるだろう。
- 石油由来製品に関連する企業に追い風になるだろう。
- 石油製品の代替品を製作する企業に追い風になるだろう。
- 石油産業だけでなく、環境技術開発関連企業に追い風になるだろう。
- 石油系プラスチックストローを廃止する方針は変わらないだろう。しかし、代替品の開発が進むだろう。
- 石油の採掘および精製に関わる企業よりも、石油関連製品を扱う企業に追い風が吹くだろう。
ここまで、「紙ストロー廃止、どう思いますか?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを伝えていきます。
為替DI:3月のドル/円、個人投資家の予想は?
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

「3月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家3,017人のうち59%の1,786人が、ドル/円は「円高/ドル安」に動くと予想していることが分かりました。2カ月連続で円高予想が円安予想を上回りました。

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
円安予想から円高予想の割合を引いて求めたDIはマイナス18になりました。円高見通しは前月からさらに14ポイント増えました。

フローよりもストック
「米国景気後退説」は一定周期でマーケットに現れますが、それを示すようなサインは見当たらないことがほとんどか、たとえあったとしてもすぐに消えてしまいます。経済データを見る限り、米国経済はハードランディング(景気後退)どころか、ソフトランディング(景気減速)も回避して「ノーランディング」の実現へ進んでいるようです。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、次回利下げの前にインフレ率低下を示す確かなデータが必要だと強調しています。ところが、1月の米CPI(消費者物価指数)は前年同月比で3.0%上昇し、約1年半ぶりの大幅な増加となりました。
また米雇用市場では、経済成長トレンドに見合った就業者増加数が月15万人前後といわれる中で、3カ月平均は月20万人を超えています。
米経済を考える上で重要なのはフローよりもストックです。新型コロナ終息後に見られた爆発的な雇用拡大がピークを過ぎて、就業者の増加数(フロー)が鈍化しても、それがすなわち景気後退を意味するわけではありません。家計に蓄積(ストック)された貯蓄とそれに支えられた消費力を考慮する必要があるのです。
FRB内部では中立金利の水準が議論となっています。中立金利とは経済が過熱も冷えすぎもしない状態の実質金利のことです。
この水準が現在FRBの推計する3.0%から2015年当時の3.75%程度まで上昇しているとすれば、現在のフェデラルファンド(FF)金利の4.5%はそれほど引き締め的とはいえません。トランプ政権の政策の影響が不透明な中でFRBが利下げを急ぐ理由はありません。
ユーロ/円
楽天証券がユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,922人のうち62%の1,185人が今月のユーロ/円は「円高/ユーロ安」に動くと予想していることが分かりました。ユーロ安予想がユーロ高予想より多かったのは2カ月連続です。

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
円安予想と円高予想の差であるDIはマイナス24になりました。

豪ドル/円
楽天証券が豪ドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,676人のうち63%の1,049人が今月の豪ドル/円は「円高/豪ドル安」に動くと予想していることが分かりました。豪ドル安予想が豪ドル高予想より多かったのは2カ月連続です。

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
円安見通しと円高見通しの差であるDIはマイナス26になりました。豪ドル安予想は前月から6ポイント増えました。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」における主要回答項目で見られた、2024年12月から2025年2月の間で生じた変化に注目します。選択肢は、ページ下部の表のとおり13個です(複数選択可)。
2025年2月17日の調査で「国内株式」を選択した人の割合は63.18%、「投資信託」は46.19%、「外国株式」は41.86%、「ETF」は28.08%、「金やプラチナ地金」は20.65%でした。これらの五つは全13個の中でも、常時、比較的多く選択される選択肢です。
以下の図は、これらの選択肢における2024年12月23日の調査結果と今回の調査結果、そしてその差分を示しています。
図:主要回答項目の2024年12月から2025年2月にかけて生じた変化

2025年1月20日にトランプ氏は米大統領に就任しました。2024年12月の調査は就任のおよそ1カ月前の調査で、2025年2月の調査は就任のおよそ1カ月後の調査となりました。この回答結果は、トランプ氏の米大統領就任が日本の個人投資家が抱く、今後投資してみたい投資先への思惑にどのような影響をもたらしたのかを示唆しているといえます。
端的に言えば「リスクオフ」です。これは比較的大きなリスクを許容し、積極的に運用をするムードが幅広い市場で強まっている状態である「リスクオン」の逆で、リスクをあまり許容せず守りの姿勢を強める投資家が全体的に増えている状態です。
伝統的に危機発生時に注目が集まる傾向がある金(ゴールド)を含む「金やプラチナ地金」の差分がこの間+2.63%となりました。
同時に、景気動向に連動する傾向があるとされる株式(国内外ともに)や、その株式をもとに組成されている銘柄が多数を占めるETF(上場投資信託)と投資信託の差分はいずれもマイナスとなりました。トランプ氏の就任が、投資家が抱くリスクへの警戒レベルを押し上げる一因となったことがうかがえます。
2017年1月から2020年12月までの4年間の第一期目に多くの話題を振りまいたトランプ氏が戻ってきた、関税引き上げ合戦がまた起きるのではないか、これまで大勢で築き上げた考え方が崩れるのではないかなど、投資家の間で少なからず不安が広がったことは想像に難くありません。
トランプ氏は1月20日の就任を経て、2028年12月まで米国の大統領として仕事をすることとなりました。引き続き、今回取り上げた「国内株式」「投資信託」「外国株式」「ETF」そして、「金やプラチナ地金」の動向、とりわけ2024年12月の調査との差分に注目していきたいと思います。
表:今後、投資してみたい金融商品 2025年2月調査 (複数回答可)

表:今後、投資してみたい国(地域) 2025年2月調査 (複数回答可)

(楽天証券経済研究所)