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著者の窪田 真之が解説しています。
「 日本株再急落:関税・通貨戦争を仕掛ける「トランプ砲」と米景気不安で 」
日経平均を急落させた三大不安
日経平均株価は2月28日に急落して、一時3万6,840円をつけました。重要なサポートラインであった3万8,000円を割り込んだことで、新たな下値トライが始まったようにも見えます。
3月3日、日経平均は629円高の3万7,785円と急反発しましたが、上値は重いままです。日経平均を急落させた三大不安が払しょくされていないからです。この三大不安がエスカレートして世界景気はリセッション(景気後退)入りするのか、あるいは、三大不安を乗り越えて世界経済の緩やかな拡大が続くのか、見極めが大切です。
<日経平均週足:2024年1月4日~2025年3月3日>

日経平均を急落させた三大不安は、以下の通りです。
【1】トランプ関税の不安
トランプ関税がエスカレートして、世界景気を悪化させる不安
【2】AIブームが終わる不安:AI関連株の上値が重くなってきた
エヌビディアなどAI関連の中核銘柄の上値が重くなってきたことへの不安
【3】円高不安
先週一時1ドル=148円台まで円高が進んだことへの不安
3月4日、予告通り、対メキシコ・カナダ・中国関税は発動されるか?
世界経済・世界の株式相場にとって、最大の不安は、トランプ関税です。すでに、2月10日に対中国追加関税10%を発動していますが、他にも、関税発動の予告をどんどん増やしています。それが、交渉のための脅しなのか、本当に発動するか、まったく予測不能です。
<トランプ政権が実施済、あるいは、実施を予告・検討している関税>
【1】2月10日対中国で追加関税10%を発動(中国は報復関税を発動)
【2】3月4日、対メキシコ・カナダで25%の関税、中国にはさらに10%の追加関税発動を予告
【3】3月12日、鉄鋼・アルミニウム製品に例外なく25%の関税を課す
【4】4月以降、世界各国に対して、相互関税の発動を検討
【5】半導体、医薬品、自動車、木材製品などへも関税を課すことを検討
トランプ政権が世界経済を破壊するまでどんどん関税戦争をエスカレートさせるか、あるいは、そうならないようにコントロールするか、推測するための重要な手がかりが、今日(4日)に米国で出ます(日本時間では4日深夜)。
3月4日に予告している、対メキシコ・対カナダ25%関税、対中国10%の追加関税を、予告通り実施するか否かです。
直前まで、トランプ大統領は、予告通り実施すると言っています。ただし、メキシコは、関税発動を避けるため、早くからトランプ大統領の要求に応じる姿勢を示しています。
3月4日のメキシコ関税が直前で撤回、または延期されれば、株式市場は好感すると思います。ただし、それを期待して良い状況ではまったくありません。関税はいったん発動してしまって、早期に撤廃する方針かもしれません。あるいは、恒久的に25%関税を維持していくのかもしれません。
想定される最悪シナリオとメイン・シナリオ
トランプ大統領は、株価をよく見ている大統領です。米国株が崩れない限り、どこまでも対外強硬策をエスカレートさせる可能性があります。ただし、米国株が急落すると、緩和的になる可能性もあります。それは、第1次トランプ政権での対中交渉で、たびたび見られたことです。
今回の関税戦争についても、どういう展開になるかは予測不能です。米国株がショック安になるまで強硬策をエスカレートさせていく可能性がありますが、そうならないように、強硬策と緩和策を使い分けていく可能性もあります。
三大不安の先行きについて、考えられる最悪シナリオは以下の通りです。
【1】トランプ関税ショックで、米景気も世界景気も後退局面に入る
【2】AIブームはいったん終了、米国ハイテク株の調整続く
【3】米景気後退で、米金利が急低下、それを受けて、1ドル=130円に向けて急激な円高が進む
【4】米景気悪化と円高急伸を受けて、日本も景気後退期に
私は、そうなる可能性は低いと考えています。
【1】トランプ関税ショックで、米景気も世界景気もやや弱含むものの、その後、トランプ政権が緩和策を取ることで、米景気はソフトランディング。世界景気も持ち直す。
【2】株式市場におけるAIブームはいったん終了するものの、AIによって世界中のビジネスが革新される流れは続く。しばらくお休みした後、年後半にはAI関連株を買う流れが復活する。
【3】米景気ソフトランディング。米金利はやや低下、1ドル=140~150円へ緩やかな円高が進む。
【4】米景気ソフトランディング、緩やかな円高が進む中で、日本の景気・企業業績の緩やかな拡大が続く。
日本株は良い買い場と判断
私は、三大不安はあっても、米景気はソフトランディングして日本の景気・企業業績の緩やかな拡大が続くと予想しています。従って、今、日本株は良い買い場を迎えていると判断しています。
ただし、その考えで良いのかどうか、トランプ関税の先行きを慎重にウオッチする必要があります。短期的なショック安がどこまで続くかは、投機筋の動き次第という面もあるため、予測不能です。
それでも、長期的に割安な日本株が見直されていく流れは変わらないと考えています。短期的なショック安が続く可能性がありますが、日本株の長期的な上昇余地は大きいと考えています。時間分散しながら、日本株を買い増ししていくことが長期的な資産形成に寄与すると考えています。
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(窪田 真之)