みなさんはお金持ちになりたいですか?それとも幸せな人生を送りたいですか?
今回は、幸せな人生を送るために欠かせない、お金と上手に向き合う「ファイナンシャル・ウェルビーイング」という考え方についてご説明します。
そもそも「ウェルビーイング」とは何なのか?
ファイナンシャル・ウェルビーイングについてご説明する前に、そもそも「ウェルビーイング」とは何なのでしょうか。
ウェルビーイングは英語の「well-being」で、1948年に効力が発生した世界保健機関(WHO)憲章の中で次のように使われたところから来ているといわれています。

このように「健康」とは何なのかを説明する言葉で、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあるという記載のうち、「満たされた」の部分になります。well(よい)being(状態)ということで、日本語では「よい状態」「満たされた状態」「幸せ」「健康で快適な状態」「福祉」など、さまざまな言葉で訳されています。
つかみどころがなく、あいまいな概念という印象があるかもしれません。「よい状態」といっても、一人ひとり、考え方、価値観は異なりますので、万人に共通してこういう状態がウェルビーイングであると決めることはできません。
つまり、一人ひとりが自分なりのウェルビーイングがどのような状態かを考え、それを実現していくことが大切なのです。
ウェルビーイングの五つの要素
ウェルビーイングは一言で言えば「満たされた状態」「幸せな状態」といった意味ですが、五つの要素に分解できるという考え方があります。
これは米国の調査会社ギャラップ社によるもので、キャリア、ソーシャル、ファイナンシャル、フィジカル、コミュニティの五つです。
ウェルビーイングの五つの要素(米国ギャラップ社)

まず「キャリア(Career)」ですが、いわゆるキャリア、つまり仕事をイメージされる人が多いかもしれません。しかし、ここではより広い意味で、日々の生活の中で最も時間を使う活動を意味しています。
フルタイムで働いている人は文字通りキャリア(仕事)かもしれませんが、専業主婦(主夫)の人であれば家事や育児、セカンドライフの人であれば趣味や地域活動などがキャリアといえるかもしれません。
次の「ソーシャル(Social)」は人間関係です。よく転職理由のトップ3に必ず人間関係が入っているなどといわれますが、身近な人たちとの関係性がうまくいっているかどうかはウェルビーイングの重要な一つです。
三つ目は本記事の中で中心的なテーマとなる「ファイナンシャル(Financial)」です。
四つ目の「フィジカル(Physical)」は身体的な健康です。体が資本、健康第一といった言葉もありますが、幸せな人生を送っていくために健康であることは誰もが納得できるのではないでしょうか。
最後の「コミュニティ(Community)」は、地域社会への参画、関与になります。ご近所付き合いや、地元町内会での活動などが充実しているかどうかになります。
注目が高まっている「ファイナンシャル・ウェルビーイング」とは?
五つのウェルビーイングのうち、お金と直結する「ファイナンシャル・ウェルビーイング」とは具体的にどんな状態を意味しているのでしょうか。
ファイナンシャル・ウェルビーイングについても、何か一つの厳密な定義があるわけではありませんが、よく引用されるものとして米国消費者金融保護局による次のような説明があります。

つまり、クレジットカードや家賃・住宅ローンなど日々の生活費の支払いを着実に実行しながら家計管理を行いつつ、将来に向けたお金の見通しが立てられており、経済的な制約を受けることなく、人生の行動について十分な選択肢を持っている状態、となります。
ファイナンシャル・ウェルビーイングは、お金の面で「満たされた状態」といえますが、「年収1,000万円を超えればいい」「3,000万円貯まればいい」などと画一的に決まるものではなく、一人ひとり「満たされた状態」は異なるはずです。つまり、客観的に決まるものというより、主観的に決めていくものなのです。
1,000万円の資産があれば十分に満足した人生を送れるという人もいれば、1億円あっても足りない、もっと欲しいとどこまでも満たされていない人もいるでしょう。自分が満たされた状態がどのようなものなのか、ご自身で考え、定めていくことが重要なのです。
ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現していくためには、足るを知り、等身大のライフプラン・ファイナンシャルプランを作成、それを実現していくために行動していくことが大切なのです。
日本政府も注目し、本格的な取り組みが始まったファイナンシャル・ウェルビーイング
これまでご説明したウェルビーイングや、ファイナンシャル・ウェルビーイングという考え方は、政府としても注目し、取り組みを本格化しています。
直近の政府の取り組みについて簡単にまとめると次の表のようになります。
ファイナンシャル・ウェルビーイングについての政府の取り組み

2019年ごろから内閣府の調査や閣議決定された文書に「ウェルビーイング」という言葉が現れ始め、その後、2023年には自民党や金融庁の文書に「ファイナンシャル・ウェルビーイング」が盛り込まれるようになりました。
さらに、2024年にはJ-FLEC(ジェイフレック:金融経済教育推進機構)が設立されましたが、そのミッションは、
「私たちは、一人ひとりが描くファイナンシャル・ウェルビーイングを実現し、自立的で持続可能な生活を送ることのできる社会づくりに貢献します。」
となっています。日本政府が国民一人ひとりのファイナンシャル・ウェルビーイング実現をサポートしていくための組織を立ち上げたのです。
ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現していくためには、どのような方法があるのか、具体的な考え方や取り組み方など、次回以降、ご説明していきます。
【関連リンク】
著者・横田健一が監修した 「ファイナンシャル・ウェルビーイング検定」 が始まりました!
(横田 健一)