時価総額が一定以上の水準にある、アナリストの評価が高いなど、長期投資に適した高配当利回り銘柄を選定し、その中での利回りランキング上位15銘柄をリストアップ。今回は、配当方針の変更を発表したTHK(6481)がランキングトップに躍り出ています。

なお全体相場は目先、米関税策の行方を見極めるべき局面といえるでしょう。


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アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15

配当利回りランキング~外部環境の不透明感が強い中では、権利落ち直後でもバリュー株優位の状況が続く可能性
※データは2025年3月21日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%、時価総額は億円。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。▲はマイナス。

※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。


※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。


 上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。


 3月21日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。


 なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。


日経平均株価は2月末にかけボックスレンジを下放れる形に

 2月7日終値~3月21日終値までの日経平均株価(225種)は2.9%の下落となりました。


 10月以降続いていた3万8,000~4万円レンジ相場を2月28日には明確に下回り、3月11日には一時3万5,987円まで下落し、2024年9月17日来の3万6,000円割れとなりました。トランプ政権の関税政策による米国の景気減速懸念の強まり、それに伴う為替市場でのドル安・円高進行が主に売り材料視される形となりました。


 その後は、過度な米景気減速懸念の後退に伴うドル・円相場の下げ止まりとともに、買い戻しの動きも優勢となってきていますが、これまでの日経平均株価(225種)のボックスレンジ下限レベルである3万8,000円水準では上値の重さも目立つ状況ではあります。


 こうした中、ランキングTOP15銘柄の株価は総じて買い優勢の展開となっています。

値上がりは12銘柄、値下がりは3銘柄にとどまっています。主に輸出関連株やハイテク株主導の下げであったことから、バリュー株は相対的に堅調な動きとなった格好です。高配当利回り銘柄には、3月末配当権利取りの動きなども強まったとみられます。


 上昇銘柄では 東亜建設工業(1885) 、 JFEホールディングス(5411) などが10%超の上昇となっています。東亜建設工業は業績・配当予想の大幅な上方修正が好感されました。中国が鉄鋼産業再編へ減産方針を表明したことなどで、JFEHDも強い動きとなりました。3月12日にトランプ政権は鉄鋼関税を発動しましたが、あらためて悪材料視される形にもなりませんでした。


 半面、 マネックスグループ(8698) の株価下落が目立ちました。ビットコイン価格が2月の後半以降調整に転じたことで、暗号資産関連の一角として連れ安する形になったようです。


配当方針の変更を発表したTHKがランキング最上位に

 今回、新規にランクインしたのは、 THK(6481) 、東亜建設工業(1885)、 サンゲツ(8130) 、 マネックスグループ(8698) 、 TOYO TIRE(5105) 、 コスモエネルギーホールディングス(5021) の6銘柄で、除外となったのは、 日本郵船(9101) 、 AGC(5201) 、 ホンダ(7267) 、 三ツ星ベルト(5192) 、 武田薬品工業(4502) 、 三井化学(4183) となっています。


 THKは配当方針をDOE(株主資本配当率)8%へと変更したことで、配当コンセンサスが大幅に引き上がることとなっています。東亜建設工業は年間配当金計画を従来の54円から71円に、コスモエネルギーHDは300円から330円にそれぞれ引き上げています。


 TOYO TIREも2024年12月期配当金を引き上げたほか、2025年12月期の増配計画で配当水準が高まっています。

サンゲツは国内証券が投資判断を買い推奨に格上げしたことで、コンセンサスレーティングが基準に達しました。


 半面、AGC、ホンダ、三ツ星ベルト、武田薬品工業、三井化学などは株価上昇で相対的に配当利回り水準が低下し、ランキング圏内からは外れています。日本郵船はコンセンサスレーティングが3.4と基準未達になっています。


 アナリストコンセンサスが会社計画の配当予想を下回っている銘柄としては、 商船三井(9104) 、マネックスグループ(8698)が挙げられます。会社計画ベースでの配当利回りは商船三井が6.20%、マネックスグループが5.44%となっています。


 商船三井は第3四半期決算発表時に配当計画を上方修正しているので、会社計画ベースが妥当、いずれコンセンサスは切り上がることになるでしょう。マネックスグループも最低配当額を明示しているほか、特別配当実施も発表しているので、会社計画が下振れる余地は小さそうです。


 THK(6481)は会社側で配当予想を公表していません。年間配当金252円レベルがコンセンサスとなっているようです。2024年12月期末の株主資本からみて、コンセンサスは妥当でしょう。


米トランプ政権の関税策の行方見極めたい

 米トランプ政権では、4月2日に「相互関税」を発動する方針としています。また、分野別の関税措置なども公表する意向のようです。

日本にとっては自動車関税の影響が最も懸念されますが、相互関税の制度設計次第では、日本企業への需要シフト期待が高まる分野なども表面化する余地はありそうです。


 ただ、関税策を強化するほど、米国景気の先行きやインフレ懸念などは強まるものとみられ、国内外の株式市場にとってはマイナスインパクトが優勢となるでしょう。


 これまでのレンジ相場下限(日経平均3万8,000円)水準では戻り売り圧力も強まりやすいとみられる中、米国の関税政策の行方が明確化するまで、株式市場の上値は重くなりそうです。


 3月末配当権利落ち直後は、基本的にはグロース株が相対的に優位の状勢となりやすいですが、外部環境の不透明感が強い現在の状況下では、連続増配が続くような高配当利回り銘柄などには早い段階での押し目買いも妙味になってくるとみられます。


(佐藤 勝己)

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