ネット上では株式投資の輝かしい成功体験を数多く目にします。でも、それをうのみにすると知らぬ間に大きなリスクを抱えてしまうことに。
個人投資家の「成功体験」を気にしたことはありますか?
株式投資の世界では、さまざまな個人投資家が、自身の成功体験を披露しています。その中には、短期間で資産を10倍にしたとか、100万円を1億円に増やした、といった、夢のようなものも数多くあります。
このような成功体験をみると、特に初心者の方は心が動いてしまうかもしれませんが、まず一度立ち止まって考えてみてください。
本当はそのような成功体験をしていないにもかかわらず、誇張した表現でさも成功したように見せているケースが多いので注意です。
また、成功体験そのものはしているものの、かなり高いリスクを取った結果たまたま成功した、というケースがあります。
実はこの後者のケースこそ、私たち個人投資家が気を付けなければいけない点なのです。
成功体験の3パターンとは
成功体験はいろいろなものがありますが、特に比較的短期間で大きな利益を得ることができるパターンとして次の三つがあります。
1.個別株のバイ・アンド・ホールド
米国株であればエヌビディアのように、個別株に投資してある程度の期間保有(バイ・アンド・ホールド)を続けることにより、その株の株価が10倍、100倍と上昇すれば大きな利益になります。
2.集中投資
一つの銘柄に投資可能資金を集中させて投資し、その銘柄の株価が大きく上昇すると大きな利益を得られます。
3.信用取引
信用取引では、手元資金の約3倍のレバレッジをかけた投資ができます。信用取引を使わない場合に比べ、株価上昇の際の利益を最大約3倍に増やすことができます。
大きな成功を目指すと大きな失敗につながる
ここで注意しなければいけないのが、上記の(1)~(3)のパターンというのは、うまくいけば大きな利益になる一方、うまくいかなければ大きな失敗につながってしまうという点なのです。
例えば(1)のバイ・アンド・ホールドをした結果、株価が大きく下がってしまうこともあります。そうなれば大きな損失や含み損が生じてしまいます。
(2)のように一つの銘柄に集中投資し、業績悪化や不祥事などにより投資した株の株価が大きく下落した場合も同様に、大きな損失や含み損につながってしまいます。
そして(3)の信用取引にて買った株の株価が仮に業績下方修正の発表などで急落した場合、レバレッジが3倍かかっていれば、33%の下落で投資元本を全て失ってしまうことになります。
この三つのうち、一つだけでも失敗したときのリスクが大きいのですが、もし三つが合わさっているようであれば、非常に大きなリスクとなります。
一つの銘柄に集中投資して、信用取引も使い、かつ株価が下がってもバイ・アンド・ホールドし続けたならば…。考えただけでも恐ろしい結末が待っている可能性が高まります。
目指すべきは大きな失敗を避けつつ「そこそこの利益」
ではどうすればよいのでしょうか?筆者が心がけているのは、まずは大きな失敗を避けることです。再起不能な大きな失敗を避けることこそが最も重要だからです。
例えば一つの銘柄に集中させるのではなく、10銘柄に資金を分散させれば、一つの銘柄が大きく下がったとしても、全体への影響はかなり小さく抑えることができます。
その代わり、ある銘柄の株価が大きく上昇したとしても、その銘柄が全体に及ぼすインパクトは小さいので、大きな利益を得ることは難しくなります。それでも、やはり大きな損失は避けつつ、そこそこの利益で満足するのが良いと思います。
また、買った株がどこまで下がったら売却・損切りするかのルールをしっかり決めておき、それを実行することができれば、バイ・アンド・ホールドを続けた結果株価の大きな下落により損失が膨らむことを避けることができますし、信用取引で株を買った場合も大きな損失になる前に撤退することができます。
輝かしい成功体験をうのみにせず、過剰なリスクを避け、大きな失敗を防ぐことが、結果として長期的な利益の形成につながるはずです。
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(足立 武志)