3月はトランプ関税によるインフレ懸念と消費者センチメントの悪化が明らかになりましたが、米国の経済が実際にどの程度悪化するのかをハードデータをもとに見ていきます。今後の相互関税発表で、市場は落ち着くのではないかとの楽観的な見方もある一方で、世界同時株安が起こるのではないかとの悲観的な見方もあります。


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4月もトランプリスクによる相場か続く

 3月はトランプ米大統領の関税を巡る発言で相場がかく乱される月でしたが、4月も続きそうです。


 4月はいきなり2日に相互関税発表、3日に自動車追加関税発動が予定されており、これらによって相場はかく乱されそうです。


 相場格言の一つ[Buy the rumor, Sell the fact](「うわさで買って、事実で売れ」)のように、これらの発動によって対象国や税率が絞りこまれ、どの程度影響を受けるのかという予測がつきます。


 また、不透明感が払拭されて相場は戻り、市場は落ち着くのではないかとの楽観的な見方もある一方で、予想以上の厳しい発動内容によって世界景気悪化懸念が一段と強まり、世界同時株安が起こるのではないかとの悲観的な見方もあるため警戒したいと思います。


 楽観論は円安、悲観論は円高に反応するとみていますが、楽観論の場合は不確実性が縮小することから日本銀行の利上げ観測が強まることも予想されるため、円安は抑制的になりそうです。


 また、トランプ米大統領は3月に日本と中国を名指しで通貨安誘導と批判し、解決策として関税を課す可能性を示唆しています。関税交渉の中で、いつ円安批判が飛び出すか分からないため、常に警戒する必要があり、相互関税発表と合わせて批判してくることも予想されるため注意が必要です。


先週3月28日の動きを振り返る

 28日の2月米PCEコア・デフレーターは+2.8%と予想を上回ったことから、発表直後には1ドル=151円手前まで円安が進みましたが、米10年債利回りが4.30%付近まで低下すると150円半ばへ円高となりました。


 その後も円高が進み、3月米ミシガン大学消費者態度指数確報値が57.0と予想を下回った一方で1年先・5年先の期待インフレ率が予想を上回り、速報値から上方修正されるとダウ工業株30種平均が一時600ドル近く下落したことからドル/円は1ドル=149円台の円高となりました。


 また、「EU(欧州連合)は米国の相互関税に対して譲歩案提示を計画している」との一部報道をきっかけに、ユーロ買い・ドル売りもドル/円のドル売り圧力となりました。


 米PCEコア・デフレーターの上昇によりインフレ圧力の根強さが確認され、3月米ミシガン大学消費者態度指数確報値によってトランプ関税によるスタグフレーションへの警戒感が一段と強くなりました。


 このように、3月はトランプ関税によるインフレ懸念と消費者センチメントの悪化が明らかになりましたが、ここからの市場の関心は関税引き上げにより米国の経済が実際にどの程度悪化するのかを、先行して発表されているソフトデータ(心理を測るデータ)ではなく、雇用や消費などのハードデータ(実際の経済活動を反映しているデータ)で確認したいという点にあります。


 もしハードデータが悪化の場合、インフレ懸念はあるものの景気後退懸念の方が強まり、長期金利の低下が予想されます。そして株安、ドル安が起こり、円高が想定されます。

そしてこのような動きが相互関税や自動車関税発動によって増幅されるのかどうか注意が必要です。


 まずは、4日の米3月雇用統計に注目です。非農業部門雇用者数の予想は前月から低下予想です。失業率は前月と同じ予想ですが、移民規制の強化や公務員の削減がどの程度影響しているのか注目です。


 一方で3月分はそれらの影響が表れるのには早過ぎるとの見方もあり、本格的に反映されるのは4月分のハードデータや、1-3月期の米企業決算発表の5月ごろになるかもしれませんが、市場は3月分も注目しています。しかも関税発動後の発表となり、思惑がかなり増幅され、上下の振幅が大きくなる可能性もあるため注意が必要です。


相互関税は日本時間の明日3日午前5時に発表予定

 トランプ米大統領は、4月2日を「解放の日(Liberation day)」として、「米国企業や国民を不公正貿易国による搾取から解放する」と表明しています。また、トランプ米大統領は関税に対する経済への影響を「多少の混乱はある」と述べており、関税による景気への影響を今のところ許容しています。


 しかし、大幅な株安になった場合、あるいはインフレ再燃に対してトランプ支持者たちからも不満が噴出した場合も許容姿勢を続けるのかどうか、それとも柔軟姿勢に変わるのかどうか注目です。


 あまり放置し過ぎると、「解放の日」は「混乱の始まりの日」となり、取り返しのつかない事態に進展するかもしれません。


1ドル=140円を割れるシナリオも浮上してくるか?

 最悪のシナリオは、米景気悪化懸念が強まる→米株大幅安→世界株安連鎖→米長期金利低下→実際に景気悪化が進む→FRB(米連邦準備制度理事会)早期利下げ→ドル安の流れが想定されますが、その場合ドル/円も1ドル=140円を割れるシナリオも浮上してきそうです。


 トランプ米大統領が株急落、消費者センチメントの萎縮、景気の急速な悪化を目の当たりにして柔軟姿勢に転じても、二転三転するトランプ米大統領の姿勢から先行き不透明感は払拭されず、消費も設備投資も慎重になり、少なくとも来年11月の中間選挙まで混乱は続くかもしれません。その覚悟はしておいた方がよさそうです。


(ハッサク)

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