金(ゴールド)への投資法として考えられるのが「現物」と「ETF」。この二つの投資法でどのように税金面で差が生じるのかをパターン別に解説します。
金(ゴールド)は二つの投資法により税金の扱いが異なる
前回のコラム にて、金(ゴールド)への投資は金地金などの現物による投資と、金のETF(上場投資信託)を用いた投資と、大きく二つの投資法があることをお伝えしました。
そして金地金を売却した場合の売却益は総合課税の譲渡所得として課税される一方、金のETFを売却した場合、利益は上場株式と同様に申告分離課税の譲渡所得として課税されることをご説明しました。
今回はこの点を踏まえ、税金面を考慮した場合、現物の投資と金のETFによる投資のどちらが有利かについて考えていきたいと思います。
利益が50万円以下なら現物投資が有利に
金の現物を売却した場合の税金の扱いは以下の通りです。
- 短期譲渡所得(取得から5年以内の売却)
利益-特別控除50万円=課税される所得 - 長期譲渡所得(取得から5年超の売却)
(利益-特別控除50万円)÷2=課税される所得
特別控除50万円があるので、利益がこの範囲内であれば実質的に税金はかかりません。
また、長期譲渡所得に該当する場合、課税される所得額が半分に圧縮されます。従って、給与所得など他の総合課税の所得を含めた課税される所得金額合計が900万円以内(所得税23%、住民税10%)に収まるのであれば、事実上の税率は16.5%以下となり、ETF(税率約20%)より現物の方が税率は低くなります(説明の便宜上、復興特別所得税は無視します)。
利益が大きく給与所得が高額ならETFが有利に
逆に、金の売却益が何千万円単位と大きかったり、給与所得が高額であり課税される所得金額が900万円を超えていたりするような場合は、現物の売却だと所得税・住民税合わせて税率が43%以上(長期譲渡でも実質21.5%以上)となります。金のETFであればいくら利益が生じても税率が20.315%で一定のため有利となります。
また、短期譲渡所得(取得から5年以内)に該当する場合は、金の売却以外の課税される所得が330万円を超えるのであれば現物よりETFの方が税率面で有利です。
もう1点、税金以外の面でこれはかなり大きな要素になると思われますが、金の現物は例えば5グラムとか10グラムの少量を購入するとなると、別途手数料がかなりかかりますので割高となります。
また、例えばすでに1キロの現物を持っていたら、それを小分けにして売ることは困難ですし、売るにしても追加コストがかかります。
しかし金のETFは1口単位で売買できるので、少額(銘柄によっては1万数千円)から購入できますし、売却も同様です。特に金に投資する資金がそれほど多くないのであれば、税金面で多少のデメリットはあるものの、金のETFの方が投資しやすいと思います。
税金以外の「隠れコスト」に要注意!
売却益にかかる税金について考える時、同時に税金以外の「隠れたコスト」についても考える必要があります。それは国民健康保険料や介護保険料といった、いわゆる社会保険料の存在です。
一般に、自営業者など国民健康保険の第1号被保険者の場合、所得に応じて国民健康保険料などの金額が変わります。そしてこの所得には、金の現物や、ETFを売却して得た利益も含まれるのです。
従って、金の現物やETFを売却して利益を得た場合、これを確定申告することでどれだけの社会保険料が増加するかも含め、シミュレーションが必要となります。
源泉徴収ありの特定口座にて金のETFに投資し、利益を得た場合はこれを確定申告しなければ社会保険料計算上の所得に含まれないので、社会保険料の増額を抑えることができます。この点も、源泉徴収ありの特定口座を使う大きなメリットになります。
なお、会社員の方の場合は、給与所得のみで社会保険料を計算しますので、金の現物やETFを売却して得た利益がいくらであっても、社会保険料には影響はありません。
(足立 武志)