荒れの株式市場にかすかな希望の光! トランプ関税は緩和され、世界不況は回避されるでしょうか? 米中交渉・日米交渉の行方と、日本株底入れの兆しを分析します。
トランプ関税に二つ「緩和の兆し」
4月2日にトランプ米大統領が発表した「相互関税」は想定を超える高い税率かつ広範囲で、世界中にショックを与えました。米国を含めて世界的な景気後退に陥る懸念が高まり、世界的に株が暴落しました。
ところが、先週トランプ関税が緩和に向かう兆しが二つ、出ました。今後、米国と中国、および米国と世界各国の交渉が順調に進み、トランプ関税緩和が確定的となれば、世界的に本格的な株価反発が起こると予想します。
ただし、米国と世界各国の交渉が順調に進むか、なお予断を許しません。特に米中交渉は簡単ではありません。米中分断がエスカレートして世界不況に陥るリスクもまだあります。
それでも私は、日本株は割安で長期的な上昇余地が大きいと考えているので、日本株は「良い買い場」と判断しています。リスクを適切にコントロールしながら、時間分散しながら日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると判断しています。
トランプ関税、二つの「緩和の兆し」とは、以下【1】と【2】です。
1:4月9日:ベッセント財務長官の発表
「中国を除き、相互関税の上乗せ分は90日延期(全ての国に適用される10%関税は維持)」と発表されました。中国以外は、とりあえず90日間、共通関税10%のみの適用となりました。これで、世界不況に向かうリスクはかなり低下したとみなされ、世界的に株が急反発しました。
ところが、まだ安心するのは早かったのです。トランプ大統領が中国への関税率をさらに引き上げて145%としました。
そこに、もう一つ、朗報が出ました。
2:4月11日:米国税関・国境取締局(CBP)通達
米国が中国から輸入しているスマホ・パソコンなどが、相互関税の適用外とされました。
<相互関税の適用外となった主なハイテク関連製品>
スマホ(iPhoneなど)・PC・PC部品・SSD(PCなどに使われるストレージ)・モニター・フラットパネルディスプレイ・半導体製造装置・半導体素子(ダイオード・トランジスタなど)
中国に対する関税を145%まで引き上げたことを受けて、中国からさまざまなハイテク製品・部品を調達している、米国のハイテク産業が重大なダメージを受けることが明らかになりました。その代表が、中国にiPhoneの製造を委託しているアップルです。
このままでは、米国でのiPhone販売価格が50%以上、上昇するとの試算もあり、アップル株が急落していました。スマホが145%関税から除外されたことで、iPhoneへのダメージは回避される見通しとなりました。
そもそも米国は、パソコン関連製品や半導体製造装置で中国からの輸入に深く依存していました。145%関税から除外しないと、米国のハイテク産業が重大なダメージを受け、米国でのAI開発も滞る結果を招くことになりました。除外が決定されたことで、ハイテク産業へのダメージは回避される見込みです。
ただし、13日には、ラトニック米商務長官が、「ハイテク製品は関税除外ではなく、1~2ヶ月後に発表される半導体関連関税の対象となる」と発表しています。25%くらいの関税がかけられるリスクがあり、不安は続きます。
今後、米中で前向きな交渉が進むと良いのですが、米国も中国も互いに引き下がれない事情があり、交渉は難航が予想されます。
株式市場の警鐘がトランプ大統領に響いたか
トランプ関税が、貿易相手国だけでなく、米国を傷つけるという現実に、トランプ政権がようやく気づき始めたことを歓迎したいと思います。
トランプ関税の犠牲者は、米国内にたくさんいます。トランプ大統領の支持者もショックを受ける人が増えていると思います。
【1】 米国の消費者:生活必需品の値上がりでダメージ
【2】 米国の自動車・半導体・衣料品などの生産者:グローバルなサプライチェーン(供給網)破壊でダメージ
【3】 米国の農業・畜産業者:報復関税によってダメージ大
何よりも、トランプ大統領に響いたのが、世界的な株価暴落だと思います。株価下落を放置すると、大統領の支持者離反が増える可能性があります。
先週の日経平均振り返り
ここで改めて、先週(営業日4月7~11日)の日経平均株価を振り返ります。先週は、急落→急騰→急落→急騰→急落と大荒れの1週間でした。結果的に、1週間で日経平均は195円下がって3万3,585円となりました。
大荒れの1週間をざっくり振り返ると、以下の通り。
先週の日経平均、振り返り

4月2日にトランプ大統領が発表した「相互関税」は世界中にショックを与えました。米国を含めて世界的な景気後退に陥る懸念が高まりました。
それでも、発表直後の株式市場の反応は、それほど大きくありませんでした。
ところが、トランプ大統領が、株の下落や短期的な不況は仕方ないという発言を繰り返し、4月5日に相互関税第1弾として、世界中の国に一律10%の関税を発動すると、株式市場に恐怖が広がり、4月7日の日経平均は暴落しました。
8日は割安感から買い戻されましたが、9日にはいよいよ相互関税上乗せ分が発動されることを受けて、再度急落しました。
ところが、9日ぎりぎりに「中国を除き、相互関税の上乗せ分は90日延期」と発表があり、10日の日経平均は急騰(1日で史上最大の上げ幅)しました。世界不況の不安が低下したとみられました。
その後、米中の関税戦争エスカレートにより、再び世界経済悪化の不安が高まり11日の日経平均はまた急落しました。
日経平均に底入れの兆し?
大荒れの1週間を経て、週足は以下の通りとなりました。
日経平均週足:2024年1月4日~2025年4月11日

テクニカル分析で見て、少し、底入れの兆しが出ています。先週の週足が長い下ヒゲを出したことによります。ここから、米中対立が改善に向かう兆しが少しでも出れば反発が続くと思います。どうなるか、米中交渉しだいです。
日米交渉も楽観はできない
日本に対する上乗せ関税は90日間停止なので、その間に米国と交渉することが必要です。日本に対して、以下の要求が出されています。全てを受け入れることはできませんが、米国が「十分な成果を得た」と納得できる、なんらかの方策が必要です。
米国による日本に対する要求
【1】 米国自動車の輸入にかかる非関税障壁の緩和
【2】 米(コメ)など農産物にかける関税の引き下げ
【3】 米国からLNGなどの輸入拡大
【4】 アラスカLNG開発への投資
【5】 防衛費の協力拡大
「日本は交渉で優先される」とベッセント財務長官はすでに表明しており、しっかり交渉すれば、相互関税が恒久的に10%にとどまる可能性も見えてきました。ただし、米国からの要求は厳しく、楽観はできません。
日本株「買い」判断を継続
短期的なショック安は終わっていないかもしれません。それでも長期的な投資判断は変わりません。日本株は、割安で、長期的な上昇余地は大きいと考えています。日経平均が2028年までに5万円まで上昇する予想は、まったく変わりません。
このような局面で投資判断するのに、ファンダメンタルズ分析だけでは十分ではありません。テクニカル分析とファンダメンタルズ分析、両方を駆使する必要があります。
最後に、私の著書を紹介いたします。テクニカル分析を学びたい方には左側の「株トレ」(黄色い本)を、ファンダメンタルズ分析を学びたい方には右側の「株トレ ファンダメンタルズ編」(水色の本)をおすすめします。一問一答形式で株式投資の基礎を学ぶ内容です。
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