突然訪れた4月初旬の株価急落。保有株を売却して損失が生じたり、そのまま保有を続けた結果含み損が発生したりしている個人投資家も多いはず。
突然訪れた「トランプ関税」による株価急落
4月初め、米国のトランプ大統領による関税政策に対して、国内外の景気悪化の懸念から株価が急落、日経平均株価は4月7日には一時3万0,792円74銭まで下落し、2024年8月5日の「令和のブラックマンデー」につけた安値3万1,156円12銭を割り込むほどになりました。
株価急落には、特に株式投資の経験がまだ長くない個人投資家の方にとっては突然のことで驚いたことでしょう。
株価急落の際に気を付けるべきことなどは、筆者の株式投資のコラムにて解説していますのでそちらをご覧ください。
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株価急落で税金の扱いがどうなるのかが気になる、という個人投資家の方もいらっしゃると思いますので、そちらについて本コラムにて解説していきます。
含み損はどうなるの?
株価が大きく下落する中、保有している株を売ることなく持ち続けた結果、含み損を抱えてしまった、という方も少なくないと思います。
例えば株価急落前に保有株を売却して利益を出している場合、この利益と含み損とを相殺して、節税することはできるのでしょうか?
答えは、「含み損や含み益はまだ実現していないものなので実現した損益と相殺できない」です。
含み損をいくら抱えていても、それは実現していないため、税金には何ら影響を及ぼさないということになります。
もしすでに生じている利益と相殺して節税したいのであれば、含み損が生じている株を売却して損失を実現させる必要があります。
売却して実現した損失の扱いは?
今回の株価急落時に保有株を売却して損失が実現した、という方もいると思います。
実現した損失が、一般口座や源泉徴収なしの特定口座にて生じたものであれば、1年間(1月1日~12月31日)の他の実現した損益と全て合算して、トータルが利益であればそれに対し20.315%の税金が課税されます。トータルが損失であれば税金はかかりません。
また、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座にて生じた実現損失は、税務上は切り捨てとなるため、利益や配当金との相殺はできません。
そして、源泉徴収ありの特定口座の場合は次のような取り扱いになります。
・2025年になってから今回の損失が生じるまでに利益がある場合
その利益と損失を証券会社の方で計算し相殺した結果、源泉徴収されすぎとなった金額の還付が受けられます。
・損失が生じるまでの2025年のトータルの損益がマイナスの場合
もともと源泉徴収はされておらず、損失が増えるだけのため、税金の還付はありません。
年間トータルで損失となった場合にすべきことは
現時点ではまだ年の途中ですので上記のような扱いとなりますが、2025年の年間を通してトータルの売却損益が損失となった場合、次のことを行いましょう。
1. 2025年に受け取った配当金と売却損を、確定申告により相殺して還付を受ける
ただし、源泉徴収ありの特定口座かつ配当金の受け取り方法を株式数比例配分方式としている場合は、上記の処理は証券会社の方で行ってくれますので確定申告は不要です。
2. 配当金と売却損を相殺してもまだ損失が残る場合は、確定申告をして翌年以降に繰り越す
配当金と相殺してもまだ売却損が残る場合、最長3年間にわたり繰り越しをして、翌年以降の売却益や配当金と相殺することができます。
ただし、そのためには必ず確定申告をすることが必要ですので、忘れないようにしましょう。
(足立 武志)