近年、安全保障は各国にとって最重要課題となっています。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の悪化など、国際社会はさまざまな地政学的リスクに直面しています。

こうした状況を受けて、多くの国が国防予算を増やし、防衛分野への新たな技術投資が活発になっています。この記事では、最先端の防衛テクノロジーがどのように進化し、世界の安全保障や経済にどのような影響を与えているのかをご紹介します。


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世界の防衛費の動向と注目分野

 世界の軍事支出は、過去20年間で一貫して増加しています。2023年には2兆4,000億ドルという過去最高額に到達し、今後も増加傾向が続くと見込まれています。2030年には3兆4,000億ドルを超える可能性も指摘されている状況です。


防衛テクノロジー:イノベーションの盾~グローバルな安全保障と新技術の未来~
世界の防衛費 推移

 この背景には、各地での紛争や国際的な緊張の高まりに加え、AI(人工知能)やサイバーセキュリティなどの新しい防衛技術への需要拡大があります。防衛費の使い道も、従来の兵器や兵士の維持費だけでなく、ハイテク分野へとシフトしています。


 特にNATO(北大西洋条約機構)加盟国では、防衛費をGDP(国内総生産)の2%以上に引き上げる国が急増しています。これは各国が国防に本気で取り組み始めている証といえるでしょう。


 防衛分野で注目されているのが、AIやロボティクス、ドローン(無人航空機)といった先端技術です。


AI

 AIは膨大なデータを解析し、最適な作戦や意思決定をサポートします。敵の動向を予測したり、サイバー攻撃に自動対応したりするなど、従来の人間中心の戦争から、AIが主導する「新しい戦争」へと変わりつつあります。


ドローン・無人機

 ドローンは、人間が直接危険な場所に行かずとも偵察などができるため、戦場での人的被害を減らす役割があります。

小型で安価なものから、大型で長距離飛行が可能なものまで種類が豊富で、軍事利用の規模が急速に拡大しています。2023年の世界のドローン市場は約330億ドル、2030年にはさらに大きな規模に成長すると予想されています。


ロボティクス・無人地上車両

 無人地上車両やロボット戦闘車両も増加中です。これらは地上での偵察や物資輸送、場合によっては戦闘も担います。AIを搭載することで、より自律的に行動できるようになっています。


防衛産業はハードからソフトへ拡大

 現代の戦争は、物理的な攻撃だけでなく、サイバー空間での戦いも主戦場になっています。


 サイバー攻撃とは、インターネットやコンピュータネットワークを使った攻撃のことで、敵の通信を妨害したり、重要な情報を盗んだりできます。そのため、各国はサイバーセキュリティへの投資を強化しています。米国防総省のAIやサイバー関連予算は過去数年で大幅に増加しており、世界でも同様の動きが広がっています。


 また、これまでの防衛産業は、主に戦車や戦闘機、ミサイルなどの「ハードウエア」に依存していましたが、近年はAIやソフトウエア、サイバーセキュリティ関連の「ソフトウエア」企業が成長しています。


データ分析ソフト企業

 データ分析ソフト企業大手の米パランティア・テクノロジーズは、米政府との大型契約で売上を急拡大しています。2024年には米政府向け売上高が前年同期比40%増になるなど、今後も成長が期待されている企業です。


ドローン・無人機メーカー

 軍用ドローン市場も急成長しており、2030年には340億ドルを超えると予想されています。

ドローンはコスト効率が良く、従来の高価な兵器に比べて圧倒的に安価です。例えば、数百ドルのドローンが、数百万ドルかかる戦車や大砲を無力化できるケースも出てきています。


防衛ソフトウエア企業

 軍隊がAIやデータ分析に依存するようになるにつれ、ソフトウエア開発企業の存在感が増しています。米国防総省のソフトウエア支出はまだ全体の1%程度ですが、今後は大きく増えると見込まれます。


技術革新がもたらす戦争の経済性

 新しい防衛技術は、「戦争の経済性」を大きく変えつつあります。これまでは軍事力=資金力・人口とされてきましたが、今後はAIやドローンの活用によって、小規模な国や軍隊でも大国に対抗できる可能性が広がっています。


 また、人間の兵士が危険にさらされる機会が減り、より「スマート」で効率的になることで、軍事行動のコストやリスクも変化しています。地政学リスクの高まりや軍事予算の増加、そしてAIやサイバーセキュリティ、ドローンといった先端技術の進化によって、世界の防衛産業は大きな転換期を迎えています。


 従来型の兵器も依然として重要ですが、これからの防衛分野の主役は「デジタル」と「自律型技術」となります。国防を担う新しい技術は、より柔軟でコスト効率が高く、イノベーションと成長の大きな可能性を秘めているのです。


 今後10年で世界の防衛費はさらに増加し、関連する企業や産業にとって大きなビジネスチャンスが生まれるでしょう。私たちの安全保障や経済にも深く関わるテーマとして、防衛テクノロジーの進化に注目していく必要があります。


<関連ETF>
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<ご参考>
当記事は米国Global Xが執筆したリサーチ&レポート『 防衛テクノロジー:イノベーションの盾 』をGlobal X Japanが要約したものです。


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