近年、株主優待を廃止または縮小し、代わりに、配当金の増額など、配当金を重視する流れが強まっています。この傾向は、はたして個人投資家にとってプラスなのでしょうか? 


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株主優待→配当金重視の流れが継続

 個人投資家の多くが楽しみながら投資している「株主優待銘柄」。しかし近年、株主優待を廃止または縮小し、その代わりに配当金を重視する流れが続いています。

おそらくこの流れは今後も止まらないと思います。


 なぜなら、株主優待というのは「株主平等原則」に反する可能性が高い制度だからです。


 例えば「1,000株以上保有している株主に1万円分の食事券を株主優待として贈呈」としている飲食業の企業があるとします。


 この場合、900株保有している株主は、株主優待の恩恵を何も受け取れません。1,000株保有していれば株主優待を受け取れますが、株主平等の原則からすれば、900株保有している株主は1,000株保有している株主の90%分の優待を受け取れていても、おかしくありません。しかしそうなっていない点で、不平等が生じています。


 また、例えば、機関投資家など、100万株保有している株主は株主優待を受け取れますが、それは1,000株保有している株主と同じ優待しか受け取れません。100万株保有している株主と1,000株保有している株主とで、得られる優待が同じである点も、株主間の不平等として問題となっているのです。そのため、上場企業では株主優待を廃止・縮小し、配当金重視の流れとなっています。


配当金であれば「株主平等原則」にかなう

 もし配当金であれば、株主平等の原則を果たすことができます。株主平等の原則とは、決して株主「一人一人」の平等ではなく、保有している株数に比例して、同じだけの恩恵を受けることができる、という意味合いです。


 配当金が1株10円とすれば、900株保有している株主は10円×900株=9,000円、1,000株保有している株主は10円×1,000株=1万円、そして100万株保有している株主は10円×100万株=1,000万円と、完全に保有する株式数に比例した配当金を受け取れます。


 株主優待の制度は、そもそも個人投資家を対象としたものであることもあって、これができない(物理的にはできるが、実施していない)のです。


株主優待から配当金へシフト、投資対象の魅力は変わる?

 では、私たち個人投資家にとって、株主還元の方法が株主優待から配当金にシフトした場合、どんな影響があるのでしょうか?


 多くの個人投資家は、株主優待を金銭的価値に置き換えて考えると思います。そのため、株主優待が完全に廃止となり、かつ配当金の増額もなされないというのであれば、単純に株主優待が廃止された分だけ、株主として得られるはずの恩恵が減ってしまいます。


 しかし、配当金が増額され、それが株主優待廃止の影響を上回るのであれば、配当金により株主還元が行われるため、実利益が増えるはずです。


 株主優待を廃止する企業を見ると、廃止した分、配当金を手厚くするケースが多いように見受けられます。それならば、株主優待廃止をネガティブに捉えなくてもよいと思いますし、その銘柄を投資対象から除外する必要性も薄いと考えます。


配当重視の流れは個人投資家にとって〇?×?

 もう一つ、株主優待廃止→配当金重視の流れで個人投資家が気になるのが、税金面での影響です。


「株主優待品は非課税だったのに、配当金になると課税される」と思っている個人投資家も少なくないと思います。


 しかし、そもそも株主優待品は非課税ではありません。「雑所得」としてしっかりと所得税の課税対象となります。会社員など給与所得者で、給与所得以外の所得が20万円以下の場合、かつ確定申告をしないのであれば所得税が課税されない、といった特例があるため、事実上多くの個人投資家にとって課税対象となっていないだけです。


 そして、配当金は配当所得として、所得税・住民税合わせて20.315%の税率で課税されますが、企業側が税率を上回るほどの配当金重視の政策を打ち出してくれているのであれば、特段の心配は不要と考えます。


 また、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で保有すれば、配当金も非課税とすることもできますから、そちらも合わせて検討するとよいでしょう。


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(足立 武志)

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