パランティア・テクノロジーズの2025年12月期1Qは、39.4%増収、営業利益2.17倍。米軍を中心とした米国政府向けに加え、米国の民間企業向けが好調。

4月にはNATOと軍事用AIシステムに関して新規契約を締結した。楽天証券の目標株価を維持する。引き続き中長期で投資妙味を感じる。


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毎週月曜日午後掲載


本レポートに掲載した銘柄 パランティア・テクノロジーズ(PLTR、NASDAQ)


1.パランティア・テクノロジーズの2025年12月期1Qは、39.4%増収、営業利益2.17倍。

 パランティア・テクノロジーズ(以下パランティア)の2025年12月期1Q(2025年1-3月期、以下今1Q)は、売上高8.84億ドル(前年比39.4%増)、営業利益1.76億ドル(同2.17倍)となりました。今1Q売上高は前4Q決算発表時の会社側売上高ガイダンス8.58~8.62億ドル、レンジ平均値8.60億ドル(前年比35.6%増)の上限を超えました。


 売上高を顧客属性別に見ると、政府向けは4.87億ドル(同45.4%増)と好調でした。このうち米国政府向けは3.73億ドル(同45.1%増)、その他政府向けは1.14億ドル(同46.2%増)となりました。米軍中心に米国政府向けの好調が続いています。今1QにはAI搭載の戦術情報収集車両「TITAN(タクティカル・インテリジェンス・ターゲッティング・アクセス・ノード)」の1号車を米陸軍に納入しました。「TITAN」は衛星、航空機、高高度センサー、地上データを統合し、即時に戦術判断が可能となる能力を持ちます。顧客数も増加し(政府顧客は前4Q140から今1Q147へ増加。

顧客数は直近12カ月間の顧客数)、顧客当たり売上高は高水準を維持しました。


 また、コマーシャル向け(民間企業向け)は、3.97億ドル(同32.8%増)となりました。このうち米国向けは2.55億ドル(同70.0%増)と大きな伸びを示しました。顧客数の増加(コマーシャル顧客数は前4Q372から今1Q397へ増加。このうち米国のコマーシャル顧客数は同214から255へ増加)に加えて、前4Q以前に新規顧客となった大手企業顧客がパランティアのAIシステムを評価し、継続的に発注している模様であることが寄与しました。パランティアが米軍から受けている高い評価が米国の民間企業に波及していると思われます。


 前年比で大幅増収、前4Q比でも増収だったことによって、営業利益率は1年前の前1Q12.8%、前4Q1.3%から上昇し、過去最高となりました。(前4Qに前倒しで計上された従業員に対するストックアプリシエーションライト(SAR:インセンティブ報酬の一種で、権利を付与した時点での株価と権利行使時の株価の差額を、現金または株式で支給する)の付与にかかる費用1.31億ドルを除くと、前4Q営業利益率は17.1%となる。)


表1 パランティア・テクノロジーズの業績
パランティア・テクノロジーズ決算:米政府向け売上高の拡大、NATOと新規契約諦結、業績好調続く
株価 117.30ドル(2025年5月9日)時価総額 275,500百万ドル(2025年5月9日)発行済株数 2,552.818百万株(完全希薄化後、Diluted)発行済株数 2,348.679百万株(完全希薄化前、Basic)単位:百万ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成。注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。注3:会社予想は予想レンジの平均値。

表2 パランティア・テクノロジーズ売上高内訳:四半期ベース
パランティア・テクノロジーズ決算:米政府向け売上高の拡大、NATOと新規契約諦結、業績好調続く
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成注:端数処理のため合計が合わない場合がある。

グラフ1 パランティア・テクノロジーズの顧客属性別売上高
パランティア・テクノロジーズ決算:米政府向け売上高の拡大、NATOと新規契約諦結、業績好調続く
単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 パランティア・テクノロジーズ:直近12カ月間の顧客数
パランティア・テクノロジーズ決算:米政府向け売上高の拡大、NATOと新規契約諦結、業績好調続く
単位:件、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ3 パランティア・テクノロジーズ:顧客当たり売上高
パランティア・テクノロジーズ決算:米政府向け売上高の拡大、NATOと新規契約諦結、業績好調続く
単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

2.2025年12月期、2026年12月期も好業績が予想される。

 今1Qの好調な業績と、コマーシャル向け、政府向け両方での顧客数増加により、今後も業績好調が予想されます。会社側は今2Q売上高ガイダンスを9.34~9.38億ドル、レンジ平均値9.36億ドル(前年比38.1%増)としました。


 また、2025年12月期通期の売上高ガイダンスを、38.90~39.02億ドル、レンジ平均値38.96億ドル(同35.9%増)、うち米国コマーシャル向け11.78億ドル(同67.8%増)以上としました。

前回の売上高ガイダンス37.41~37.57億ドル、レンジ平均値37.49億ドル(同30.8%増)、うち米国コマーシャル向け10.79億ドル(同53.7%増)以上から上方修正しました。


 楽天証券では、今1Qまでの業績と会社側ガイダンスを参考にして、2025年12月期を売上高39.00億ドル(前年比36.1%増)、営業利益8.00億ドル(同2.58倍)、2026年12月期を売上高54.00億ドル(同38.5%増)、営業利益15.00億ドル(同87.5%増)、2027年12月期(参考値)を売上高78.00億ドル(同44.4%増)、営業利益30.00億ドル(同2.00倍)と予想します。前回予想から小幅上方修正します。


 今後の注目点は、米軍を中心とした米国政府向けの伸び、米国を中心としたコマーシャル向けの伸びとともに、2025年4月にパランティアがNCIA(北大西洋条約機構(NATO)情報通信システム機関。NATOの作戦や演習に情報通信システムを提供する組織)と締結した契約の中身です。


 この契約は契約額が非開示ですが、NATOが公表したリリースによれば、AIベースの軍事システムをNATO加盟国に配置するもので、大規模言語モデル(LLM)から生成AI、機械学習に至るまで、幅広いAIアプリケーションを通じてNATO加盟国に共通のデータに基づく戦闘能力を提供する計画です。最終的には、情報統合と標的特定、戦場の認識と計画、そして迅速な意思決定が強化されるとしています。


 欧州は軍事だけでなく、民間企業へのAI導入が遅れているため、この動きが欧州全体のAI需要とパランティアの事業へどう影響するか注目されます。


表3 パランティア・テクノロジーズ売上高内訳:通期ベース
パランティア・テクノロジーズ決算:米政府向け売上高の拡大、NATOと新規契約諦結、業績好調続く
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成注1:端数処理のため合計が合わない場合がある。注2:会社予想合計はレンジ平均値。

3.パランティア・テクノロジーズの今後6~12カ月間の目標株価は、前回の160ドルを維持する

 パランティア・テクノロジーズの今後6~12カ月間の目標株価は、前回の160ドルを維持します。


 政府向け売上高の拡大が続いていること、NATOとの契約で欧州での事業拡大が期待できること、米国でのコマーシャル顧客数が増加しており、将来顧客当たり売上高の増加が期待できることを評価しました。


 株価収益率(PER)水準が高いため、短期的には株価変動が大きくなる可能性がありますが、引き続き中長期で投資妙味を感じます。


本レポートに掲載した銘柄 パランティア・テクノロジーズ(PLTR、NASDAQ)


(今中 能夫)

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