米国と中国は14日、相互に課していた関税を115%に引き下げた。日経平均は一時的に落ち着きを取り戻したものの、今後のトランプ砲には依然として警戒が必要だ。

今注目したいのは、関税の影響を受けにくい「関税フリー」銘柄。独自の強みを持つ5銘柄を厳選した。


トランプ砲に影響されにくい「関税フリー」銘柄5選:オリエンタ...の画像はこちら >>

米中、関税引き下げで合意。日経平均は3万8,000円台を回復

 4月の米国市場は「株売り、債券売り、通貨売り」のトリプル安が複数回発生するなど波乱の1カ月となりましたが、5月に入り、落ち着きを取り戻しています。


 英国が真っ先に米国との関税交渉で合意したほか、スイスでの関税交渉の結果、米国と中国は相互に課していた追加関税を115%引き下げました。早期の解決と引き下げ幅の大きさなどが材料視されて、足元の日経平均株価は3万8,000円台を回復しました。


 一方、相互関税が話題になって以降、相対的に買われていた医薬品株は、トランプ大統領が「医薬品に関する関税措置について2週間以内に発表する」と5月上旬に明らかにしたことで、 住友ファーマ 、 大塚ホールディングス 、 エーザイ 、 塩野義製薬 などがさえない推移です。


 世界の株式市場は落ち着きを取り戻しつつありますが、関税は、医薬品や自動車、鉄鋼・アルミニウム、半導体、映画、航空機部品など多岐にわたる分野が対象となっていますので、「トランプ発のSNS砲」によって、いつまた投資家心理が悪化するかわかりません。


 13日に発表された4月の米消費者物価指数(CPI)は、前年同月比の上昇率が2.3%と、市場予想を下回りました。15日には4月の米小売売上高が発表されます。


 これらの経済指標は、2月4日、中国に対して発動した10%の追加関税の影響を受けています。米経済指標が市場予想よりも悪化した場合、金融市場では「米国スタグフレーション」への警戒感が再燃し「トリプル安」が発生する可能性があります。


トランプ政権の不安続く。関税影響が少ない情報通信、サービス、建設業などに注目

 今後、関税に対する警戒感や不透明感が小さくなることはあっても、トランプ政権が続く限り「完全に無くなる」ことはないでしょう。トランプ関税に振り回される展開は続く公算が大きいので、最初から関税の影響を受けにくい分野を投資対象に選んではいかがでしょうか?


 その分野こそ「関税フリー」です。関税フリーは本来「特定の国との間で締結された自由貿易協定に基づいて関税が免除される業種」を指しますが、ここでは、関税の影響を受けにくいという意味合いで使っています。東証株価指数33業種で見ますと、「情報・通信」や「サービス業」「建設業」「陸運業」など主にディフェンシブセクターが該当します。


 もっとも、これらのセクターの銘柄が全て対象というわけではありません。セクターは同じでも売上高の比率で北米市場が高い場合、当然、関税の影響を受ける可能性があります。日本国内での売上高が高い銘柄が対象となってきますので、比較的グロース市場やスタンダード市場の中小型株が多く該当します。


トランプ砲に影響されにくい、関税フリー銘柄5選

 今回は、関税フリーの観点から5銘柄をご紹介します。気まぐれで朝令暮改のトランプ大統領は少なくとも3年半ほど米国をコントロールしますので、関税フリー銘柄は中長期的にも関心が高まりやすいと考えます。


銘柄名 証券コード 株価(円)
(5月14日終値) 特色 カウリス 153A 1,460 FATF第5次審査を前に金融機関からの引き合い増加へ ミライロ 335A 606 デジタル障害者手帳が大阪・関西万博で採用 FFRIセキュリティ 3692 3,605 「能動的サイバー防御」法案閣議決定で企業の引き合い増加へ オリエンタルランド 4661 3,296 入園者数増加で今期売上高は増加見込み セコム 9735 5,213 闇バイトによる治安悪化は同社の追い風に

カウリス<153A>

 2024年3月、グロース市場に上場した銘柄で、主に銀行や証券などの金融機関を対象に不正アクセス検知サービスを展開しています。オンライン決済における不正被害が急増している中、2028年にはマネーローンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)による第5次審査が予定されています。


 FATFによる審査で、日本は「アンチ・マネーローンダリング(AML)への対応が遅れている」との指摘を受け続けてきたため、国主導でAML対応を強化しています。今後、金融機関からの引き合いは増加すると考えます。


ミライロ<335A>

 今年3月、グロース市場に上場した銘柄で、デジタル障害者手帳「ミライロID」の開発・運営や障害者の目線に立った「ユニバーサルマナー」に関する研修などを展開しています。社長自身、生まれつき骨が弱く折れやすい病気で車いすに乗っており、自身の経験・体験などを踏まえ大学在学中に起業しました。


 ミライロIDは、大阪・関西万博にて障害者手帳と同様の確認書類として採用されたこともあり知名度は向上しています。今後、導入する事業者の増加により、使用できる場所は大幅に拡大するでしょう。


FFRIセキュリティ<3692>

 官公庁や企業、個人を対象にサイバーセキュリティ対策サービスを展開しています。政府は2025年2月7日、サイバー攻撃の兆候や攻撃元を特定し無害化する措置を講じる「能動的サイバー防御」を導入するための法案を閣議決定しました。


 同社は、セキュリティ脆弱(ぜいじゃく)性や、マルウエア(悪意のある目的を持ったソフトウエア)関連分野などのセキュリティ技術に強みを持っていることから、企業からの引き合いは増加すると考えられます。


オリエンタルランド<4661>

 世界を代表するテーマパーク東京ディズニーリゾートを運営しており、日経平均内需株50指数採用銘柄の一つです。訪日外国人旅行者数増加に伴う海外ゲストの増加が今後も期待できることなどから、入園者数の増加に伴う売り上げの伸びが見込まれています。


 正社員など従業員の人件費負担増加が響き、2026年3月期の各利益予想は減益ですが、有料チケットの販売増で客単価が上がれば、各利益見通しは会社計画を多少上回ると考えます。


セコム<9735>

 事業者向けや家庭向けにセンサー付きシステム警備事業を展開しており、日経平均内需株50指数採用銘柄の一つです。日本各地で闇バイトの組織犯罪(匿名・流動型犯罪グループ)による強盗事件多発に伴う治安悪化を背景に、監視カメラなどの商品売上や、個人向けホームセキュリティが伸びています。


 治安悪化は日本のネガティブな要因ですので国の早急な対応が望まれますが、同社への追い風となるでしょう。


(田代 昌之)

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