今日は、想定外の大きな下落が起こった時の損失を一定範囲に抑えるのに役立つ、「逆指値(ぎゃくさしね)売り注文」の使い方を、解説します。
日本株は長期投資で買い場と考えるが短期的ショックは終わっていない可能性も
米中が互いに関税を大幅に(115%)引き下げたことで、トランプ関税不況への不安が急速に低下し、株価は世界的に急反発しました。これでトランプ関税不安は終わったと考えるのは早計です。
大幅に下がったと言っても、米国はなお対中国30%の追加関税を、中国は対米10%の追加関税を発動したままです。自動車、鉄・アルミの関税も発動済みで、さらに半導体関連関税・医薬品関税・航空機部品関税の導入が検討されています。これだけでも、世界景気にかなりのダメージを及ぼす可能性があります。
また、米国が世界中の国々に課した相互関税はとりあえず10%に据え置かれていますが、90日間の貿易交渉が妥結しないと、また大きく引き上がる可能性もあります。これからもショック安は繰り返す可能性があります。
日本株は割安で長期的には良い買い場と考えていますが、短期的には急落・急騰を繰り返す可能性があり、リスク管理は大切です。割安な日本株を時間分散しながら買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。
こんな時、守りながら攻める方法として、逆指値売りを使う方法があります。保有銘柄の想定外の急落に備えて、「逆指値・成行売り」注文を入れておくことも考えて良いと思います。
まず、指値・成行注文をきちんと使いこなす
株式を売買するときの注文の出し方で、まず覚えるべきは「指値(さしね)注文」、次は「成行(なりゆき)注文」です。この二つだけきちんと使いこなせれば、問題ありません。私は25年日本株ファンドマネージャーをやってきた経験がありますが、自分で出した売買注文の99%が、指値か成行でした。
もし、「指値」「成行」注文の使い方がよくわからない方がいらっしゃいましたら、このレポートの末尾に添付しているレポートで、「指値」「成行」について、しっかり学んでください。
さて、次に、運用の達人になるために、覚えるべきが、「逆指値(ぎゃくさしね)」注文です。想定外の急落にそなえるには、「逆指値の成行売り注文」をしっかり使いこなすことが、リスク管理上、大切です。
「逆指値」売り注文とは
一言でいうと、「想定外の株価下落に備える損切り予約」です。
「ここまで株価が下がってしまったら、さらなる下落によって損失がどんどん拡大する可能性がある」と考えられる株価水準を決め、「そこまで下がったら、自動的に売り注文が出る」ように予約しておくのが、「逆指値・売り」注文です。
逆指値注文には、逆指値・成行売り注文と、逆指値・指値売り注文があります。私は、損切り予約として使うのは「逆指値・成行売り注文」に限るべきと思います。このレポートでは、逆指値・成行売り注文に絞って、説明します。
逆指値・成行売り注文のイメージ図

それでは、具体例で説明します。以下のように株価が1,000円でついている時、1,100円に指値売り注文を入れることができます。また、900円で逆指値の成行売り注文を入れることもできます。
指値売りと逆指値売り

A社株が、1,100円まで上昇し、あなたが入れた指値売り注文にヒットすれば、1,100円で利益確定売りが成立します。一方、A社株が下落し、900円をつけた時は、損失確定の成行売り注文が出されます。
その時点で、900円に指値の買い注文が残っていれば、900円での損切りが成立します。
逆指値の成行売り注文を入れておけば、きっちり損切りできます。株価をずっと見ていると、いろいろ迷って損切りできなくなる人も、損切りできるのがメリットです。

「億り人」は損切り達人
株のトレーディングで1億円以上の金融資産をつくった人を「億り人」と呼びます。億り人の成功談に、「これこれを買ったら株価10倍に」のような話がたくさん出てきます。
ただし、どんな投資の達人でも、選んだ銘柄で100発100中はあり得ません。たくさんの銘柄をトレードしているうちに、「そのまま持っていたら株価が半値になっていた!」という銘柄も多数あるはずです。そういう失敗銘柄を、暴落初期にすばやく損切りできないと、億り人にはなれません。
「保有し続けていたら半値になっていた銘柄を、暴落初日に10%の下げで損切りした」というような「損切り成功談」が、億り人にはたくさんあるはずです。
一般の個人投資家が、機関投資家やデイ・トレーダーに対して不利な点は、「日中、常に相場を見ていることができない」ことです。投資銘柄に想定外の悪材料が出て急落する時、大きな損失を抱える前にすばやく損切りすることは、長期のパフォーマンス向上にとても大切です。
ところが、個人投資家の場合、家事・育児に忙しかったり、会社で仕事中だったりして株価を見ていないうちに大きく下がってしまうことがあります。
そうならないように、値動きの荒いテーマ株に投資する場合は、逆指値・成行売り注文を入れておくべきと思います。
逆指値の成行売り注文を、しっかり使いこなす
逆指値注文には、売り注文も、買い注文もあります。意味を説明すると、以下の通りです。
◆「逆指値売り注文」:指定した価格まで、株価が下がった時、出される売り注文
◆「逆指値買い注文」:指定した価格まで、株価が上がった時、出される買い注文
株式投資の初心者の方は、逆指値の成行売り注文だけ覚えて、使っていただければOKです。逆指値買い注文は、信用取引で信用売りしたときなどに使うくらいで、通常の取引で使うことはほとんどありません。
なお、逆指値注文は、米国株でも出すことができます。以下の説明もご参照ください。
【米国株】逆指値注文の仕組み
▼著者おすすめのバックナンバー
2024年12月5日: 「指値」「成行」注文の賢い使い方。ETF・株式投資デビューを考える方必見!(窪田真之)
(窪田 真之)