日経平均急落・急反発の裏で動く、海外投機筋の先物売買を分析します。外国人投資家主導で急反発してきた日経平均ですが、目先、反落する可能性があると考えています。
日経平均は3万8,000円の壁でいったん打ち返される
先週(営業日5月12~16日)の日経平均株価は5週連続の上昇、1週間で250円上昇して3万7,753円となりました。13日には一時3万8,494円まで上昇して、トランプ関税ショック前のレンジ(3万8,000~4万円)を回復しました。その後、戻り売りが増えて、先週末は3万8,000円を割れました。
日経平均週足:2024年1月4日~2025年5月16日

トランプ関税に緩和の兆しが出ていることが、日経平均および世界的な株の反発につながっています。先週は12日、トランプ政権が、「米中は90日間、互いに関税を115%引き下げることで合意」と発表したことが好感されました。米国の対中追加関税は145%→30%に、中国の、対米追加関税は125%→10%に引き下げられます。
米中間の貿易が完全に止まるリスクが勃発したことで、世界不況が起こる不安がありましたが、とりあえず、それはいったん回避できる見込みとなりました。
投資家の心理の変化は、恐怖指数といわれる指数の動きに表れています。「日本版恐怖指数」といわれる「日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)」は低下し、トランプ関税に対する恐怖が低下したことが分かります。
日経平均と日経平均VI:2024年4月30日~2025年5月16日

日経平均は一時3万8,000円を超えました。日経VIは、22.9まで低下しました。日経VIは通常、24くらいの水準で推移します。日経平均と日経VIの動きだけ見ると、あたかもトランプ関税ショックは終わったかのように見えます。
しかし、実際にはトランプ関税不安は、やや緩和しただけでまったく解決していません。日米関税交渉は難航しています。これから、半導体関連関税・医薬品関税・航空機部品関税など、さらなる関税が追加される可能性もあります。そう考えると、足元の日経平均の反発はやや速すぎると思われます。
急落も急騰も外国人が主導
日経平均は、下がる時は急な下げに、上がる時は急な上げとなる傾向が強いのですが、その主な理由は「海外投機筋が日経平均先物で巨額のトレードをするから」です。外国人投資家から見て、日本株は世界景気敏感株です。
従って、グローバルに不安が高まる時、海外投機筋はまず日経平均先物を売る傾向があります。不安が低下する時は日経平均先物を慌てて買い戻す傾向があります。
近年の日経平均急落・急騰は、海外投機筋の先物売買が主導しています。
まず、令和のブラックマンデーといわれた昨年7~8月の外国人売買動向をご覧いただき、それを、トランプ関税ショック時の売買動向と比較します。
令和のブラックマンデー:日経平均と外国人投資家の日本株売買動向(売り越し・買い越し)2024年6月24日~2024年8月9日

上のグラフをみると、令和のブラックマンデーを演出したのは、外国人の売買であることが分かります。上のグラフに示されている外国人売買は、「株式現物の売買」と「株価指数先物の売買」の合計です。驚くべきは、その内訳です。
日経平均騰落幅と外国人売買(買い越し・売り越し):2024年6月24日~8月9日

令和のブラックマンデー直前の日経平均上昇を主導したのは、2兆円を超える外国人の日経平均先物買いでした。そして、その後の急落を主導したのは3兆円を超える外国人の日経平均先物売りでした。
それでは、足元のトランプ関税ショックによる日経平均急落・急騰についても見てみましょう。ここでも、外国人の売買が日経平均を動かしていることが分かります。
トランプ関税ショック:日経平均と外国人投資家の日本株売買動向(売り越し・買い越し)2025年3月24日~5月16日(外国人売買動向は5月9日まで)

内訳は、以下の通り、日経平均の急落は、外国人の2兆円を超える日経平均先物売りが主導したことが分かります。一方、その後の急反発は、外国人の1兆円を超える株式現物の買いが主導しています。
日経平均騰落幅と外国人売買(買い越し・売り越し):2025年3月24日~5月9日

トランプ関税に対する楽観は、足元やや行き過ぎと思われます。日経平均の急反発を演出してきた外国人の買いは、目先一巡する可能性があると思われます。
日経平均は上値の重い展開か
日本株は割安で長期的な上昇期待は大きいという見方は変わりません。ただし、短期的には、トランプ関税不安が続く中での反発が速すぎると考えています。関税不安が蒸し返す時に、日経平均が反落することも考えられます。
日本株の保有が大きい人は、少し利益確定売りしても良いと思います。まだ日本株の保有が少ない人は、少しずつ時間分散しながら買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えます。
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