「損切り」は見込み違いの株を早めに見切り、損失を最小限に抑える手法ですが、損失が積み重なり手痛いマイナスになることもあります。それくらいなら、含み損のまま放置する「塩漬け」状態の方がまだマシ、という考え方もあるようです。

長期投資の観点で、どちらがよいのか、数値を基に考えてみましょう。


「損切り貧乏」と「塩漬け」結局どっちが損? 3年後の比較で考...の画像はこちら >>

「損切り」と「損切り貧乏」

 筆者は常々、「個人投資家が株式投資で大きな失敗をしないためには適時適切な損切りが重要である」とお伝えしてきました。


 この損切りは、プロの投資家も当然ながら行っていることであり、見込み違いであることが発覚した時点で速やかに損切りを行うことで、損失を最小限に防ぐことができます。逆に、損切りを適時適切に行わなければ、やがて株価の大きな下落により塩漬け株をつくってしまうことになります。


 その一方、損切りを繰り返すことで、小さな損失が積み重なり、無視できない金額になってしまうこともあります。このことを俗に「損切り貧乏」と呼んだりします。


「損切り貧乏」と「塩漬け」のどちらがマシ?

 では、損切り貧乏と塩漬けのどちらがマシなのでしょうか? これは前提条件の取り方次第でどうにでも変わってしまうのですが、分かりやすいように極めてシンプルに、かつ実際にもあり得る前提条件で考えてみます。


▼前提条件
  • 損切りをしない場合は、1年当たり投資資金の30%が塩漬け株になる(含み損を抱えて売れない)
  • ​損切り貧乏の場合は、1年当たり投資資金の10%が損切りにより減少する

 このような前提条件で、当初投資資金=100として、3年間投資すると、次のようになります。


塩漬けvs損切り貧乏比較例


  塩漬けの場合 損切り貧乏の場合 1年後  100のうち30が塩漬け
(自由に投資できる資金の残り70) 投資資金100のうち10%の損切りで残り90 2年後  70のうち21が塩漬け
(自由に投資できる資金の残り49) 投資資金90のうち10%の損切りで残り81 3年後  49のうち15が塩漬け
(自由に投資できる資金の残り34) 投資資金81のうち10%の損切りで残り73

 もしこの状況で、3年後に大きな上昇相場がスタートした場合、損切りをしないと100のうち66が塩漬けで動かせないので、残り34しか投資資金が残っていません。


 一方の損切り貧乏の場合は73の投資資金が残っています。上昇相場初期の絶好の時期に、より多くの投資資金を保有している投資家の方が高いパフォーマンスになる可能性が高いです。


 もちろん、損切りをしない場合は塩漬け株をまだ保有したままですから、大きな上昇相場で塩漬け株の株価が上昇して塩漬けが解消されたり、買値以上に株価が大きく上昇したり…ということもあるでしょう。


 しかし、筆者の元に寄せられる相談でダントツなのは、今も昔も全く変わらず塩漬け株についてであることを合わせて考えると、やはり多少の損切りによる目減りはあっても、適切な損切りを行う方が長い目でみて高い投資成果が期待できるのではないかと思います。


損切り貧乏と塩漬けの頻度を少しでも下げるためには

 とはいっても、損切り貧乏も塩漬けも、できれば避けたいのが本当のところ。

これらの頻度を少しでも下げるためにはどうすればよいでしょうか。


 まず、損切り貧乏を減らすためには、「いつでもどこでもすぐ買わないようにする」ということが重要です。


 株を買う時期によって、さらなる株価上昇が期待できるケースと、そうでもないケースがやはりあります。短期間で大きく上昇した後などは、その後株価が下落してしまうことの方が多いです。株価が横ばいの動きを続けているような場合も同様です。


 そのような場合は、積極的な新規買いを控えることにより、余計な売買により損切りとなってしまうことを減らすことができるはずです。


 塩漬け株の防止は、損切りを適時適切に行うことであるのは言うまでもないのですが、そもそも銘柄選定時に、長期間にわたり株価が上昇する可能性がある銘柄を、ファンダメンタル分析を用いてしっかり行うことにより、塩漬け株になってしまう銘柄を完全にではないもののある程度避けることができると思います。


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(足立 武志)

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