トランプ関税で世界経済が不透明な中で、内需に軸足を置いたセクターへの投資可能性を模索します。
1. TOPIXはトランプ相互関税発表で急落したものの急回復
2025年4月3日付で「 もたつく日本株の行方はどうなる? 」という投稿をしたころ(3月下旬に執筆)、米国東部時間4月2日にトランプ米政権は相互関税を発表、その内容がサプライズとなり世界的同時株安に見舞われてしまいました。
しかし、9日に「相互関税」の90日間停止措置が発表されて以降は、11日にパソコンやスマートフォンなどが相互関税の対象外となり、5月に入ると対立していた米中間でお互いに関税率を大幅に引き下げるなど、米政権の態度が大幅に軟化したことを受け、株式市場は急回復しました。
図表1で説明しますと、過去12年程度の「東証株価指数(TOPIX)と予想1株当たり利益(EPS)に基づく妥当レンジ(赤線と青線)の推移」で、今回の急落で一時は妥当レンジ下限を大幅に下回りましたが、昨夏同様に急回復し、おおむね元の水準(妥当レンジ上限)に戻ってきました。
一時は瞬間的に割安感が高まりましたが、足元では割安感はありません。投資判断が難しい水準に戻ってしまいました。
[図表1] TOPIXと予想EPSに基づく妥当レンジの推移

2. 年初来の業種別騰落状況はおおむねリターン・リバーサル的
トランプ米政権の関税政策に揺れる日本株式市場について、図表2で年初来の業種別騰落状況などを見てみました。横軸が昨年末~4月7日(TOPIXが年初来安値を付けた日)の騰落率、縦軸がその後の騰落率です(5月13日まで)。ご覧のように、4月7日まで大きく下落した業種や各指数が、その後に大きく戻っており、リターン・リバーサル的であったことが分かります。
図表1ではTOPIX全体としては割安感が無くなってしまったことを示しましたが、全体としては投資妙味が薄れた中で、有望な投資先を検討してみました。
東証REIT指数は4月7日までの年初来下落率がわずかマイナス1.1%しかない中で、その後に+5.6%反発しており、5月13日時点の年初来騰落率は+4.4%とプラスです。また、TOPIX-17不動産セクターも4月7日までの年初来下落率がマイナス3.8%なのに対して、その後に+13.0%反発し、同年初来騰落率は+8.7%とTOPIX-17業種中で最大です。
両者ともに国内不動産を収益源とする典型的な内需セクターであり、トランプ関税政策で不確実性が高まる中で、安定したパフォーマンスを残しています。
[図表2] TOPIX-17業種、TOPIX、東証REITの騰落率

3. 東証REIT指数は妥当レンジのほぼ割安圏に位置し、レンジは上向き方向
図表3は東証REIT指数の妥当レンジを、予想分配金利回りをベースに考えたものです。同図の期間の予想分配金利回りの平均値が4.5%程度であったことから、利回り3.5~5.5%を妥当レンジとして見ると、東証REIT指数はおおむねレンジ内に収まりました。
また、TOPIX(株式市場全体)とは異なり、足元水準は妥当レンジ下限に位置しており、足元でも十分に割安感があることに加え、妥当レンジが上向き方向にあります。
東証REIT指数がコロナ禍前に妥当レンジの上限付近にあったタイミングは前回のオフィス市況のピークと重なりますが、足元のオフィス市況は底入れし、改善傾向にあります。空室率や平均賃料は前回ピークに及んでいませんが、その方向へは動いており、今後にキャッチアップの期待が持てると考えています。
東証REIT指数やTOPIX-17不動産セクターは共に国内不動産を収益源としており、トランプ関税で世界経済が不透明な中では、こうした内需に軸足を置いたセクターへの投資も検討に値するのではないでしょうか?
[図表3] 東証REIT指数と予想分配金利回りに基づく妥当レンジの推移

<関連銘柄>
NEXT FUNDS 東証REIT連動型上場投信(証券コード:1343)
NEXT FUNDS 不動産(TOPIX-17)(証券コード:1633)
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(阪井 徹史)