アルファベットの2025年12月期1Qは、12.0%増収、20.2%営業増益。検索広告、ユーチューブ広告などから成るグーグル・サービスの増収増益率は鈍化したが、グーグル・クラウドはAI関連サービスが牽引し好調を維持。
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「 決算レポート:アルファベット(「Google AI」を有料で提供する) 」
毎週月曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)
1.アルファベットの2025年12月期1Qは、12.0%増収、20.2%営業増益。
アルファベットの2025年12月期1Q(2025年1-3月期、以下今1Q)は、売上高902.34億ドル(前年比12.0%増)、営業利益306.06億ドル(同20.2%増)となりました。
表1 アルファベットの業績

表2 アルファベットの地域別売上高

2.セグメント別動向-広告の伸びは鈍化したがグーグル・クラウドが好調-
1)グーグル・サービス
セグメント別に見ると、主力事業であるグーグル検索他(主にグーグル検索広告収入)は507.02億ドル(同9.8%増)となりました。前期の各四半期は傾向的に増収率が低下するなか二桁増収を維持していましたが、今1Qは一桁増収へ伸びが鈍化しました。業種別には金融からの出稿が伸びました。ユーチューブ広告も89.27億ドル(同10.3%増)と前期の各四半期に比べ伸びが鈍化しました。
また、グーグル・ネットワークは72.56億ドル(同2.1%減)となり、前期同様一桁減収が続きました。グーグル・アド・マネージャー(Google Ad Manager、統合型広告管理プラットフォーム)とアドモブ(AdMob、モバイルアプリ向け広告)が減少しましたが、アドセンス(AdSense、ウェブサイト向け広告)が増加しました。
グーグル検索等、ユーチューブ広告とともに、鈍化している理由は景気要因、トランプ関税に対する警戒感、メタ・プラットフォームズ、アマゾンの広告事業との競合など複合的要因によると思われますが、アルファベットの主力事業なので、今後の展開が注目されます。
一方で、グーグル・サブスクリプション、プラットフォーム&デバイスは売上高103.79億ドル(同18.8%増)と順調に伸びました。前期同様、ユーチューブ・プレミアム(ユーチューブの有料会員)とグーグル・ワン(オンラインストレージサービス)が伸びました。
この結果、グーグル・サービスは売上高772.64億ドル(同9.8%増)、営業利益326.82億ドル(同17.2%増)となりました。コスト削減等で営業利益率は前1Q39.6%、前4Q39.0%を上回る42.3%へ上昇しましたが、ドル高もあり増収率が鈍化したため、営業増益率は20%を下回りました。
表3 アルファベットのセグメント別業績(四半期)

2)グーグル・クラウド
グーグル・クラウドは、売上高122.60億ドル(同28.1%増)、営業利益21.77億ドル(同2.42倍)となりました。AI関連サービスが大きく伸びました。営業利益率は前1Q9.4%、前4Q17.5%から今1Q17.8%へ上昇しました。
一方で設備投資も増加しました。全社設備投資は前4Q142.76億ドルから今1Q171.97億ドルに増加しましたが(グラフ1)、この設備投資の多くがグーグル・クラウド向けのAIサーバー、内製AI半導体とエヌビディア製GPU、データセンターへの投資です。大型投資が続いた結果、全社減価償却費は前1Q34.13億ドルから今1Q44.87億ドルへ増加しました。
また、営業キャッシュフローに占める設備投資の比率も傾向的に上昇しています(グラフ3)。
グラフ1 米国の大手IT設備投資動向:四半期

グラフ2 米国の大手ITの営業キャッシュフロー動向:四半期

グラフ3 アルファベットの設備投資/営業キャッシュフロー

3)その他のベッツ
その他のベッツは、売上高4.50億ドル(同9.1%減)、営業損失12.26億ドル(前年同期は10.20億ドルの赤字)となりました。その他のベッツの中にはヘルスケア事業、インターネット関連事業、自動運転、量子コンピュータなどが入っていると思われます。これらの新規事業が赤字のため、大赤字が続いています。
3.今期も増収増益率の鈍化が予想されるが、二桁増収増益は維持か。「Google AI」を有料化。
今1Qの業績内容を見て、楽天証券ではアルファベットの2025年12月期を売上高3,920億ドル(前年比12.0%増)、営業利益1,340億ドル(同19.2%増)、2026年12月期を売上高4,420億ドル(同12.8%増)、営業利益1,590億ドル(同18.7%増)と予想します。前回予想に対して、2025年12月期、2026年12月期とも売上高は下方修正、営業利益は小幅上方修正します。
今期の検索広告、ユーチューブ広告等のグーグル・サービスは引き続き10%前後の増収率に止まると予想しましたが、これには後述の「Google AI」有料化とグーグル検索へのAI導入の影響を織り込んでいません。有料化された「Google AI」がグーグル・サービスにどの程度寄与するのか寄与しないのか、またグーグル検索にAIを導入することが検索広告にどのような影響を与えるのかに注目したいと思います。今のところは、グーグル検索にAIを導入することが広告収入に対してネガティブな影響を与えると予想されるため、「Google AI」を有料化したという見方が一般的です。
またグーグル・クラウドは引き続き好調を予想します。ただし、AI関連サービスに対する設備能力を増強するために、設備投資を前期525億ドルから今期は約750億ドルに増やす計画です。
前述したように、今後を見るときに重要なのがAIの有料化です。5月20日付けでアルファベットは、Geminiを始めとするAIを1つのサービスにまとめた「Google AI」の有料プランを発表しました。それによれば、グーグルの各AIを制限なく使える「Google AI Ultra」は、249.99ドル/月(最初の3カ月間は124.99ドル/月)となります。また、これまでの「AI Premium」は「Google AI Pro」となり料金はこれまでと同じ19.99ドル/月(最初の1カ月間は無料)となりました。
また、グーグル検索にAI検索の機能を搭載します。当面は米国ですが、今後数週間かけてグーグル検索とグーグルアプリの検索バーに新しいAIモードタブが表示されるようになる見込みです。
この2つの施策が、アルファベットの業績に寄与することができるのか注目されます。
表4 アルファベットのセグメント別業績(年度)

グラフ4 検索エンジンの世界シェア

4.アルファベットの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の220ドルから200ドルに引き下げる。
アルファベットの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の220ドルから200ドルに引き下げます。
2026年12月期の楽天証券予想1株当たり利益(EPS)11.52ドルに、今の評価である株価収益率(PER)17~18倍を当てはめました。増益率に対してディスカウント評価になりますが、グーグル・クラウドの中のAI関連サービスが特に好調で、その伸びを維持するために大型投資を続ける必要があることを株価のディスカウント要因と捉えました。
予想PERに割安感があるため、一定の投資妙味はあると思われます。
本レポートに掲載した銘柄:アルファベット( GOOGL 、 GOOG 、NASDAQ)
(今中 能夫)