エヌビディアの2026年1月期1Qは、69.20%増収、28.0%営業増益。中国専用の「H20」に対して輸出規制が入ったため計画通りの販売ができず、減損が発生した。

大手クラウドサービス会社等の大口顧客向けが鈍化している模様で、オラクル、UAE等の新規顧客開拓を急いでいる。楽天証券の目標株価を引き上げるが、リスクに見合ったパフォーマンスを得ることが難しくなっていると思われる。


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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 決算速報:エヌビディア(既存顧客向けの伸びが低下している模様) 」


本レポートに掲載した銘柄: エヌビディア(NVDA、NASDAQ)


1.エヌビディアの2026年1月期1Qは、69.2%増収、28.0%営業増益。

 エヌビディアの2026年1月期1Q(2025年2-4月期、以下今1Q)は、売上高440.62億ドル(前年比69.2%増)、営業利益216.38億ドル(同28.0%増)となりました。


 中国向け専用GPU「H20」に対する輸出規制が今1Qから施行されたため、今1QはH20の売上高46億ドルと費用45億ドルを計上しましたが、25億ドル分を出荷することができず、その分を減損しました。このため、今1Q売上総利益率は60.5%と前4Q73.0%から低下しました。この結果、営業利益は前年比28.0%増と従来よりも低い伸びとなり、前4Q比では減益となりました。


 市場別売上高を見ると、データセンター向けが391.12億ドル(前年比73.3%増)と引き続き好調で、前4Q比でも増収でした。また、「ニンテンドースイッチ2」の発売を控え、ゲーミングが37.63億ドル(同42.2%増)となりました。


表1 エヌビディアの業績
決算速報:エヌビディア(既存顧客向けの伸びが低下している模様)
株価 134.81ドル(2025年5月28日)時価総額 3,294,891百万ドル(2025年5月28日)発行済株数 24,611百万株(完全希薄化後、Diluted)発行済株数 24,441百万株(完全希薄化前、Basic)単位:百万ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成。注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。注3:会社予想は予想レンジのレンジ平均値。

表2 エヌビディアの市場別売上高(四半期)
決算速報:エヌビディア(既存顧客向けの伸びが低下している模様)
単位:百万ドル、%出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ1 エヌビディアの四半期業績
決算速報:エヌビディア(既存顧客向けの伸びが低下している模様)
単位:100万ドル、出所:会社資料より楽天証券作成。注:2026年1月期2Q会社予想は予想レンジの平均値

表3 エヌビディア:楽天証券業績予想の詳細(四半期)
決算速報:エヌビディア(既存顧客向けの伸びが低下している模様)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

2.楽天証券業績予想を今期は下方修正、来期は上方修正する。

 今2Qの会社側ガイダンスは売上高450億ドル±2%、売上総利益71.8%、販管費57億ドルとしています。ここから計算すると今2Q会社予想のレンジ平均値は、売上高450億ドル(前年比49.8%増)、営業利益226.1億ドル(同42.7%増)となります。楽天証券ではこれより若干上乗せした、売上高460億ドル(同53.1%増)、営業利益273億ドル(同46.4%増)と予想します。


 今1Q実績と今2Q会社側ガイダンスを参考に、楽天証券では2026年1月期通期を売上高2,090億ドル(同60.2%増)、営業利益1,260億ドル(同54.7%増)とします。また、2027年1月期は、売上高2,890億ドル(同38.3%増)、営業利益1,810億ドル(同43.7%増)と予想します。今期は中国向け輸出の再開のめどがたっていないと思われることから楽天証券業績予想を下方修正、来期はUAE向け、オラクル向けの大型商談があることから上方修正します。なお、UAE向けに2027年までに年間50万個のエヌビディア製GPUを輸出できるように米国政府が規制緩和を検討中という報道がありますが、これが実現すると前提しました。


 決算電話会議の印象、今2Qガイダンスの印象として、既存顧客である大手クラウドサービス会社向けが鈍化していると思われます。会社側は決算電話会議の度に自社の業績に貢献が大きかった顧客に言及していますが、今回はマイクロソフト、アルファベットに重点が置かれアマゾンの名前が出てきませんでした。思うに、アマゾンが自社製AI半導体を大量導入しているため、エヌビディアにとって超大口ではなくなり、普通の大口顧客になった可能性があります。自社製AI半導体の導入はアルファベット、マイクロソフトも行っているため、いずれは今の大口顧客がエヌビディア製とともに自社製AI半導体をそれなりの量か相当量導入すると思われます。


 このため、新規顧客の開拓は極めて重要になります。楽天証券の今期下期から来期にかけての売上高予想にはオラクル、UAE、サウジアラビア向けを織り込んでいますが、2028年1月期に新規顧客が追加できなければ、業績鈍化が避けられなくなると思われます。


表4 エヌビディアの市場別売上高(年度)
決算速報:エヌビディア(既存顧客向けの伸びが低下している模様)
単位:百万ドル、%出所:会社資料より楽天証券作成

表5 エヌビディア:楽天証券業績予想の詳細(通期)
決算速報:エヌビディア(既存顧客向けの伸びが低下している模様)
単位:100万ドル出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

3.エヌビディアの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の135ドルから160ドルに引き上げる。

 エヌビディアの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の135ドルから160ドルに引き上げます。


 2027年1月期の楽天証券予想1株当たり利益(EPS)6.2ドルに、今の評価よりも高い株価収益率(PER)25~30倍を当てはめました。今のPERは営業利益増益率から見ると割安ですが、エヌビディア製GPUが高額なので大口顧客は常に安い自社製AI半導体を導入するインセンティブが強いこと、開発費の少ない生成AIスタートアップも、DeepSeekのような開発費、運用費を節約する、GPUの使用を節約する方向に向かっていると思われることを重視しました。


 投資リスクに見合ったパフォーマンスを得ることは難しいと思われます。


本レポートに掲載した銘柄: エヌビディア(NVDA、NASDAQ)


(今中 能夫)

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