米中摩擦が打撃、中国補助金効果も限定的で2025年の世界出荷はほぼ横ばいか
2025年の世界のスマートフォン出荷台数伸び率に関する市場コンセンサス予想が、前年比「1桁台前半-1桁台半ば」から「1桁台前半-横ばい」に後退している。米中関税戦争などの不確実性の高まりが背景。
2025年の世界スマホ出荷台数予想の下方修正は5-6月に始まった。関税戦争と市場の不確実性の高まりが理由。米IDCは5月29日、世界のスマホ出荷台数に関する通年予想を前年比2.3%増(2月発表)から0.6%増へ下方修正。6月4日にはカウンターポイントが4.2%増から1.9%増に引き下げた。中国の光学部品サプライヤー、舜宇光学科技(02382)やQテクノロジー(01478)の出荷統計もスマホ需要の萎縮を示唆した格好。
うち舜宇光学科技の1-5月のスマホ用レンズセットの出荷数は前年同期比5.2%減と、通期見通し(前年比5%増)を下回るペース。カメラモジュール出荷数は24.6%減少し、通年で5-10%増とのガイダンスを大幅に下回った。Qテクノロジーの同期のカメラモジュール出荷個数も17.7%減。前年比ほぼ横ばいとの通期目標を下回った。
中国政府が実施している耐久財買い替え補助金制度の下、1-5月に補助金支給の対象となったモバイルデジタル製品の販売台数は計5,663万台(商務部発表)。この間のスマホ、タブレット、スマートウオッチの出荷台数は計1億6,600万台であり、補助金対象はうち34%にとどまったことになる。この補助金制度は特別国債を充当する形で今後も続く可能性があるが、BOCIはEVや家電との比較において、デジタル製品向け補助金の持続可能性を疑問視。その理由として海外サプライチェーンへの依存度の高さに言及している。
また、引き続き焦点となるのは米中関税問題。暫定的な関税免除措置に対するメーカーの不安は大きく、投資や事業拡大計画に影響する可能性がある。
一方、スマホ市場のけん引役とされたAI搭載スマホは、現時点ではその多くが宣伝されたほど高性能とは言えず、消費者から不満の声が上がっている。中でも米アップル社はこのほど開催した開発者会議、2025年WWDCでAI関連の主要なアップデートをほとんど発表しておらず、AI懐疑論を招く結果となった。ただ、BOCIはまだ開発途上にあるとみて、将来的なAIスマホの発展を引き続き有望視している。
銘柄別では、舜宇光学科技、Qテクノロジーのほか、瑞声科技(02018)、BYDエレクトロニック(00285)、小米集団(01810)など、スマホ関連のカバー銘柄5社に対していずれも強気。ChatGPT、DeepSeekなどの有力AIモデルのブレークスルーが今後の支援材料となる可能性を指摘している。
(Bank of China int.)