楽天証券は個人投資家向けに日経平均や為替の見通しなどを聞くアンケートを実施しました。日経平均の見通しでは、「強気派」の割合が大幅に増加しました。

1カ月先のドル/円予想では「円高」が6カ月連続の円高予想となりました。


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はじめに

 アンケート調査は2025年6月30日(月)~7月2日(水)にかけて実施しました。


 今回のアンケートは、約2,300名を超える個人投資家からの回答を頂きました。


 6月末の日経平均株価は4万円台を回復し、4万0,487円で取引を終えました。月間ベースでは3カ月連続の上昇となり、前月末終値(3万7,965円)からの上げ幅も2,522円と大幅なものとなりました。


 6月の値動きを振り返ると、月間の安値が月初の2日、高値が月末の30日だったこともあり、日足チャートで見ても月間を通じてほぼ右肩上がりの上昇を描いていったことが確認できます。


 米関税政策の不透明感や中東情勢緊迫化などの懸念材料もくすぶってはいましたが、過度な警戒感の後退や、根強いAI需要観測に伴うテック株への物色、堅調な米国経済、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待などを背景にしたリスクオンムードが優勢となりました。


 特に、上値の抵抗として意識されていた3万9,000円台を突破してからは株価上昇に勢いがつき、月末にかけて大きく上値を伸ばしていきました。


 日経平均の見通しについては、DIの値がプラスに転じたほか、為替(米ドル/円)についても、DIのマイナス幅が縮小して円安方向に傾くなど、株式市場・為替市場ともに見通しが改善する結果となりました。


 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。


日経平均の見通し「DI改善も弱気警戒はくすぶる」

 今回の調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先が+11.07、3カ月先は+4.08となりました。


 前回調査の結果がそれぞれ、マイナス2.36とマイナス0.73でしたので、両者ともにDIの値がプラスへと転じました。特に1カ月先のDIの改善幅が大きく、目先は強気ムードが優勢になっている印象です。


 とはいえ、回答の内訳グラフを確認すると、少し違った景色も透けて見えます。


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 今回の調査では、1カ月先の強気派の割合が31.12%と、前回調査の18.92%から大幅に増加しました。この強気派の増加に大きく寄与したのは、弱気派が20.04%(前回:21.28%)、中立派が48.84%(前回:59.80%)と変化していることから、弱気派からではなく、中立派からの流入が大きかったことが考えられます。


 つまり、弱気派があまり減少しておらず、先行きに対する慎重な見方が依然として根強いことが読み取れます。


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 また、3カ月先の日経平均の見通しについても、DIの値はプラスに転じていますが、強気派・弱気派・中立派の割合の構成バランスは前回とあまり変わっていません。6月に株式市場が演じた強さが今後も継続して行くのかについては、まだ自信が持てない状況であることがうかがえます。


 そんな中、2025年相場は折り返し地点を過ぎ、後半戦へと突入しました。


 警戒されていた、米トランプ政権の相互関税「上乗せ分」の発動期限(7月9日)については、8月1日まで延長され、引き続き関税交渉を巡る思惑が交錯する状況が続くでしょう。すでに発動された関税の影響も、そろそろ経済指標や企業決算に反映されてくることが考えられます。


 足元の国内外の株式市場は、すでに春先の急落前の株価水準を上回っており、不安の後退や先行きの期待感をある程度織り込んだ水準まで上昇してきたと思われます。そのため、7月相場は実体経済の状況を確認しながら、これまで先取りして織り込んできた相場の見通しが正しいのかどうかを答え合わせしていく展開になることが想定されます。


 確かに、相場環境自体は複雑化していますが、その一方で、株価上昇のカギは「企業業績および見通し」というシンプルな構造になっているので、まもなくやってくる決算シーズンは、年後半の相場の方向性を占う大事なヤマ場になりそうです。


為替DI:7月の見通し。
個人投資家の予想は?個人投資家の円高見通しさらに強まる

楽天証券FX事業部 荒地 潤


 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものである。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示す。


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

「7月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」


 楽天証券が、個人投資家を対象にドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、回答者の61%が、ドル/円は「円高/ドル安」に動くと予想していることが分かった。これにより、円高予想が円安予想を上回ったのが6カ月連続となった。


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

 円安予想から円高予想の割合を引いて求めたDIは、円高予想が前月から22ポイント減り、マイナス22になった。


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

トランプ関税とイラン・イスラエル戦争の関係


 6月13日、イスラエルによるイランへの軍事作戦が始まった。当初は距離を置く姿勢を示していたトランプ大統領だが、21日になって直接攻撃に踏み切った。米国がイランの核施設を空爆したことで一気に緊迫した中東情勢は、12日間の戦闘を経て停戦を迎えた。しかし、両国の間では不信感が強く、停戦がどの程度安定するのかについては依然として不透明だ。


 イランとイスラエルの軍事対立が激化した場合、最も直接的な影響が出るのは、原油価格の急騰だ。仮にホルムズ海峡が封鎖されれば、原油価格が130ドルに達するとの予測もあり、世界経済は大きな負担を強いられることになるだろう。


 これはトランプ政権にとって、特に頭の痛い問題だ。

なぜなら、関税引き上げによる物価上昇とエネルギー価格上昇のタイミングが重なる可能性があるからだ。FRBは、トランプ関税が米国のインフレ率を夏にかけてさらに押し上げ、消費者心理に悪影響を与える可能性があると懸念している。


 トランプ政権にとってより問題となるのは、インフレの加速によってトランプ関税に関わる米国の交渉力が弱まってしまうことだ。関税は増税と同じで、米国の消費者の負担を増やす効果がある。インフレで米国の消費力が減速に向かうとき、 トランプ関税によってさらに「増税」できる余地は狭まる。


 日本や欧州連合(EU)などの主要な貿易相手国は、その事情を認識しているため、交渉合意を急ぐインセンティブはない。4月にトランプ大統領は「90日で90件」の貿易協定を締結すると豪語したが、現在までの実績は、英国との中途半端な合意、中国とは協議継続の確認、そしてベトナムと交渉が成立しただけである。


 とはいえ、トランプ関税が完全に撤廃される見込みもない。ということは「不確実な期間」はこれからも続くということだ。米国資産の長期的な投資魅力は低下し、米国市場からの資金流出が加速する可能性は高まるだろう。


ユーロ/円


 ユーロ/円相場の先行きについては、個人投資家の55%が、今月のユーロ/円は「円安/ユーロ高」に動くと予想している。円安予想は、6カ月ぶりに円高予想を上回った。

 


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

 円安予想と円高予想の差であるDIは、円高予想が前月から30ポイント増えて+10になった。


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

豪ドル/円


 豪ドル/円相場の先行きについては、個人投資家の54%が、今月の豪ドル/円は「円高/豪ドル安」に動くと予想している。円高予想は、6カ月連続で円安予想を上回った。


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

 円安見通しと円高見通しの差であるDIは、円高予想が前月から18ポイント減ってマイナス8になった。


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲


 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「ユーロ圏」を選択した人の割合に注目します。選択肢はページ下部の表のとおり、13個です。(複数選択可)


図:今後、投資してみたい国(地域)で「ユーロ圏」を選択した人の割合


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

 2025年6月の調査で、「ユーロ圏」を選択した人の割合は15.19%でした。これは、日本(80.09%)、米国(58.80%)、インド(23.78%)に次ぐ水準でした。2025年の年初から足元まで、反発色を強めており、この6月はおよそ10年前の2015年8月の15.11%を超え、2014年2月に付けた16.02%に迫りました。


 ユーロ圏を選択した人の割合の推移を振り返ると、リーマンショック(2008年9月)直後、ショックが発生した米国の代替投資先として期待が膨らみ、上昇した時期がありました。しかしその後、ショックが世界金融危機へと発展したことから急低下しました。


 2009年から2013年ごろまでは低迷が続きましたが、2013年から2014年ごろでは、欧州中央銀行(ECB)による金融緩和に注目が集まり、欧州経済の回復が期待され、急反発しました。


 しかし、2015年9月にドイツの自動車大手フォルクスワーゲンが、違法な装置を使って排ガス浄化装置のテストを潜り抜けていた問題が発覚し、欧州経済の先行きに不透明感が生じて低下しました。2016年6月の英国のEU離脱を問う国民投票も、それに拍車をかけました。


 転機が訪れたのは新型コロナがパンデミック化した2020年3月以降でした。金融緩和が始まり、景気回復期待が大きくなり、再び反発し始めました。2022年2月にウクライナ戦争が勃発して一時反落する場面があったものの、ECBの利下げ(金利引き下げ)などへの期待が浮上し反発色を強めました。


 2025年に入りさらに反発色を強めている背景には、トランプ氏が導入した相互関税において、ユーロ圏に隣接する大国である英国が米国との交渉を成立させたこと、地理的に近いウクライナや中東での危機が拡大して防衛関連株が上昇を演じていること、などが挙げられます。


 トランプ関税やウクライナ・中東情勢など、予測困難な事象が交錯する中で、反発する「ユーロ圏」を選択した人の割合の動向に、今後も注目していきたいと思います。


表:今後、投資してみたい金融商品 2025年6月調査(複数回答可)


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2025年6月調査(複数回答可)


投資家調査:日経平均見通し「強気」が12%増!期待の裏で「弱気警戒」続く
出所:楽天DIのデータより筆者作成

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