先週はトランプ相互関税の上乗せ分が8月1日に延期される好材料もありましたが、日本、カナダ、EU・メキシコの関税率発表で株価は下落しました。今週はトランプ関税が6月の米国物価指標や2025年4-6月期決算に影響次第で急落もしくは続騰という展開もありそうです。
新たなトランプ関税連発で今週も大混乱!米国の6月CPI発表が最大の山場に!?
今週は米国で6月の重要物価指標が発表され、さらに過激化したトランプ関税が米国の物価高再燃につながるのかどうかの「審判」が下されます。
また2025年4-6月期の米国企業の決算発表もスタートし、個別企業に対するトランプ関税の影響も判明します。
国内では20日(日)の参議院選挙で消費税などの減税を訴える勢力の躍進が見込まれ、財政悪化懸念が台頭していることから、先週、株、債券価格、通貨が同時に下落する「日本売り」の兆候が見られました。
今週もトリプル安が続くのかどうかに注意が必要です。
先週は、まさに「やりたい放題」といえるトランプ大統領の関税政策に振り回された1週間でした。
トランプ大統領は相互関税の上乗せ分の90日間猶予措置の期限である7月9日(水)について 、予定通りに上乗せ分を発動すると述べ、7日(月)は日米の株価が急落しました。
ベッセント財務長官などの説得で8日(火)には早くも相互関税発動を8月1日(金)まで延期すると前言を撤回したものの、再延期はもうしないと発言。
9日(水)にはブラジルに50%、10日(木)にはカナダに35%の関税を課すと発表。
また大多数の国に対して、すでに発動中の相互関税の一律税率10%を引き上げ、15%か20%の関税を課す予定とも述べました。
トランプ大統領の新たな関税率引き上げに耐え切れず、機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数は前週末比0.31%安と最高値圏から小幅下落して終わりました。
トランプ大統領は12日(土)、欧州連合(EU)とメキシコに30%の関税をかけると追い打ちをかけるように発表しているため、週明けの株式市場はさらに下落しそうです。
しかし、人工知能(AI)関連株の エヌビディア(NVDA) は前週末比3.5%高と7週連続の上昇となり、10日(水)には初めて時価総額が4兆ドル(約585兆円)を超えました。
トランプ関税で相場が右往左往する中で比較的、関税の影響を受けにくいことが、エヌビディアなどAI関連株に大挙して投資資金が流入している理由といえるでしょう。
一方、トランプ大統領が最大35%と脅していた日本に対する相互関税は25%だったことも判明。
9日(水)、街頭演説中の石破茂首相が「(米国に)なめられてたまるか」と発言するなど、今後、日米関係が悪化する懸念も出てきました。
先週の日経平均株価(225種)は前週末比241円(0.6%)安の3万9,569円で終了しました。
日本の10年国債の利回りは1.574%まで上昇(債券価格は下落)し、売買参加者が少なく金利上昇が続いていた30年国債の利回りは、5月21日につけた最高値3.196%以降、再び3%の大台を超えています。
為替市場では週初めの1ドル=144円40銭台から11日(金)には1ドル=147円40銭台まで円安も進み、トリプル安の兆候も感じられる展開でした。
今週は米国で15日(火)に6月消費者物価指数(CPI)、16日(水)に6月卸売物価指数(PPI)が発表されます。
今回も物価の顕著な上昇が確認されない場合、7月30日(水)終了の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げが有力視されるため、ハイテク株中心に米国株が反発する可能性もあります。
日本株も他国に比べれば「低め」といえる関税率25%以下がほぼ確定したこともあり、悪材料出尽くしで意外に底堅く推移するかもしれません。
今週は15日(火)の JPモルガン・チェース(JPM) など主要金融機関や17日(木)のコンテンツ配信企業 ネットフリックス(NFLX) など、米国企業の2025年4-6月期決算も始まります。
注目は、25%の品目別関税をかけられたアルミニウムの精錬会社で16日(火)に発表予定の アルコア(AA) や、同じ16日のオランダ半導体製造装置メーカー ASMLホールディング(ASML) 、17日(木)の世界最大の半導体受託製造会社・ TSMC(台湾積体電路製造:TSM) など重要半導体株の決算です。
14日(月)の日経平均は、3万9,416円でスタート。終値は3万9,459円と先週から110円安の続落で一週間が始まりました。
先週:関税収入増加でトランプ大統領はますます過激化。日本企業はどこまで耐えられる?
先週はまたもやトランプ大統領の新たな関税政策の発表が相次ぎました。
8日(火)には電子部品の基幹素材である銅の輸入に対して50%の関税をかけることを発表(米国の銅生産量は世界5位)。
すでに関税発表を見越して6月以降、銅の先物価格は急上昇していましたが、先週は前週末比7.49%高とさらに跳ね上がりました。
合成麻薬フェンタニルの流入が止まらないことを理由に隣国カナダに35%、メキシコに30%の関税率が通知されました。
自動車部品などの輸出入に関しては、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で追加関税は免除されているものの、メキシコ、カナダに生産拠点を持つ日本の輸出企業にも影響が大きそうです。
またカナダやEUは当初、米国巨大IT企業へのデジタル関税や規制を報復措置に掲げていました。
今回のトランプ大統領の強気な税率引き上げに対して、デジタル関税が再び対抗措置に浮上すると、絶好調な米国ハイテク株の株価にも悪影響が及ぶ恐れもあります。
トランプ大統領がこれほど強気でいられる背景には、米国のような輸入大国は関税率を引き上げても、米国への輸出が収益源の他国企業の製品値下げで悪影響が少ないという「最適関税理論」があるようです。
実際、日本銀行が10日(木)に発表した6月の企業物価指数によると、北米向け自動車輸出物価指数は前年比で19.4%も大幅減少し、自動車25%関税に対して日本の自動車メーカーが大幅値下げで緊急対応している状況が浮き彫りになりました。
トランプ政権のベッセント財務長官は2025年に入ってからの米国の関税収入が早くも1,000億ドル(約14.6兆円)に達し、通年では3,000億ドルに達する見通しを発表。
5月の米国の関税収入は月間として過去最高の228億ドル(約3.3兆円)と前年同月の約4倍まで増えたことも明らかになっています。
先週は自動車に対する25%の関税が据え置かれたままで、かつ値下げで米国での販売シェアを維持できるという思惑もあり、 ホンダ(本田技研工業:7267) が前週比4.6%高となるなど自動車株は全般的に堅調に推移しました。
日本株の業種別上昇率では証券会社がレーティングを引き上げた 日本製紙(3863) が前週末比8.4%高となるなど、パルプ・紙セクターが1位に。
業績不振による株価の低迷もあり、日本製紙の株価純資産倍率(PBR)が驚異の0.27倍と、パルプ・紙セクターの企業の株価は極めて割安です。
ティッシュなど家庭用紙販売など景気に左右されないディフェンシブ株として魅力を集めたようです。
また先週は外食、スーパー、小売、サービス業の多い2025年2・8月期企業の決算発表が集中しました。
2025年8月期第3四半期(3-5月期)の経常利益が46%増益になったカラオケチェーン「カラオケまねきねこ」を展開する コシダカホールディングス(2157) が前週末比16.4%も急騰しました。
一方、株主優待人気の高い イオン(8267) は10日(木)、ベトナム金融子会社の買収前の不適切会計発覚を受けて決算発表を7月末まで延期。
10日の株価が前日比4.8%安(週間では1.6%安)となるなど、サービス、小売業は強弱まちまちの結果でした。
独歩高となったのは東証グロース市場250指数です。前週末比5.3%上昇し、今後はトランプ関税の影響をあまり受けない内需系の中小型成長株が、大型輸出株に代わって、相場のけん引役になるかもしれません。
今週:米国景気指標が無難なら、米国独り勝ち相場が加速!日本株には参議院選後の改革期待も!?
今週15日(火)発表の米国6月CPIは前年同月比2.6%上昇、前月比0.3%上昇と5月から伸びが加速する予想です。
16日(水)の6月PPIは前年同月比では2.5%増と、5月から伸びが鈍化する予想になっています。
17日(木)には米国個人消費の動向が分かる6月小売売上高やトランプ関税で注目される6月の輸入・輸出物価指数も発表されます。
ここ最近はトランプ大統領の過激な関税政策にもかかわらず、米国の経済指標が予想値から大幅に乖離(かいり)して悪化することが少なく、それがハイテク株をけん引役にした米国株の最高値更新につながってきました。
今週もその傾向が続くかどうかに注目です。
日本は週末の20日(日)に投開票が行われる参議院選挙で自民・公明与党が過半数割れする観測もあり、その結果待ちで膠着(こうちゃく)感の強い相場展開になるでしょう。
ただ、選挙結果を受けて、支持率が低迷する石破首相が退陣し、国民民主党、日本維新の会なども加わった新たな連立政権の枠組みが作られるようなら、改革期待で株価にとってポジティブに働くかもしれません。
米国の物価指標が予想よりも大幅に上昇しない限り、米国トランプ大統領の過激な関税政策は関税収入増加もあって米国経済にむしろ追い風といった、従来とは真逆の見方が広がっています。
当面、「米国株独り勝ち、日本を含めそれ以外の国・地域の株価は低調」という状態が続く可能性も高いでしょう。
とはいえ、米国第一主義というより「トランプ第一主義」の相場にはすでに過熱感も出てきており、大幅な調整がいつ来てもおかしくはありません。
(トウシル編集チーム)