日本からの輸入品に対する25%関税は8月1日から発動される公算が大きくなっています。これから4-6月期の決算発表が本格化しますが、通期予想には関税の影響が反映されるとみられ、例年以上に下方修正も多くなりそうです。
アナリスト評価◎の割安高配当株TOP15
コード 銘柄名 現在値 配当利回り コンセンサス
レーティング 移動平均線
乖離率 月間
騰落率 6481 THK 3870.0 6.54 3.9 3.37 ▲0.15 3002 グンゼ 3665.0 5.89 3.8 15.48 3.68 7283 愛三工業 1731.0 5.78 4.0 ▲4.30 2.67 1890 東洋建設 1579.0 5.70 4.0 11.41 7.41 4503 アステラス製薬 1406.5 5.60 3.5 0.89 1.30 5021 コスモエネルギーホールディングス 6338.0 5.47 3.9 3.65 ▲2.67 7148 FPG 2391.0 5.45 4.0 3.09 2.93 8130 サンゲツ 2955.0 5.25 4.0 1.85 1.41 8725 MS&ADホールディングス 3124.0 5.18 3.8 ▲3.47 ▲3.52 5938 LIXIL 1739.5 5.17 3.5 5.67 7.81 4521 科研製薬 3775.0 5.03 3.5 ▲2.57 ▲2.08 7172 ジャパンインベストメントアドバイザー 1761.0 4.94 4.0 3.49 2.32 7744 ノーリツ鋼機 1494.0 4.93 4.5 0.57 1.84 5076 インフロニア・ホールディングス 1245.5 4.92 3.8 3.30 4.44 7267 ホンダ(本田技研工業) 1509.0 4.86 3.7 5.00 8.29 ※データは2025年7月11日時点。単位は配当利回りと月間騰落率、移動平均線乖離率は%。配当利回りは予想、移動平均線乖離率の基準は13週移動平均線。
※コンセンサスレーティング…アナリストによる5段階投資判断(5:強気、4:やや強気、3:中立、2:やや弱気、1:弱気)の平均スコア。数字が大きいほどアナリストの評価が高い。
※移動平均線乖離(かいり)率…株価が移動平均線(一定期間の終値の平均値を結んだグラフ)からどれだけ離れているかを表した指標。この数値がマイナスならば、移動平均線よりも現在の株価が安いということになる。
上表は、長期投資に適した銘柄の高配当利回りランキングと位置付けられます。
2025年7月11日時点での高配当利回り銘柄において、一定の規模(時価総額1,000億円以上)、ファンダメンタルズ(コンセンサスレーティング3.5以上)、テクニカル(13週移動平均線からの乖離率20%以下)などを楽天証券の「スーパースクリーナー」を使ってスクリーニングしたものとなっています。配当利回りはアナリストコンセンサスを用いています。
なお、上場市場は各社ともにプライム市場となっています。
日経平均は約半年ぶりに4万円大台を一時回復
6月13日終値~7月11日終値までの日経平均株価(225種)は4.6%の上昇となりました。
6月末にかけて株式市場は上昇ピッチを速め、6月27日には4万円台の大台乗せを果たしました。
この上昇は、米中の通商協議進展期待が高まったことでリスクオンの流れが優勢となったことによるものです。特に、エヌビディアが史上最高値を更新して再度時価総額トップに返り咲くなど、米国市場ではハイテク株の強い動きが目立ち、東京市場でも半導体関連株の上昇が全体をけん引しました。
また、イランとイスラエルが停戦で合意して中東情勢の緊張が緩和したこと、米連邦準備制度理事会(FRB)メンバーの発言を受けて米国の早期利下げ期待が高まったことなども、株価上昇の支援材料となりました。しかし、7月に入ってからは、米関税政策に対する懸念が再燃しつつあり、上値の重いもみ合い状態となっています。
こうした中、ランキングTOP15も買いが優勢となり、11銘柄が上昇し、4銘柄が下落となっています。
上昇銘柄では、 ホンダ(本田技研工業:7267) が最も高い上昇率となっています。期間後半にかけて上昇が目立ちました。為替相場でドル高・円安の動きが強まったほか、電気自動車(EV)の戦略車種の一つ、大型多目的スポーツ車(SUV)の開発中止が伝わったことなどが、見直しの動きにつながったようです。
また、 LIXIL(5938) は大和証券が投資判断を格上げし、株価上昇につながりました。 東洋建設(1890) 、 インフロニア・ホールディングス(5076) などの建設株も相対的に強い動きとなりました。
半面、 MS&ADホールディングス(MS&ADインシュアランスグループホールディングス:8725) は米国利下げ期待の高まりが弱材料視され、 コスモエネルギーホールディングス(5021) は中東情勢リスクの後退に伴う原油価格の下落が逆風となりました。
配当方針の変更が反映されてグンゼが利回り上位に台頭
今回、新規にランクインしたのは、 グンゼ(3002) 、MS&ADHD(8725)、LIXIL(5938)、 科研製薬(4521) の4銘柄です。除外となったのは、 日本製鉄(5401) 、 ダイセル(4202) 、 いすゞ自動車(7202) 、 ジェイテクト(6473) となっています。
グンゼは5月に配当方針の変更を発表、株主資本配当率(DOE)を4.0%以上目安に引き上げており、配当コンセンサスの切り上がりが反映されてきたものとみられます。LIXILは投資判断の引き上げを受けて、コンセンサスレーティングが新たに基準に達しました。MS&ADHDと科研製薬は株価下落で相対的に配当利回り水準が上昇しました。
一方、日本製鉄はもともと配当コンセンサスが会社計画に対して過剰であったため、その修正がなされて利回り水準が低下しました。ダイセルは投資判断格下げが観測され、コンセンサスレーティングが基準未達となりました。いすゞ自動車やジェイテクトなどは株価が大きく上昇したことで、相対的に利回り水準が低下した形です。
今回は、アナリストコンセンサスが会社計画の配当予想を下回っている銘柄は、見当たりません。
一方で、コンセンサスの配当予想が会社計画を上回っているものには、 愛三工業(7283) 、コスモエネルギーHD(5021)、MS&ADHD(8725)、ホンダ(7267)などが挙げられます。会社計画ベースの配当利回りはそれぞれ、愛三工業4.33%、コスモエネルギーHD5.21%、MS&ADHD4.96%、ホンダ4.64%となっています。
それぞれ会社計画水準の方に配当コンセンサスがサヤ寄せしていくものとみられます。とりわけ、愛三工業のコンセンサス水準は高すぎる印象があります。
4-6月期決算、関税の影響で例年以上に下方修正が増加の公算も
ここから1カ月間は、4-6月期の決算発表が本格化します。今回、トランプ米大統領が公表した日本からの輸入品に対する25%関税は、8月1日以降発動される可能性が高く、それを反映した業績見通しが示されることになります。
そのため、例年以上に、第1四半期決算時における業績予想の下方修正が多くなりそうな状況と言えます。特に、いまだに関税率が明らかになっていない医薬品や自動車などのセクターは買いにくい展開となっていきそうです。また、こうした状況下でもあり、第1四半期決算時における増配発表などの動きは、これまで以上に少なくなるでしょう。
高配当利回り銘柄の物色においても、目先は銘柄ごとに明暗が強まる可能性があります。足元で相対的に強かった自動車関連などには注意が必要です。関税の影響が乏しい内需セクターは安心感が強いと言えるでしょう。建設セクターなどが相対的に妙味と考えられます。
(佐藤 勝己)