日銀の量的緩和政策は<日本国民の預金を連帯保証人とするインフレ政策>である。日銀が輪転機で刷った円で政府の借金を帳消しにするというインフレの方向性は、日本国債や円に対する信認を揺るがすことになるだろう。
国債市場が揺らいでいる
現在の金融システムの屋台骨である国債市場が揺らいでいる。世界の国債市場は最悪の流動性状況を経験しているところだ。これは、日本、米国、英国、欧州連合(EU)が、財源をはるかに超えた支出(国債の発行)を行っている中で起きている。
日本30年国債金利(週足)

日本40年国債金利(週足)

日本の金利は再度上昇している。これに対処するために利上げが必要だと日本銀行が気づくまで、いつまでかかるのだろうか?
世界の政策金利

日本は今後も長い間、借金漬けの経済から抜け出せないので、日銀は金利を上げることができない。逆に言えば円安で借金の価値を下げることしかできないのかもしれない。
ドル/円は2012年以降50%下落(購買力の喪失)

日銀は玉虫色の発言を繰り返し、利上げを諦めたような格好となっている。ドル安、円安相場の中で、じわじわとクロス円で円安が進んでいるのが現在の状況だ。
ドル/円(日足)

ユーロ/円(日足)

ポンド/円(日足)

豪ドル/円(日足)

メキシコペソ/円(日足)

FRBが大幅利下げしたらどうなるのか!?
トランプ大統領は米連邦準備制度理事会(FRB)に3%の大幅利下げを迫っているものの、パウエルFRB議長は今のところ動く気配がない。仮にFRBが利下げに動いたら何が起こるのだろうか?
XにThe Kobeissi Letterが投稿した「トランプ大統領は300ベーシスポイント以上の金利引き下げを求めている!FRBがこれを実行したら何が起こるのか?」という興味深い記事があったので以下に紹介したい。
【これは公式の見解だ:トランプ大統領は現在、米国史上初の300ベーシスポイント以上の金利引き下げを求めている。これは、2020年3月15日に実行された100bpsの利下げの3倍となり、史上最大規模となる。では、FRBがこれを実行したら何が起こるのか?説明しよう。
トランプ大統領の投稿
出所:The Kobeissi Letter2008年や2020年でさえ、100ベーシスポイントを超える金利の引き下げはなかった。
2020年3月には、100bpsの緊急利下げが実施されたが、これはトランプ大統領が現在求めている額の3分の1に相当する。100bpsは1回の利下げとしてはこれまで最大だ。FF金利
出所:The Kobeissi Letter米国経済が前年比+3.8%で成長している中での利下げだ。結果、消費者物価指数(CPI)インフレ率は再び上昇し、5%を超える可能性が高くなる。そして、2020年3月に見られたように、当初、株価が上昇するだろう。しかし、「フリーマネー」などというものは存在しない。
住宅はどうだろう?2020年以降、すでに価格は50%上昇している市場において、住宅ローン金利は約7%から約4%に低下するだろう。住宅価格はさらに25%以上上昇すると思われる。住宅ローン金利は下がるだろうが、価格高騰によって住宅購入能力の向上は帳消しにされるだろう。
米国の住宅価格の歴史:1890~2025年
出所:The Kobeissi Letter加えて、米ドルは大幅な下落が見込まれるだろう。現在の水準から10%を超える下落が予想される。2025年第1四半期と第2四半期において米ドルが10.8%下落すれば、1973年以来最悪の動きとなる。
良い面としては、米国の貿易が促進されるだろう。ドルインデックスは1973年以来最大の年初来マイナス
出所:The Kobeissi Letter景気後退期以外において、FRBが75bps以上の利下げを実施したことがないことも注目に値する。現時点では明らかに不況ではないので、歴史を刻むことになるだろう。好景気下での大幅な利下げは、短期的には「ジェット燃料」として機能を果たすだろう。
インフレが復活し米ドルが下落するのに対し、金価格は5,000ドル以上に急騰すると考えている。2021年から2024年にかけて見られたように、金はこのような経済環境から恩恵を受ける。実際、金は過去12か月で40%上昇し、過去5年間では80%上昇している。金利の引き下げは、この上昇をさらに加速させるだろう。
ゴールドETF資産
出所:The Kobeissi Letter言い換えれば、ほぼすべての資産価格が急騰することになる。300bpsの利下げにより、S&P500指数は7,000以上、原油価格は1バレルあたり80ドル以上、金価格は1オンスあたり5,000ドル以上、住宅価格は25%上昇すると考えている。短期的な影響は強気となるが、長期的にはインフレが急上昇するだろう。
最後に、私たちは引き続き、急速に上昇する米国の利払い費に対する解決策は、シンプルに借入を減らすことだと考えている。
米財務省は5月に3,160億ドルの財政赤字を計上したが、これは過去3番目に大きい額である。われわれは金利では解決できない支出問題を抱えている】出所:The Kobeissi Letter X 「トランプ大統領は300ベーシスポイント以上の金利引き下げを求めている!FRBがこれを実行したら何が起こるのか?」
はたして、中央銀行に対する市場の信頼が失われたときに何が起こるのだろうか?
「この列車(負債バブル)を止めるものは何もない。私がいま見ているのは、列車を止めようとして失敗しているところだ」
(リン・オールデン)
7月16日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
7月16日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、荒地潤さん(楽天証券FX・CFD事業部)をゲストにお招きして、「政府も中銀も当てにならない。それはコントロールできない。自分の中央銀行をつくろう!」「金融抑圧と円相場」というテーマで話をしてみました。ぜひ、ご覧ください。




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7月16日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

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(石原 順)