先週の日経平均は4週連続で上昇し、4万5,000円台に乗せました。日米金融政策イベントを無事通過も、今後の金融政策による株価の押し上げ力は後退が見込まれるため、さらなる上昇への確信は早計かもしれません。
4万5,000円台に乗せてきた先週の日経平均
先週末9月19日(金)の日経平均株価は4万5,045円で取引を終え、4万5,000円台に乗せてきました。前週末終値(4万4,768円)からは277円高、週間ベースでも4週連続の上昇です。また、この期間の上げ幅も2,412円と大きくなっています。
前回のレポートでは、「相場の基調は強いが、過熱感や達成感、材料出尽くし感などをきっかけに、売りが出やすくなる可能性があるので注意」と指摘していましたが、週末時点の終値の単純な比較だけでみれば、こうした売りの意識を退けて、しっかりと最高値を更新してきたわけです。
▼前回のレポート
今週の日本株:FOMC・日銀会合が控える中、「出尽くし感」や「リスクオフ」の影も
実際に、先週の日経平均の値動きを5分足チャートで辿ってみると、注目の日米金融政策イベントを通過した18日(木)と19日(金)の取引で、株価が大きく動いていたことが分かります。
<図1>日経平均(5分足)の動き(2025年9月16~19日)

上の図1で具体的に見て行くと、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受けた18日(木)の日経平均は大きく上昇しました。
翌19日(金)もその流れが続き、史上最高値を更新しましたが、日本銀行金融政策決定会合の結果公表後、午後の時間帯に入ると一転して下落に転じ、一時前日比で800円安まで下げる場面がありました。結局、週間の日経平均の高値と安値の両方が19日(金)の一日の取引時間に出現した格好です。
日米の金融政策イベントが大きく株価を揺さぶったものの、結果的に株式市場は上昇で反応しており、イベント通過のアク抜け感が相場を支えた印象です。ただ、今後の相場展開について考えるためには、もう少し状況を整理する必要があります。
日米金融政策イベントをどう見るか?
では、先週の日米の金融政策イベントは今後の相場の方向性にどの程度の影響を与えたのでしょうか?
下の図2は米FOMCと日銀金融政策決定会合での決定内容やポイント、株式市場の初期反応、そして今後の焦点などについて簡単にまとめたものです。
<図2>日米金融政策会合のまとめ

まず、米FOMCから見て行くと、0.25%の政策金利の利下げが決定されたほか、2025年内に2回の利下げ見通しが示されるなど、ほぼ市場が予想していた通りの結果となりました。
ただ、その後に行われた米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見では、今回の利下げ判断について、米国経済の「物価上昇」と「雇用減速」が同時に警戒されている異例な状況下での難しい決断であり、あくまでも「リスクを管理するための利下げ」だったことが述べられました。
今後の利下げについては継続的に行われる見込みであるものの、市場が期待するほどの前向きな姿勢は示されませんでした。
そのため、引き続き経済指標の動向をにらみつつ、景況感の悪化と物価上昇再燃への警戒が続くことになります。加えて、ココから先の利下げ期待は、株価を押し上げる材料から、株価が下がった際に相場を支える材料へと、役割を変えて行くことが考えられます。
一方、日銀の金融政策決定会合では、政策金利の据え置きと同時に、日銀が保有する上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の売却が決定されました。政策金利の据え置き自体は想定通りでしたが、意外なタイミングでの資産売却の発表がちょっとしたサプライズとなりました。
日銀の発表では、簿価ベースで年間3,300億円程度のペースで売却が進められる予定です。これは、かつて日銀がETFを購入していたペース(年間で数兆円規模)と比べるとかなり緩やかであり、市場への直接的な影響は軽微と思われます。
実際に、19日(金)の日経平均は下落が一巡した後に値を戻し、4万5,000円台を回復させて取引を終えているため、この日の下落は「売りの口実」にされた面が強いと言えそうです。
とはいえ、今回の日銀会合では2名の審議委員から利上げの実施が提案されています。早い段階での利上げ実施に対する「地ならし」の可能性があるため、今後の株価が上昇基調を続けた場合、それに伴って10月の利上げ実施に対する思惑が働き、上値を抑える要因となるかもしれません。
今週の株価上昇のカギを握るのは?
そんな中で迎える今週の株式市場ですが、日米ともに予定されているイベントは比較的少なく、先週までの上昇基調を維持できるかが焦点になります。
これまで見てきた通り、金融政策を背景にした株価の押し上げ力は後退していくと思われるため、今週の株価上昇のカギを握るのは、別の上昇材料になります。
先週までの株価を押し上げた材料のひとつとして挙げられるのが、米国株市場から吹いて来ているテック株への物色です。
<図3>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年9月19日時点)

上の図3は、2024年末を100とした米主要株価指数のパフォーマンス比較です。9月に入ったあたりから、大手プラットフォーマーが上場しているナスダック総合指数と、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数の上昇が目立っています。
ここ2週間の米テック株をめぐる材料を振り返ってみます。まず、9日にオラクルが発表した決算で、AI向けのクラウド基盤事業が好調であることが示されました。これを皮切りに、10日にはアナリストがマイクロン・テクノロジーの目標株価を引き上げ、12日にはマイクロソフトがオープンAI社との提携を延長することで合意したことが発表されました。
15日にはグーグルを運営するアルファベットがネット検索で独占禁止法に違反していると訴えられた裁判で、事業分割を回避できたことで安心感が広がりました。
さらに、インテルがエヌビディアから出資を受けて、データセンターやPC向け半導体の設計と製造を共同して行うことが発表されたり、新型スマホの受注が好調と報じられたアップル株が買われるなど、好材料がほぼ途切れることなく相次いでいたことが株価を押し上げました。
こうした流れを受けて、日本株市場でもソフトバンクグループや半導体関連株などが大きく上昇し、値がさテック株が主導する格好で日経平均が東証株価指数(TOPIX)よりも優位な値動きとなっており、NT倍率(日経平均÷TOPIX)が急上昇しています。
<図4>NT倍率(日足)の推移(2025年9月19日時点)

今週はマイクロン・テクノロジーやアクセンチュアなどの決算が予定されていますが、ここ2週間に見られたような好材料が相次ぐ状況はさすがに一服すると思われます。そのタイミングで出尽くし感が出やすいことや、短期間で株価が上昇してきたことによる割高感も醸成されやすいことなどを踏まえると、先週に続いて売りが出やすい状況は続きそうです。
その一方で、日本株については、10月4日の投票日に向けた自民党総裁選をにらんだ動きが出てきます。今週は22日(月)の自民党総裁選告示に合わせて、立候補者の所見発表演説会が行われることもあり、政策関連の銘柄に買いが入るかどうかも注目されそうです。
今週の想定レンジと値動き
このように、今週の株式市場は強気の相場地合いを引き継ぎながらも神経質な値動きとなりそうですが、年末に向けた想定レンジについては、前回のレポートから基本的な見通しは変わっていません。
<図5>日経平均(週足)の線形回帰トレンドとMACD(2025年9月19日時点)

上の図4は、日経平均の週足チャートに2023年1月6日週を起点とした線形回帰トレンドを描画したものです。先週のローソク足は、上下に伸びた長い「ヒゲ」が目立っているものの、実体(始値と終値の値動きを示す四角い箱の部分)は、線形回帰トレンドのプラス1σ(シグマ)より上をキープしています。
そのため、まずはプラス1σ(シグマ)水準である4万4,646円水準の維持が焦点になります。もし上を目指すのであれば、プラス2σの4万6,991円に向けてどこまで上昇できるか、下方向であれば中心線の4万2,301円に向かって下落して行くことになりますが、途中に位置している25日移動平均線(19日時点で4万3,368円)あたりが目安として意識されそうです。
(土信田 雅之)