先週は典型的な上昇相場の利食い売りで日本株は下落。米国株はパウエル議長が9月利下げを示唆したことで反発上昇しました。

今週は28日(木)早朝のエヌビディアの決算発表が最大の注目ポイント。先週下落したAI株や半導体株が勢いを取り戻せるかが焦点です。


今週のマーケット:エヌビディア決算が起爆剤?AIブーム再加速...の画像はこちら >>

今週も日本株は円高進行に注意。決算次第でAI・半導体関連株が反発上昇する可能性も?

 今週の日本株は先週22日(金)の米国株の急反発を受けて上昇基調で始まりそうです。


 先週末、米国ワイオミング州で開催されたジャクソンホール会議では、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が雇用市場の悪化を理由に9月利下げを容認するような発言をしました。


 これを受けて、機関投資家が運用指針にする米国S&P500種指数は22日に前日比1.52%も反発。


 この日の上昇だけで前週末比0.27%高のプラス圏まで回復しました。


 パウエルFRB議長の講演を待たずに終了した日本市場は、日経平均株価(225種)が前週末比745円(1.7%)安の4万2,633円と利益確定売りに押されました。


 今週の日本時間28日(木)早朝には人工知能(AI)関連の花形株 エヌビディア(NVDA) が2025年5-7月決算を発表します。


 同社は中国向けAI半導体輸出収入の15%を米国政府に収めるという合意をトランプ大統領と交わしたものの、先週には中国向け最新半導体の生産停止を各国の部品供給企業に要請したと伝わるなど、中国向け事業は非常に不透明な状況です。


 しかし、 マイクロソフト(MSFT) など米国巨大IT企業は同社の高速半導体を使い、過去最高レベルのAIデータセンター投資を続けており、エヌビディアの総収入や利益は前年同期比50%前後まで伸びると見込まれています。


 今期2025年8-10月期についても非常に高水準なAI半導体の売上見通しを発表すれば、先週、調整した日米のAI・半導体関連株が再び大きく反発上昇する可能性もあるでしょう。


 先週は、軍事産業向けAIデータ分析サービスで業績・株価ともに急伸中だった米国 パランティア・テクノロジーズ(PLTR) がカラ売りファンドの売り攻勢もあり前週末比10.0%も急落。


 日本でも、AIに対する積極投資を好感して株価上昇が続いていた ソフトバンクグループ(9984) が9.9%安。


 トランプ大統領の「半導体関税は200%、300%になるかもしれない」という発言もあって、半導体研磨装置メーカーの ディスコ(6146) が8.8%安となるなど、半導体関連株も軒並み下落しています。


 それだけに今週28日(木)早朝のエヌビディアの決算発表に注目が集まります。


 今週の米国では29日(金)に7月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表されます。


 FRBが最重要視する、変動の激しい食品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターは前回6月の前年同月比2.8%増から2.9%増へと伸び率が加速する予想です。


 前日の28日(木)には、前回7月30日終了の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きに反対票を投じ、トランプ大統領から次期FRB議長に指名されるのではという報道も流れる利下げ積極派のウォラーFRB理事も講演を行います。


 29日(金)の最重要物価指標を前に、米国の9月利下げに対する楽観論と悲観論のどちらが優勢になるかも、今週の米国株の反発継続に影響しそうです。


 22日(金)のニューヨーク為替市場ではパウエルFRB議長の利下げに寛容な発言を受けて148円70銭台から、146円90銭台まで2円近い円高が進行。


 一説には、9月にFRBが利下げ、日本銀行が物価高対策で利上げをほぼ同時に行うのではないかという観測もあり、今週も円高進行に注意が必要になりそうです。


 25日(月)の日経平均は4万2,977円でスタート。一時は4万3,000円台に回復し500円超高となる場面もありましたが、前日比182円高となる4万2,815円で終えました。


先週:展開的な急騰相場!新米の価格高騰、日本初の仮想通貨承認などテーマ株は急騰

 先週の株式市場は、さすがに過去最高値を次々と更新するイケイケ相場が続いたこともあり、手じまい売り、利益確定売りが顕著な1週間でした。


 米国では急落したパランティア・テクノロジーズ(PLTR)など有望なAI関連株が数多く組み入れられたナスダック100指数が前週末比0.9%安となる一方、重厚長大産業の多いダウ工業株30種平均は1.53%高とプラスを維持。


 株価急騰で割高になったハイテク株を売って、株価が割安な不動産、エネルギー、ヘルスケア株などに乗り換える「セクターローテーション」の動きが目立ちました。


 その背景には、20日(水)に公表された前回7月30日終了のFOMCの議事録で、多くの参加理事たちが雇用の悪化リスクよりインフレリスクのほうが大きいと指摘していたこともあります。


 このFOMC議事録の公開で、次回9月17日(水)終了のFOMCでの利下げの市場予想はこれまでの9割から7割まで後退しています。


 日本では主力の 任天堂(7974) が4.4%安となったこともあり、ゲーム関連株も属するその他製品セクターが週間の業種別下落率のワースト1位になりました。


 その他、AIデータセンター向け光ファイバー販売が絶好調の フジクラ(5803) が6.4%安となるなど非鉄金属セクター、さらに半導体・AI関連株の多い電気機器、情報・通信セクターも売り込まれました。


 また国内の金利の上昇が収益に貢献するという期待感で上昇してきた銀行株も下落。


 主力の 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) は3.2%安となり、史上最高値圏から小幅下落しました。


 全体的に見て、これまで急上昇していた株ほど利食い売りにさらされる典型的な急騰相場の調整局面が続いた1週間といえるでしょう。


 そんな中、記録的な猛暑で市場に出回り始めた2025年の新米価格が前年比1.5~2倍に高騰していると報道されたこともあり、米卸し事業で業界トップクラスの 木徳神糧(2700) が前週末比20.3%も急騰するなど、農業関連株の上昇が目立ちました。


 また17日(日)、金融庁が法定通貨に価値が連動する仮想通貨の一種ステーブルコインの日本円建ての発行を国内で初めて承認すると報じられたことで、仮想通貨関連株が急騰。


 金融庁が承認したステーブルコイン「JPYC」を発行するフィンテック企業JPYCに出資している アステリア(3853) が思惑買いで5日連続ストップ高。

前週末比155%高、1週間で株価が2.5倍以上に急騰しました。


 暗号資産の販売所を運営する主力株の セレス(3696) が前週末比12.0%高となるなど、仮想通貨関連株は軒並み大幅高になりました。


 この勢いが今後も続くかどうかは不透明ですが、今週も全体相場が調整局面のときによく見かける、特定の材料株やテーマ株の急騰劇が起こるかもしれません。


今週:エヌビディア決算はAIブームの起爆剤になるか!日銀の9月利上げ説で日本株は急ブレーキも?

 今週、米国では26日(火)に民間調査機関コンファレンス・ボードの8月消費者信頼感指数、28日(木)には2025年4-6月実質国内総生産(GDP)の改定値、そして29日(金)には9月利下げの判断にも多大な影響を与える7月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)が発表されます。


 とはいえ、今週一番の注目ポイントといえば、やはり28日(木)早朝のエヌビディア(NVDA)の決算発表です。


 米国ではマイクロソフト(MSFT)が今期2025年7-9月期のたった3カ月間で過去最高の300億ドル(約44兆円)をAI投資に振り向けると発表するなど、巨大IT企業の高水準のAIデータセンター投資が継続しています。


 そんなAI投資の需要を一手に引き受けているのがエヌビディアの高速半導体です。


 先週も株価が超割高なAI関連株が急落する中、今週の決算発表への期待感からエヌビディア(NVDA)は前週末比1.36%安と下落幅は限定的でした。


 エヌビディアの株価は前回5月28日の決算発表以降、約30%も上昇していますが、それでも今回の決算発表前、すでに米国では同社の目標株価引き上げの動きが相次いでいます。


 現在、177ドル台の株価がさらに35%上昇して240ドルほどに達するという超強気な予想をするアナリストもいるほどで、今回の決算発表がAIブーム再加速の起爆剤になる可能性も高いでしょう。


 むろん、非常にハードルが高い期待以上の結果を示せなかった場合、エヌビディア株をはじめAI関連株が急落する可能性もあるので注意が必要です。


 また、ここまで日米の最高値相場を支えてきた米国の9月利下げ期待の後退も株価の波乱要因になるでしょう。


 22日(金)のパウエルFRB議長のジャクソンホール講演は9月利下げを示唆する内容だったため、米国株も反発上昇しました。


 しかし、パウエル議長はトランプ関税の物価高への影響は「今や鮮明だ」とも語っており、市場には9月に1回だけ利下げしたあと、また様子見に入るといった観測も流れています。


 29日(金)発表のコアPCEデフレーターが2%台後半で高止まりするようなら、9月利下げ期待がさらに後退。


 史上最高値の更新が続いた米国株の調整が意外と長引くかもしれません。


 日本では29日(金)に日本の物価の先行指標といわれる8月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)が発表されます。


 変動の激しい生鮮食品を除くコアCPIは7月の2.9%増から8月には2.6%増まで伸びが鈍化する予想です。


 先週22日(金)発表の7月の全国コアCPIは事前予想の前年同月比3.0%を上回る3.1%の伸びでした。


 米類やチョコレートの価格高騰で、生鮮食品を除く食料価格が前年同月比8.3%も上昇したことが物価高騰の主因になっています。


 物価高を受けて、長期金利の指標となる10年国債の利回りも22日には1.61%台まで上昇しており、日銀の9月利上げを織り込みに行く動きを見せています。


 日銀の利上げは円高や株安につながりますが、日銀が9月19日(金)終了の次回の金融政策決定会合を前に物価高対策の利上げに関して、どんな地ならしを行うかにも注目が集まりそうです。


(トウシル編集チーム)

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