2025年上期業績は予想通り、旗艦ブランド「安踏」不振もマルチブランド戦略が奏功

現地コード 銘柄名 02020

安踏体育用品


(アンタ・スポーツ・プロダクツ)


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101.60HKD
(8/28現在)


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 中国のスポーツ用品最大手、安踏体育用品の2025年6月中間期の調整後純利益は前年同期比14.5%増の70億3,000万元と、市場予想通りの水準に達した。マス市場での競争激化で旗艦ブランド「安踏」が苦戦する中、「デサント」「コーロン」などのプレミアムブランドが好調を維持した。


 7-9月期も同じ傾向が続くとみられ、BOCIはマルチブランド戦略が業績平均を上回る同社の成長を支えていると指摘。独ジャックウルフスキンの買収、韓国ムシンサとの合弁事業といった多元化が、長期的な成長の原動力となる見通しを示した。目標株価を引き上げ、株価の先行きに強気見通しを継続している。


 傘下のアメアスポーツの米上場に絡む一過性利益を除外した上期の調整後純利益は70億3,000万元。粗利益率が63.4%と0.7ポイント低下する一方、営業利益率は26.3%へ0.6ポイント改善した。内訳は「安踏」とその他ブランドが23.3%、33.2%(1.5ポイント、3.3ポイント上昇)。国内の小売環境が思わしくない中、営業効率の改善を実現させた。


 ネット通販の大型セール「618」から続く厳しい経営環境を理由に、同社は2025年通期のガイダンスを見直した。「安踏」ブランドの小売販売額伸び率を前年比1桁台半ば(修正前は1桁台後半)に引き下げ、「FILA」は1桁台半ばの見通しを維持。


 その他ブランド(ジャックウルフスキンは含まない)については前年比30%超から40%超に上方修正した。BOCIは「デサント」「コーロン」が「安踏」の不振を賄うと予想しつつマス市場を中心に値引き競争が続く点を懸念し、下期業績に関してより慎重になるとしている。


 同社のマルチブランド戦略はここに来て新たな段階を迎えている。

最近では韓国の有力ファッション通販プラットフォーム、ムシンサとの合弁事業を発表したが、これはスポーツウエア以外のアパレル市場を開拓するための新たな試み。


 一方、ジャックウルフスキンの再活性化計画には向こう3-5年を要する見通しだが、経営陣は短期的に新たな買収や合併(M&A)に動く可能性を否定していない。国内市場での自律成長が難しくなる中、同社にとっては556億元に上る現金および現金同等物が軍資金となる。


 BOCIは中国の小売環境の悪化による粗利益率の低下や新規のブランド開発に絡む支出増を理由に、2025-27年の予想1株当たり利益(EPS)を5-6%下方修正したが、強力なブランドポートフォリオを理由に、業界リーダーとしての同社の地位は安泰との見方。


 新たな専門ブランドの買収を通じて、次の成長段階を迎える見通しを示し、競合他社に対するプレミアムの余地を指摘。2026年予想株価収益率(PER)20倍を当てはめて目標株価を引き上げ、株価の先行きに対して強気見通しを継続した。


 レーティング面の潜在リスク要因としては、小売価格の値引き率の拡大、主力ブランドのセルスルー率(在庫販売率)の悪化、予想外の費用増、予想を上回るペースの店舗閉鎖、スポーツイベントのスポンサーシップ契約変更などの可能性を挙げている。


(Bank of China int.)

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