特に初心者の個人投資家に人気の「株主優待銘柄」。配当金感覚で株主優待のサービスを受けられるのが特徴ですが、株主優待廃止のリスクも考えた行動が必要になっています。
銘柄選びの条件、「株主優待」も決め手の一つ
個別銘柄へ投資する際、何らかの基準で投資対象とする銘柄を選ぶ必要があります。
[1]今後の業績の伸びに注目する(成長株)
[2]企業価値に比して株価が割安かどうかに注目する(割安株)
[3]今の株価で換算した配当金の利回りの高低に注目する(高配当株)
そして、投資初心者の方を中心に、上記以外の切り口として存在するのが「株主優待」です。
株主優待は、株主に対し、配当金とは別に贈られる「プレゼント」のようなものです。企業によって優待品はさまざまであり、自社製品詰め合わせ、自社商品券、優待券、QUOカード、そしてお米といったものまでバラエティに富んでいます。
なぜ株主優待にひかれる個人投資家が多いのか…。考えられる理由としては、株主になって株を持っていれば品物や金券などを受け取ることができる、という特別感とお得感があります。
突然の「株主優待廃止リスク」に要注意
しかし近年、個人投資家の興味関心をひきつける「株主優待」の制度を廃止する企業も少なくありません。これは東京証券取引所(東証)からの「株主平等原則」の順守要請を踏襲したものといえます。実は株主優待は、この株主平等原則から逸脱している制度なのです。
例えば「1,000株以上保有の株主に自社商品券3,000円分、1万株以上保有の株主に自社商品券3万円分を贈呈」という内容の株主優待を実施している企業があったとします。
この場合、株主が保有している株数により、受け取ることができる株主優待の内容が次のように異なります。
・100株保有:優待なし
・1,000株保有:3,000円分の優待
・5,000株保有:3,000円分の優待
・1万株保有:3万円分の優待
・100万株保有:3万円分の優待
1,000株保有している株主と5,000株保有している株主は、株主優待の内容が同じです。
株主平等の原則からいえば、5,000株保有している株主は、1,000株保有している株主の5倍の優待品を受け取ることができるはずです。しかし、株主優待制度は保有株数と受け取る優待品が比例しておらず、「株主平等原則」ではありません。
配当金は株主平等原則に反しない
一方で、配当金は、5,000株の株主は、1,000株の株主の5倍、配当金がもらえますので、株主平等原則に従った分配ができていることになります。
そのため、株主優待を廃止し、それにより浮いたコストを配当金に回す、といった動きが昨今、増え始めているのです。
そして、業績が良くないにもかかわらず、株主優待の内容が魅力的なため、個人投資家からの買いによって株価が保たれているような銘柄は要注意です。
株主優待はコストがかかりますから、業績が良くない会社であれば株主優待の廃止や縮小の可能性が高まります。
株主優待の魅力が株価形成の主要因である銘柄は、株主優待廃止による株価急落リスクはかなり高いと思っておいた方がよいでしょう。
逆に、業績が堅調な銘柄であれば、仮に株主優待が廃止となっても、それほど大きな株価下落にはつながらないように感じます。
限りある資金で株主優待をより効果的に受け取る方法は?
私たち個人投資家が使える資金には限りがあります。ですから、この限りある資金で株主優待を効果的に受け取る方法を考えることが必要です。
上で述べたように、株主優待は保有株数と優待内容が連動しないことが多いので、まずは「優待を受け取ることができる必要最小限の数量を保有する」というのが大きなポイントとなります。
例えば、A社、B社とも「100株以上保有の株主に〇〇を贈呈」という優待内容であれば、A社株に200株を投資するのではなく、A社に100株、B社に100株を投資するのです。これにより、A社、B社それぞれの株主優待を受け取ることができます。
一般的に、株主優待重視の株式投資であれば、少量の株数を、より多くの銘柄に分散して保有すれば、資金効率の面で効果的に受け取れることになります。
次回は、株主優待銘柄への投資に際して、より実践的な注意ポイントについてお話をしていきます。
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(足立 武志)