先週は米国FOMCで0.25%の利下げが決定されたことを受け、半導体株などAI株一極集中気味の最高値相場が日米株式市場を席巻。今週の日本株は日銀のETF売却開始というショック安を克服した株高が続きそうです。
日銀ETF売却発表でガス抜き完了?AI株バブルがけん引役の最高値相場続くか
今週は大きな経済指標や企業決算もないため、史上最高値相場に沸き返る日米株価がさらに続伸してもおかしくありません。
ただ上昇している銘柄が人工知能(AI)関連株に一極集中している面も強いため、いつ利益確定売りの調整局面が訪れても不思議ではないでしょう。
先週19日(金)には日本銀行が過去の株価下支え対策で購入した、主に東証株価指数(TOPIX)に連動する上場投資信託(ETF)を毎年3,300億円(時価で6,200億円)程度、売却していく方針を発表。
買い入れ時の薄価で37兆円、2025年3月末の時価で約70兆円に上る購入額から見ると、市場に与える金額ベースのインパクトは軽微で、日銀の植田和男総裁が「売却には100年以上かかる」と述べているほど。
しかし、このサプライズな発表を機に19日(金)の日経平均株価(225種)は高値から安値まで1,357円も急落。
今週も心理的な株価の重しになるかもしれません。
ただし、日銀ETF売りの主な対象となるTOPIXは19日に0.4%下落(週間でも0.4%の下落)にとどまり、日経平均株価(225種)も安値から急速に戻して終値は前週末比277円(0.6%)高の4万5,045円と大台を維持しています。
日銀のETF売却に伴う売りは最高値相場の単なる「ガス抜き」に過ぎない可能性のほうが高いでしょう。
今週22日(月)にはいよいよ石破茂首相の退陣表明に伴う自民党総裁選挙が公示され、AI一辺倒の相場から、総裁選候補者の掲げる政策に関連した銘柄に物色の波が広がることも期待されます。
米国では日本市場が祝日休場の23日(火)に9月の製造業およびサービス部門の購買担当者景気指数(PMI)速報値が発表。
24日(水)に8月の新築住宅販売件数、25日(木)に8月の中古住宅販売件数も発表されます。
米国の住宅市況は価格高騰による販売の落ち込みが続いているだけに、あらためて米国景気を不安視する流れが生まれるかもしれません。
26日(金)には8月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表。
米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が最重要視する、変動の激しい食品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターは前月と変わらず前年同月比2.9%の高い伸びを示すと予想されています。
24日(水)早朝には、AIデータセンター向け半導体メモリの販売が好調な米国 マイクロン・テクノロジー(MU) が決算発表。
好決算なら米国の半導体関連株の急騰にますます勢いがつきそうです。
機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数は先週、前週末比1.22%上昇。
またもや米国主要三大株価指数が史上最高値を更新して取引を終了しました。
18日(木)には金利低下が業績の追い風になる小型株を集めたRUSSELL(ラッセル)2000指数が約4年ぶりに史上最高値を更新。
トランプ関税による保護主義にもかかわらず、米国株の目を見張るほどの強さは今週も続きそうです。
日本株上昇継続の条件になる為替相場は、19日(金)の日銀利上げ見送りを受けて円安が進み、147円90銭台で終了しています。
しかし、17日(水)終了の米連邦公開市場委員会(FOMC)では2025年内のさらなる追加利下げが濃厚になり、日米金利差縮小に対する警戒感から、一時145円50銭前後まで7月以来の約2カ月ぶりに急速な円高へ進みました。
今週も米国の利下げ回数などをにらんで、ドル/円相場が乱高下する可能性に注意が必要です。
22日(月)の日経平均は4万5,193円でスタート。
先週:金利低下でAI株の独り勝ち続く!米中半導体戦争の緩和に対する期待感も
先週の日米株式市場は、17日(水)終了の米国FOMCで約9カ月ぶりとなる利下げが行われ、2025年内にさらに2度の追加利下げが行われるという見通しを好感した「金融相場」が席巻しました。
金融相場とは、たとえ景気・雇用など実体経済が悪化気味でも、金利が低下して株式市場に流れ込む資金が増えることで株高が続く相場のことです。
その流れを受け、AIを活用した労働力削減が収益源で、米国全体の雇用市場の悪化はむしろ好材料といえるAI株や半導体株に買いが集中する、バブル気味のAI相場が続きました。
18日(木)、AI半導体メーカーの勝ち組企業である エヌビディア(NVDA) が、 インテル(INTC) に50億ドル(約7,395億円)を出資してAI関連製品の共同開発を行うと発表。
インテル(INTC)は前週末比22.8%も急騰、エヌビディア(NVDA)は0.65%安でした。
15日(月)に最高経営責任者のイーロン・マスク氏が約10億ドル(約1,479億円)の自社株買いを発表した電気自動車の テスラ(TSLA) が7.61%高と続伸するなど、これまで出遅れ気味だった巨大IT企業の一角も買われました。
また、18日(木)に英国の国防省との新たな契約が伝わった、軍事部門向けAIデータ分析に強い パランティア・テクノロジーズ(PLTR) が6.39%上昇するなど、AI株の物色がソフトウエア会社などにも広がる流れも健在です。
日本株の業種別上昇率ランキングでは石油・石炭製品が首位に。
中堅石油精製会社の 富士石油(5017) が大手の 出光興産(5019) の株式公開買い付け(TOB)による子会社化発表を受けて前週末比20.3%高。
業界再編期待が同セクターの上昇に貢献しました。
また米国同様、半導体株の多くが所属する電気機器セクターが上昇率3位で非常に好調でした。
半導体成膜装置メーカーの KOKUSAI ELECTRIC(6525) が23.1%高、半導体運搬装置の ローツェ(6323) が16.3%高。
半導体製造装置メーカー最大手で日経平均株価への影響力の高い 東京エレクトロン(8035) が13.4%高。
半導体関連株の中でもこれまで株価が低迷気味だった出遅れ株が好んで買われる展開になりました。
また、政府の国産AI開発で恩恵を受けるという思惑から、独立系の国内データセンター大手の さくらインターネット(3778) が29.8%も急騰するなど、とにかくAI関連株一極集中気味の相場展開でした。
日米AIバブルの原動力になったのは、17日(水)に雇用市場の悪化を理由に0.25%の利下げを決めたFOMCです。
単に今回0.25%の利下げをして、あとは様子見という材料出尽くしに終わらなかったのは、同FOMCで今後の政策金利の推移を予想した分布図「ドットチャート」で2025年内にあと2度の0.25%利下げが予想されたからです。
2025年内のFOMCは10月29日(水)、12月10日(水)終了の2回しか残されていないため、今後2会合連続の利下げ見通しが示されたことで、金利低下が追い風になりやすいAI株に大量のお金が流れ込む結果になりました。
19日(金)には米国トランプ大統領と中国の習近平国家主席が電話会談。
中国企業バイトダンスの動画配信SNS「TikTok」の米国事業の米国企業への売却交渉が前進しました。
トランプ大統領は10月末に韓国で開催予定のアジア太平洋経済協力(APEC)会議での習近平主席との直接会談や2026年早々の訪中も表明。
米国の対中国向け半導体規制が実質骨抜きになることに対する期待感も、日米AIバブル相場にとって追い風になったといえるでしょう。
今週:FOMCドットチャートの混乱が尾を引く?米物価指標や自民党総裁選相場に期待!
今週は米国で年内にあと2回利下げがあることを好感した株式市場への資金流入が続くかどうかが焦点です。
17日(水)のFOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長はトランプ関税によるインフレリスクを警戒して、トランプ大統領が要求する大幅な利下げ圧力に屈しない、ややタカ派的な姿勢を崩しませんでした。
2025年内、あと2回の利下げ予想が中央値だったドットチャートでも、2026年と2027年の利下げ回数はトランプ関税によるインフレリスクを警戒して、年間たった1回だけが中央値です。
FRBの利下げ見通しが今年2025年と来年2026年以降でかなり温度差があるため、今後、株式市場が混乱する可能性もあります。
また26日(金)には8月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表。
米国の物価指標はトランプ関税にもかかわらず急激に上昇していませんが、物価の上げ渋り傾向が確認されて株高が続く流れが今回も続くかどうかに注目です。
22日(月)に公示される自民党総裁選では小泉進次郎現農林水産大臣や保守派の高市早苗前経済安全保障担当大臣など5名の候補が立候補予定です。
立候補会見で「2030年度までに国内投資135兆円、平均賃金100万円増」を掲げた小泉進次郎氏が自民党内の派閥力学もあって新総裁の有力候補になっています。
しかし、小泉氏の選挙区がある神奈川地盤の老舗百貨店として9月に入って前月末比24.4%高の さいか屋(8254) は先週早くも前週末比0.7%安と失速。
一方、保守派やSNSから熱狂的な支持を受ける高市氏は危機管理投資や成長投資など積極財政を政策の柱に掲げ、ガソリン税の暫定税率廃止や年収の壁引き上げなど野党が掲げる政策にも歩み寄りの姿勢を示しました。
同氏が優勢な展開になると、 三菱重工業(7011) など防衛株や 東京電力ホールディングス(9501) など原発関連株の上昇に期待できるかもしれません。
先週はAIバブルに圧倒されて、自民党総裁関連株は盛り下がり気味でした。
小泉氏が有力な情勢で、盛り上がりに欠いたまま10月4日(土)の投開票を迎えるようだと、いよいよ自民党の衰退や新首相が野党出身者になるような新政権誕生など、株価にとって多少逆風な展開も視野に入ってくるかもしれません。
(トウシル編集チーム)