先週はAI株が小休止したものの、日本株は円安もあり史上最高値を更新しました。今週は米国で雇用統計などの発表、日本でも日銀が10月末に追加利上げを行う観測が高まり、株価が小幅調整してもおかしくありません。
週末の自民党総裁選が株価を下支え?雇用統計や日銀植田総裁の発言で急変も!?
人工知能(AI)関連株をけん引役に、日米ともに主要株価指数が史上最高値を何度も更新した9月のイケイケ相場も終わり、今週は月をまたいで10月相場が始まります。
週末の10月4日(土)には自民党総裁選挙の投開票が行われ、新総裁が選出されます。
10月中旬から20日(月)週頃に臨時国会が召集され、新首相が決まる予定です。
自民党総裁選に対する期待感はややトーンダウンしているものの、臨時国会で決まった新首相の下で新たな連立政権が減税や積極財政を行う期待感が高まれば、今週も日本株が米国株以上に上昇する下支え役になりそうです。
今週は月初めということもあり、米国で非常に重要な雇用・景気指標が相次いで発表されます。
10月1日(水)には給与計算代行会社オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)の9月の民間雇用統計や全米供給管理協会(ISM)の9月製造業景況指数、3日(金)には9月雇用統計やISM非製造業景況指数が発表されます。
前回8月の雇用・景気指標は一部を除き低調で、8月雇用統計の非農業部門新規雇用者数は予想をはるかに下回る2.2万人増にとどまりました。
発表当日の9月5日のS&P500種指数は下落しましたが、その後、雇用市場の冷え込みが利下げにつながる期待感が台頭し、米国株は翌週以降、大きく上昇しています。
今週も雇用・景気関連指標が悪化すれば、逆に2025年内に残された2度の米連邦公開市場委員会(FOMC)での連続利下げが確実視されるため、逆に株価が上昇する可能性も高いでしょう。
反対に9月の雇用統計が良すぎると利下げ期待が後退するため、株安につながる恐れもあります。
利下げで株式市場にお金が流れ込みやすくなることを期待した「金融相場」ならではの動きが顕著になるかもしれません。
また国内では10月3日(金)、大阪の経済団体主催の懇談会で日本銀行の植田和男総裁が挨拶を行うなど日本銀行高官の発言が相次ぎます。
日銀が追加利上げに慎重な理由に挙げていたトランプ関税による米国経済の不確実性はいまや後退しています。
すでに日本株は過去最高値を更新し、低金利・円安による物価高を考えると、10月30日(木)終了の日銀の金融政策決定会合で追加利上げが行われても不思議はありません。
今週、植田総裁など日銀要人が追加利上げをほのめかすような発言をすると、金利上昇や為替相場の円高転換で日本株には逆風かもしれません。
先週の日経平均株価(225種)は前週末比309円(0.7%)高の4万5,354円で終了。
祝日の23日(火)をはさんだ25日(木)の終値4万5,754円までは3営業日連続で最高値を更新しました。
しかし、26日(金)は値がさのAI関連株の利益確定売りに押されて日経平均は下落。
その一方、26日のニューヨーク市場終値で1ドル=149円50銭に達した円安トレンドもあり、自動車株や資源関連株、銀行株などが買われ、東証株価指数(TOPIX)は24日(水)から26日(金)まで3営業日連続で最高値を更新しています。
AI株一辺倒だった日本株の上昇が、堅調な米国経済の動向を受けたドル高・円安の進行や日米両国の金利上昇もあって外需株や銀行株など幅広い銘柄まで広がっていることは朗報といえるでしょう。
一方、機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数は4週ぶりに前週末比0.31%の小幅下落で終了。
AIデータセンター向けクラウドインフラ事業の受注激増を好感して8月末から9月19日(金)までに株価が36.5%も急騰していた オラクル(ORCL) が、26日(金)に前週末比8.16%安に沈むなど、AI関連株の一角に利益確定売りが広がったことが米国株の足を引っ張りました。
10月が始まる今週、29日(月)の日経平均は4万5,113円でスタート。4万5,050円付近を推移し、終値は前営業日比311円安となる4万5,043円の続落で終えました。
先週:原油や銅の価格高騰で資源株上昇!トランプ関税で医薬品株下落!
先週はウクライナによる石油施設を狙ったドローン攻撃でロシアが燃料輸出の制限を発表したことで、原油価格が週初から4%以上も上昇。
また、インドネシアにある世界最大級の銅・金鉱山の土砂災害による生産停止で、銅の価格が3%近く上昇し、一時、約1年4カ月ぶりの高値をつけました。
これを受けて日本株の週間業種別上昇率では、石油採掘を行う鉱業、石油元売り各社が属する石油・石炭製品、電線や電子部品向け銅メーカーが集まる非鉄金属といったセクターが上位を独占。
世界中に原油権益を持つ INPEX(1605) が前週末比6.2%高。
石油元売り最大手の ENEOSホールディングス(5020) が5.1%高、世界各地に銅や金の採掘権を持つ 住友金属鉱山(5713) が12.6%高となるなど、資源株が上昇しました。
26日(金)には国内の金の販売価格の代表的指標である田中貴金属工業(非上場)の金地金の店頭小売価格が1グラムあたり1万9,940円の史上最高値をつけたことも、住友金属鉱山など非鉄金属株には追い風でした。
また日銀による追加利上げが近いのではないかという観測もあり、日本の長期金利の指標となる10年国債の利回りは22日(月)に一時17年ぶりの高水準となる1.66%台まで上昇。
金利が上昇すると収益が拡大しやすい銀行株も上昇し、メガバンクの一角、 みずほフィナンシャルグループ(8411) は5.0%高。
25日(木)に貸出金利息の増加などで2026年3月期の業績・配当予想を上方修正した群馬銀行(8334)が8.3%高となるなど、実際に業績好転を発表した地方銀行株も急騰しました。
トランプ関税で株価が低迷していた マツダ(7261) が4.2%高と反発するなど、円安の進行もあって自動車株も堅調でした。
米国の巨額AI設備投資「Stargate Project」に参画している ソフトバンクグループ(9984) は2.6%高と上昇速度が低下。
AI向け半導体関連の主力株である アドバンテスト(6857) は前週末比3.7%の下落となるなど、9月の日本株上昇を力強くけん引してきたAI関連株は強弱まちまちでした。
その一方、トランプ大統領が25日(木)に今週10月1日(水)から一部の輸入医薬品に100%の関税を課すと表明したことで、医薬品セクターが業種別下落率ワースト1位になりました。
創薬に関わった経口肥満治療薬の米国での治験が進む 中外製薬(4519) が7.9%安と急落。
27日(土)には日米貿易交渉の合意に従って日本からの輸入医薬品に対する関税の上限が100%ではなく15%になると米国政府当局者が回答したこともあり、今週は医薬品株が反発上昇するかもしれません。
ただトランプ関税発動以降、米国ではAI株が上昇する中、製薬株やヘルスケア関連株は不調です。
米国製薬会社大手の メルク(MRK) は2025年に入って前年末比21%安、新型コロナウイルスのワクチン開発で2022年までは株価が躍進した ファイザー(PFE) も10%安と振るいません。
絶好調が続く米国株ですが、青天井で上昇しているのは主にAI関連株だけという点には注意が必要です。
今週:米国雇用悪化に対する株価の反応に変化?日銀利上げ観測に注意!
今週は先述した10月3日(金)の9月雇用統計など、米国の重要雇用・景気指標が発表されます。
先週26日(金)に発表された8月の米国個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)は事前の予想と全て一致しました。
米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が最も重要視する、変動の激しい食品とエネルギーを除くコアPCEデフレーターは前年同月比2.9%の上昇でした。
前月7月と伸び率が変わらず高止まりしたものの、予想された通りの上昇だったことでFRBの追加利下げ期待が高まり、26日(金)の米国株は上昇に転じました。
今週発表の雇用・景気指標関連も結果が想定の範囲内で悪化する分には、追加利下げに対する期待感がますます高まることになり、米国株上昇につながる可能性が高いかもしれません。
ただ、ロシアの原油輸出制限など地政学的リスクの高まりによる資源価格の高騰や医薬品、大型トラックなどに対する新たなトランプ関税発動に加えて、今週の雇用統計が予想以上に悪化すると、物価高と景気後退が同時進行するスタグフレーション懸念が再び台頭する恐れもあります。
9月23日(火)には金(ゴールド)の先物価格が史上最高値を更新して1トロイオンス3,800ドル台をつけるなど、米国の利下げ期待で金価格は世界的に上昇しています。
その背景にはインフレ再燃や、米国や日本の財政赤字拡大による米国ドルや日本円といった貨幣に対する信認低下もありそうです。
日本では、日経平均が史上最高値を更新し、米国トランプ関税による世界経済の不確実性の高まりも後退しているため、日銀が来たる10月30日(木)終了の金融政策決定会合で利上げに踏み切る可能性が高まっています。
今週は10月3日(金)の植田日銀総裁の発言以外にも、9月29日(月)には金融緩和に積極的なリフレ派の野口旭審議委員、10月2日(木)には内田真一副総裁の発言が予定されています。
前回9月19日終了の日銀の金融政策決定会合では、2名の政策委員が政策金利0.75%への利上げを求めて反対票を投じたことが話題になりました。
今回、執行部に相当する植田総裁、内田副総裁が10月の追加利上げについて根回しするような発言をすると、円高株安に振れる可能性もありそうです。
ただ、週末の10月4日(土)の自民党総裁選に対する期待感がそれを上回るようなら、絶好調が続く日本株がジリ高する展開に期待できるでしょう。
(トウシル編集チーム)