先週の円安から一転、日銀高官のタカ派的発言や米政府閉鎖懸念などの影響で円高へ反転しました。今週は米雇用統計の結果次第でさらに地合いが変わる可能性があり留意が必要です。

10月は日銀高官の講演会が続き、タカ派的な内容が出るのかにも注目したいと思います。


円高への反転は一時的か?米雇用統計・日銀・政局イベントが交差...の画像はこちら >>

先週の円安から円高へ一転。今週の米雇用統計次第でさらに反転も?

 先週は米連邦公開市場委員会(FOMC)、日本銀行会合後の円安地合いが続きました。先週後半には24日の米8月新築住宅販売件数(80万件)が2022年以来の高水準を記録し、25日の米4-6月期国内総生産(GDP)確定値が+3.8%と改定値の+3.3%から予想を大きく上回り上方修正されたことから、米経済の堅調さが示され一段のドル高となりました。


 加えて、米新規失業保険申請件数が減少したため米雇用環境悪化懸念が和らぎ、年内利下げ期待が後退したこともドル高を後押しして149円90銭台の円安となりました。


 そして26日の9月東京都区部消費者物価指数(CPI)が+2.5%と弱かったことから150円手前まで円安に動きました。心理的節目である150円手前では様子見となりましたが、米8月PCEコアデフレーターは前年比+2.9%と予想通りだったものの、米9月ミシガン大学消費者信頼感指数が予想を下回ると米金利が低下し、150円手前から失速しました。


 150円超の水準は、2月と8月に植田和男総裁とベッセント財務長官が電話会談した時の水準であるため、市場が警戒したのかもしれません。


 しかし、週が変わると、先週後半の米景気の底堅さを背景としたドル高・円安から地合いが変わりました。


 週明け29日には、札幌の講演会でハト派とされている日本銀行の野口旭審議委員が、「政策金利調整の必要性がこれまで以上に高まりつつある」とタカ派的発言をしたことから円高が進み、また、米政府機関の一部閉鎖への警戒感からドル安も進み148円台半ばまで円高が進みました。


 30日には、トランプ大統領と議会指導者との予算案を巡る話し合いが暗礁に乗り上げたため、政府機関閉鎖の可能性が高まってきたことがドルの上値を抑え、ドル/円は147円台半ばまで円高に動きました。米9月シカゴ購買部協会景気指数(PMI)や、米コンファレンスボードの9月消費者信頼感指数などの経済指標が弱かったこともドル安を後押ししました。


 このように先週後半の動きと今週の動きは地合いがガラッと変わりました。月末、四半期末の需給要因で動いたこともあるかもしれません。米経済指標が強弱入り混じったため、今週3日の米雇用統計がますます注目されることになります。


 先月に続き、低調な結果になったら一気に利下げ期待が高まり、ドル安が進むかもしれません。逆に良い内容だった場合は、金利もドルも反転する可能性があります。結果次第では相場地合いがまた変わるかもしれないため注意が必要です。


 3日の9月雇用統計、15日の9月CPI次第で米連邦準備制度理事会(FRB)の慎重姿勢が維持もしくは強まるのかどうか、あるいは雇用低調、物価抑制であれば、FRB内のハト派が増え、市場の年内2回の利下げ期待が高まるのかどうか注目です。また、政府機関閉鎖によって雇用統計やCPIの発表が延期となるかもしれない点にも留意する必要があります。


10月は日銀高官の講演会が続く。タカ派的発言で利上げの地ならしとなるか

 FOMC(10月28~29日)の翌日10月30日には、米国7-9月期GDPが発表されます。4-6月期GDPは改定値の3.3%から3.8%に上方修正されました。その後発表された、速報性があるため市場が注目しているアトランタ連邦準備銀行のGDPNowは9月26日時点で7-9月期GDPを+3.9%と予測しています。


 もし、前期に続き、3%超の成長が確認されれば、年内の利下げ時期が後倒しになることが予想されます。10月に利下げが決定していれば、またはFOMC前も底堅い景気を示す経済指標が相次ぎ10月の利下げ見送りであれば、12月も見送りの可能性があるかもしれません。


 9月の日銀会合で田村直樹・高田創審議委員が利上げを主張して反対票を投じてから、ドル/円は日銀の動きや日本の長期金利の動きに反応しやすくなっている点には留意する必要があります。 


 今月は、下記のように日銀会合(10月29~30日)までに複数の日銀高官の講演会が予定されています。29日の野口審議委員の発言のように田村・高田審議委員の主張に同調する発言がさらに出てくるかもしれません。


 特に日銀会合前に予定されている、田村(10/16)、高田(10/20)両審議委員の講演に注目です。よりタカ派的な内容だと日銀の利上げへの地ならしになるかもしれません。


 しかし、講演後の10月24日発表の全国9月CPIが弱かったりすると、日銀会合ではトーンダウンするかもしれないため思い込みは持たないほうがよいかもしれません。


日銀・政局を巡る10月重要イベント
  • 9月29日:野口日銀審議委員 講演
  • 10月1日:日銀短観(9月調査)
  • 10月2日:内田眞一日銀副総裁 挨拶
  • 10月3日:植田日銀総裁 挨拶
  • 10月4日:自民党総裁選
  • 10月6日:日銀支店長会議
  • 10月中旬:国会で次期首相指名投票
  • 10月16日:田村日銀審議委員 挨拶
  • 10月17日:内田日銀副総裁 挨拶
  • 10月20日:高田日銀審議委員 講演
  • 10月29~30日:日銀金融政策決定会合

 景気の方も4-6月期GDP成長率は+1.0%から+2.2%に上方修正されましたが、7-9月期GDP(11月17日発表予定)はマイナス予想となっています。トランプ関税による輸出の落ち込みが影響するとのことですが、これらを踏まえて植田総裁は影響を見極めるまで慎重姿勢を貫くかもしれません。


 今後の講演でタカ派的な発言が出ると円高に動くかもしれませんが、10月の会合までの持続性はないかもしれません。円高が進むというよりも円安に抑制がかかるという地合いが予想されます。

やはり、10月会合の結果を見るまでは方向は定まらないかもしれません。


 FRBの利下げ見通しがタカ派的からハト派的になるのか、そして日銀の見通しがハト派的現状維持もしくはタカ派になるのか、注目したいと思います。


(ハッサク)

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