先週の日経平均は2週連続で上昇も、材料交錯で荒い値動きとなりました。今週は米FOMCとメジャーSQを控え、相場が大きく動きやすい地合いになりそうです。

チャート上では、「短期的な伸びしろ」に対し「週足レベルの過熱感」が示唆されるなど、異なる時間軸で見ると、仮にイベント通過後に相場が上昇しても「賞味期限」は短いかもしれません。


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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【テクニカル分析】今週の株式市場 短期の上値余地と中期の過熱感。両者の「ギャップ」に注意<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」


荒い値動きが目立った先週の日本株市場

 12月相場入りした最初の株式市場ですが、週末5日(金)の日経平均株価は5万0,491円で取引を終えました。前週末終値(11月28日の5万0,253円)と比較すると、238円高(+0.47%)となり、週間ベースでは2週連続の上昇を記録しました。


「週間ベースでプラスだった」という結果だけを見れば、相場は堅調だったように思えます。しかし、実際のところは、「相場の動きについて行くのが難しい1週間だった」というのが肌感覚の感想ではないでしょうか。


<図1>日経平均の5分足チャート(2025年12月1日~5日)


米FOMCとメジャーSQに注目。短期の上値余地と中期の過熱感との「ギャップ」に注意
出所:MARKETSPEEDII

 上の図1は、先週1週間の日経平均の値動きを5分足チャートで示したものです。


 これを見ると、週初の1日(月)に大きく下落してスタートしたかと思えば、週半ばの4日(木)には1,000円を超える急騰を見せ、週末の5日(金)には再び下落という、「下げて、上げて、また下がる」慌ただしい展開だったことがわかります。


 日々の値動きも株価が上下する場面が目立ち、方向感が定まらない中で、短期的な材料に振り回される展開が続きました。


相場を動かした材料や背景を整理して見えること

 このような先週の相場が乱高下した背景には、「ポジティブな材料」と「ネガティブな材料」が綱引きをし、日替わりで主導権を奪い合っていた構図が透けて見えます。


 そこで、先ほどの図1を元に、時系列で相場の材料と紐づけて考えてみます。


 まず、週の始まりは「警戒感」が先行しました。1日(月)に行われた植田和男日本銀行総裁の講演での発言をきっかけに、市場では「12月18日~19日の日銀金融政策決定会合で、利上げが行われるのではないか?」という観測が一気に高まりました。


 これを受けて、金利上昇がメリットとなる銀行株が買われる一方で、市場全体としては金融引き締めへの警戒感から売り優勢のスタートとなりました。


 しかし、週の半ばになると景色が一変します。米国市場から、「ロボティクス分野に関する大統領令を検討している」という報道が飛び込んできました。これにより、「生成AI(データセンターなどの半導体)」だけでなく、工場や倉庫などで物理的に稼働する「フィジカルAI(ロボット)」にも市場の関心が向かうようになります。


 国内株市場では、 ファナック(6954) や 安川電機(6506) といった産業用ロボット関連株や、AI関連株が大きく買われました。これが4日(木)の相場を牽引し、日経平均が5万1,000円台を回復するところまで一気に押し上げる原動力となりました。


 しかし、週末にかけては再び「重石」が意識されます。米国の利下げ期待やハイテク株高は相場の支えとなったものの、日銀の利上げ観測と米国の利下げ観測が同時に意識されたことで、「日米金利差の縮小」を見越した円高/ドル安が警戒されることになりました。これが輸出関連銘柄などの利益圧迫懸念につながり、週末にかけての上値を抑える要因となりました。


 その一方で、「バリュー株」への資金流入という興味深い動きも見られました。

例年の12月上旬は、3月期決算企業の中間配当支払いが集中する時期でもあります。投資家の手元に入った配当金が再び株式市場に還流する「再投資」の動きが活発化しました。


 その中でも、割安感があり、かつ業績が安定している商社株などがその受け皿となりました。実際に、 三菱商事(8058) や 三井物産(8031) をはじめ、 双日(2768) 、 住友商事(8053) 、 丸紅(8002) といった大手商社株の多くが、相場全体が不安定な中にあっても上場来高値を更新する動きを見せています。


 このように先週の市場を整理すると、「米利下げ期待の持続」、「AI相場の広がり」、「需給の良さ(配当金再投資)」、「日銀金融政策への警戒」といった要素が複雑に絡み合い、ポジティブ要因とネガティブ要因が綱引きをしている状態だったと言えそうです。


今週の注目材料は?

 さて、こうした状況下で迎える今週ですが、最大の注目点となるのは、9日(火)から10日(水)に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)と、週末12日(金)に算出されるメジャー特別清算指数(SQ)になります。


 まず、FOMCについては、利下げが決定されることはほぼ確実視されており、すでに相場にも織り込まれています。したがって、利下げ決定そのものがサプライズになることはなさそうです。


 注目すべきは「その先」です。FOMC終了後に行われるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見での発言トーンや、政策金利発表と同時に公表される「ドット・チャート(FOMC参加者による金利見通し)」の中身が焦点になります。


 とりわけ、ドット・チャートでは、FRBメンバーが「2026年にどの程度の利下げを見込んでいるか」が重要になります。


 インフレ再燃リスクを警戒し、2026年の利下げペースを緩やかにする(利下げ回数を減らす)「タカ派」の見通しが示された場合、市場は「材料出尽くし」と受け止めて、利益確定売りが優勢になる可能性がありあす。


 一方、インフレ抑制に自信を見せ、2026年も順調に利下げが進む「ハト派」の見通しが示された場合は、「年末ラリー」に向けた号砲となるかもしれません。


 また、週末12日(金)は今年最後のメジャーSQ日でもあります。需給主導で動きやすい週となるため、米FOMCの結果との組み合わせ次第では、値動きが大きくなることも想定されます。


 このほか、注意しておきたい材料としては、日中関係が挙げられます。今週末の12月13日(土)は、中国における「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」にあたり、中国で反日感情が高まりやすいタイミングとなります。日中関係の動向や報道が相場のムードに影響を及ぼす可能性があることにも注意しておく必要がありそうです。


短期的な急上昇はあっても、賞味期限は短い?

 それでは、これまでの状況を踏まえて、今週以降の日本株がどのような動きになりそうか、テクニカル分析の視点からも考察していきます。


 結論から言ってしまうと、「上方向に動き出した場合、その賞味期限は短い」のかもしれません。


 その理由を、移動平均線と「線形回帰トレンド」を使って解説します。


<図2>日経平均(日足)とMACDの動き(2025年12月5日時点)


米FOMCとメジャーSQに注目。短期の上値余地と中期の過熱感との「ギャップ」に注意
出所:MARKETSPEEDII

 日経平均の日足チャート(図2)を見ると、前回のレポートで注目ポイントとして挙げていた「25日移動平均線の早期回復」を達成しています。


▼前回のレポート

日経平均、年末株高期待とスピード違反に注意/日米ともに銀行株の動きに注目


 特に4日(木)には株価が上放れしかけましたが、週末の下落によって押し戻され、再び25日線近辺での攻防戦に戻ってしまい、まだ完全に強いとは言い切れない形です。下段のMACDも先週末5日(金)時点でシグナルを上抜けできていません。


<図3>TOPIX(日足)とMACDの動き(2025年12月5日時点)


米FOMCとメジャーSQに注目。短期の上値余地と中期の過熱感との「ギャップ」に注意
出所:MARKETSPEEDII

 もう一方の東証株価指数(TOPIX)については、上の図3にもある通り、週を通じて株価が25日移動平均線よりも上をキープして推移していたほか、4日(木)には最高値を更新する場面も見られました。

また、下段のMACDもシグナルを微妙ながらも上抜けていて、チャートの見た目では日経平均よりも強い印象を受けます。


 しかし、週間ベースの騰落を見ると、実はTOPIXは前週末比で下落しており、ここにも「見た目は強いが、中身はそこまで強くない」というチグハグさも垣間見えます。


 このように、現在は日経平均・TOPIXはともに強気と弱気が併存し、絶妙なバランスを保っている状況と言えます。それだけに、今週のFOMCなどのイベント次第で、このバランスがどちらかに傾けば、相場が大きく動き出す可能性があります。


 では、仮にイベントを通過して相場が「上方向(上昇)」に動き出した場合、どこまでの上値が期待できるのでしょうか。ここで「線形回帰トレンド」を確認してみます。


 線形回帰トレンドとは、過去の株価の動きから中心となるトレンドラインを引き、そこから株価がどの程度乖離しているか(統計的な行き過ぎ)を測る指標です。


<図4>日経平均(日足)の線形回帰トレンド(2025年12月5日時点)


米FOMCとメジャーSQに注目。短期の上値余地と中期の過熱感との「ギャップ」に注意
出所:MARKETSPEEDII

<図5>TOPIX(日足)の線形回帰トレンド(2025年12月5日時点)


米FOMCとメジャーSQに注目。短期の上値余地と中期の過熱感との「ギャップ」に注意
出所:MARKETSPEEDII

 上の図4と図5は、日足ベースで見た、日経平均とTOPIXの線形回帰トレンドです。起点となるのは、いわゆるトランプ関税による急落が底打ちした今年4月7日を起点としています。


 これを見ると、日経平均・TOPIXともに、現在の株価は「中心線」と「マイナス1σ(シグマ)」の範囲内に位置しています。これは、「上昇トレンドの中では比較的低い位置(出遅れている位置)」にあることを示しています。


 つまり、短期的な視点では「過熱感はなく、好材料が出れば中心線を超えて上値を追う余地(伸びしろ)がある」というわけです。


 しかし、週足ベースでは異なる景色が見えてきます。


<図6>日経平均(週足)の線形回帰トレンド(2025年12月5日時点)


米FOMCとメジャーSQに注目。短期の上値余地と中期の過熱感との「ギャップ」に注意
出所:MARKETSPEEDII

<図7>TOPIX(週足)の線形回帰トレンド(2025年12月5日時点)


米FOMCとメジャーSQに注目。短期の上値余地と中期の過熱感との「ギャップ」に注意
出所:MARKETSPEEDII

 上の図6と図7でも確認できるように、週足の線形回帰トレンドでは、日経平均・TOPIXともに、株価がプラス2σ(シグマ)付近という、非常に高い位置にあることがわかります。統計的にプラス2σというのは、「かなり買われすぎ」、「高値圏」を示唆する水準です。


 ここから読み取れるのは、「短期と中長期のトレンドの強さにギャップが生じている」ということです。


 このギャップが意味することは、「短期的にはイベント通過などで株価が急上昇する場面があるかもしれないが、上がればすぐに週足レベルでの過熱感(プラス2σ超え)が意識され、頭を叩かれやすくなる」というシナリオです。


 つまり、上昇トレンドが発生したとしても、その持続期間(賞味期限)は短くなる可能性があります。


 さらに、来週には日銀金融政策決定会合も控えており、積極的に相場が動けないことも考えられます。


 したがって、今週の投資戦略としては、相場の上昇に素直についていく姿勢は持ちつつも、「高値掴み」には十分に注意が必要です。利益が出たらこまめに確定していくような、機動的な立ち回りが求められる週になりそうです。


(土信田 雅之)

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