10月のBTC相場は史上最高値を更新したが、直後に1日167億ドルの史上最大のポジション調整が発生。その後、急落要因は払拭され、好材料がそろっているのに相場はさえず、10万ドルを割り込んでしまった。

上昇トレンドは終わったのか? 楽天ウォレット・シニアアナリスト:松田康生、通称MATT(マット)が、今後の方向性を分析する。


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「 ビットコイン、最高値更新直後に急落…ここがピークアウト?11月復活はあり? 」


史上最高値と史上最大のポジション調整:10月のビットコイン振り返り

ビットコイン、最高値更新直後に急落…ここがピークアウト?11月復活はあり?
出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

10月のBTC市場

 10月のビットコイン(BTC)相場は行って来いの展開。


 9月末に10.8万ドルで切り返すと、政府閉鎖で10月利下げがほぼ確実視される中、順調に値を伸ばし、6日には12.6万ドルと8月に付けた史上最高値を更新した。


 しかし、10月10日に中国のレアアース輸出規制強化に反発し、トランプ大統領が100%関税を課すと宣言したことで急落。17日にZions Bancorporation(ジオンズ・バンコーポレーション:ユタ州ソルトレイクシティ拠点の銀行グループ)が不良債権計上を発表すると、にわかに米地銀の信用不安が広がり、BTCは一時10.3万ドルまで値を下げた。


 だが、同行の好決算で信用不安は後退。25~26日のベッセント財務長官と何立峰(ホー・リーフォン)副首相による米中通商交渉で、レアアース規制の延期と100%関税の先送りで大枠合意。続く30日の米首脳会談では、フェンタニル(合成麻薬)の流入阻止を目的に課された追加関税、が20%から10%に引き下げが合意し、米中貿易摩擦は一服した。


 30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でもパウエル議長は「12月は未定」としながら、9月に続いて2会合連続の利下げを決定。ばらまいたドルの回収を意味するバランスシート縮小も停止するとした。


なぜ失速した?

 このように史上最高値更新後の急落の原因は解消、材料的にはむしろ前進しているにもかかわらず、BTCの上値は重い。これはなぜだろうか? 要因を解析してみよう。


[1]トレジャリー企業の低迷

 一つには外部資金を調達して暗号資産購入を進める「トレジャリー企業」の低迷だ。代表格のストラテジー社の購入額は8月以降急ブレーキがかかっている。同社は今後、2年間で840億ドルの資金調達を目指しているもようだが、直近では週1億ドル以上購入できた週はここ3カ月の間、ない。これは優先株プログラムに応じる投資家が減少していることを意味する。


 日本の代表格メタプラネット社の状況はさらに厳しそうだ。同社の購入は9月の2,000億円と、22日の936億円ついかで以降止まっている。海外で割引発行された新株が売りに出され、株価は低迷。その後の優先株での調達も頓挫している。


 同社は実行価格変動型新株発行権売却によりBTC購入を進めたが、これは株価上昇を前提としており、6月をピークに株価が低迷する中、新規の資金調達が難しくなっている。


 その結果、同社が指標とする1株当たりのBTC保有時価が1を割り込む事態が発生した。株価を引き上げるために保有BTCを担保にした借入での資金調達に踏み切った。

同社のBTC取得単価は1,600万円弱で、足元ではすでに含み損が発生している。


 また、他のトレジャリー企業の調達が一服するのを後目にイーサリアム(ETH)購入を進めていた著名アナリスト、トム・リー氏率いるBitMine Immersion Technologies社(ビットマイン・イマーション・テクノロジーズ社:ネバダ州ラスベガス拠点のブロックチェーンテクノロジー企業)も、今回の下落で巨額の含み損を抱えたもようだ。


 すでにフランスのトレジャリー企業、Sequans Communications社(シークアンス・コミュニケーションズ:大規模ブロードバンド、IoTの大手企業)が970BTCを売却、社債の返済に充てている。


ETF・ストラテジー社の週次購入額とBTC/USD
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Bloomberg・BiTBO・SoSoValueより楽天ウォレット作成

[2]ETF、買い手不在で流出が進む

 これに代わって買いの主役に返り咲き、10月の史上最高値を演出したのがETFフローだ。ストラテジー社の購入は7月末の24億ドルを最後に急減速し、10月は1カ月で1億ドル程度に止まっている。


 一方、上場投資信託(ETF)は10月初の2週間で60億ドルの記録的流入となり、特に第1週はETF以外も含めた週次暗号資産ファンドへの流入が、1週間で59億ドルと史上最高値更新となった。


 この背景に米市場でのETF普及が挙げられる。米市場で上場商品に1億ドル以上投資する大口投資家におけるBTC ETFの普及率がちょうど3割のクリティカルマスを超え、マジョリティへの普及期を迎えている。


 しかし、後半は流出に転じ、相場の重しとなった。そうした大口投資家は無理にBTCを買う必要はなく、金や米株の方がパフォーマンスが良ければそちらに資金は流れるからだ。従って、流出と言っても3週間で15億ドル程度で、買い手不在となったという表現が適切だろう。


 BTC市場だけを見ていると、ついそれが世界の全てのように見えてしまうが、大口投資家はさまざまなプロダクト間で資金を移動させている。


[3]投資家心理の悪化

 一方で、短期市場における巨額清算が市場に影を落とした。


 Coinglass(コイングラス:暗号資産取引のアプリケーションを運営する暗号資産データ会社)によれば、Binance(バイナンス:180カ国、ユーザー数は2億5,000万人を超える暗号資産取引所)など、主要海外取引所の永久先物取引におけるロングポジションの清算額が10月10日に167億ドルに上った。1日で2兆円超の巨額ロスカットだ。


 こうした取引所では最大100倍前後のレバレッジを許容しており、実際の資金規模はETFなどに比べて小さいが、個人を中心に市場心理を悪化させたことは間違いない。その後は、ささいな悪材料にも市場が大きく反応する傾向が顕著となり、一部のアナリストはこれを「市場は二日酔い状態にある」と表現している。


 今月に入ると、海外の大手取引所MEXCで出金停止騒ぎが発生していた。運営がのらりくらりと情報を出し渋っている間に、中堅DeFi(分散型金融取引所)のBalancer(バランサー)で、1億ドル強のハッキング被害が発生した。


 これが*FTX事件の再来を連想させ、市場心理をさらに冷えさせる結果となり、10万ドル割れの一因となった。ただでさえ冷え切っている短期勢のマインドを凍りつかせたわけだ。


 ただし、The Block(暗号資産の取引情報を中心に扱うメディア)が報じたところによれば、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーは、今回の清算の多くが個人が中心の海外取引所でのデリバティブ取引で、機関投資家が中心のシカゴ先物取引所(CME)ではそれほど大きな清算は見られていないとしており、主力の機関投資家のマインドへの影響は限定的だろう。


* FTX事件:暗号資産取引所のFTXトレーディングの破綻。創業者、サム・バンクマン・フリード被告が、顧客や投資家から集めた資金を自らが経営する投資会社に流用していたなどとして2022年12月に逮捕された事件。


4年サイクルのピークか?

米株・金先物・BTC/USD
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出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

米国株・金・BTC…利下げ警戒で資産分散が進む

 米国株や金相場の動向にも警戒感が高まっている。7月の雇用統計で前2カ月の数字が大幅下方修正され、利下げ再開が意識され始めてから、金、株、BTCなどあらゆるアセットが同時に上昇した。ただ、その上昇は一様ではなく、7月から8月にかけてBTCが先行し、BTCが割高となり調整し始めると株が先行し、出遅れていた金が上昇していった。


 9月から10月にかけてBTCが再浮上したが前半にピークアウト、続いて金がピークアウトし、足元では米国株が減速し始めている。あたかも各アセットが順番に上昇下落を繰り返している理由の一つとして、こうしたアセットに分散投資するポートフォリオマネジャーの多くが割安な銘柄を模索しているからだと考える。


 BTCも短期勢の調整が一服すれば、こうした長期投資家の押し目買いが入ると考えている。


 ただし、それは今回の株安やBTC売りが上昇サイクルの終わりではないことが前提だ。例えば米国株で言えば、足元のAIブームはどこかで反転すると考える。AI技術は革新的で次世代をけん引することは誰もが認識するところだが、それと株式市場でのAIブームとは別問題だ。


 ITバブルは崩壊したが、ITは世界を変革した。直近では、メタ社はデータセンター投資として300億ドルの社債発行を発表、それとは別のスキームで簿外で300億ドルの調達をした。はやりのAI投資とはいえ兆円単位の調達に発表以降、同社株式は約15%下落している。買われすぎた相場はいずれ下がるし、エヌビディアなどAI関連株には高値警戒感がくすぶっている。


ビットコイン、最高値更新直後に急落…ここがピークアウト?11月復活はあり?
各種資料により著者作成

ピークアウトではない?

 BTCにしても同様だ。


 BTCには半減期による4年間の供給サイクルがあり、これまでのパターンでは半減期から1年~1年半後にピークを迎えている。今回も10~11月にかけてピークアウトすると予想していたが、史上最高値を更新したものの想定ほどの上昇とはならなかった。


 要は時間的にはピークアウトでも不思議ではないが、価格的にはピークにしては低すぎるという印象だ。水準もさることながら、相場が過熱→熱狂→陶酔に至ってオーバーシュートするからこそ、絶望すなわち1年近い冬の時代を迎えるわけで、もし今回のように楽観程度の上昇にとどまるなら、下落も調整程度に止まると考える。まさに今回のような懐疑の中で相場は育つのだ。


 結局、短期勢は長期投資家の先回りをして利ザヤを稼ぐのだが、今回は短期勢が前のめりになったものの、史上最高値更新後に相場が走らず、言い換えると長期勢の買いが続かず、巨額調整が生じた。逆に下方向で言うと、短期勢の売りで相場が下がり、トレジャリー企業などの投げ売りを誘発すれば、このサイクルは終了する。ただ、まだそうした段階には至っていないと考える。


11月の見通し:ここから再スタート

テクニカル

BTC/USD(日足)
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出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

 BTCは10月10日の10.7万ドル、10月17日の10.3万ドルでの底固めに失敗、6月22日の安値9.8万ドルで何とか下げ止まった。この水準は4月の安値からの半値戻し10万ドルと重なり、ここで下げ止まれば、上昇局面のポジション調整の範囲内と言えそうだ。逆にここを割り込み、7.4万ドルまで全戻しとなれば、4割超の下げとなり、このサイクルは終了する。


BTC/USD(週足)
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出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

 では上昇サイクルが終わったかどうかの見分け方は難しいが、前述のオーバーシュートの有無に加え、調整幅も一つの目安だ。BTCはピーク直前に2割の調整をすると申し上げたが、上昇局面においても3割程度の調整は周期的に登場する。


 ところが2021年のようなピークアウト時、4年サイクルの終了時には1カ月で1割、2カ月で5割といった下落が見られる。経験的には3割から4割の間が分かれ目となるようだ。


アノマリー

BTC/USD 月別騰落率
ビットコイン、最高値更新直後に急落…ここがピークアウト?11月復活はあり?
出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 アノマリー(理論的根拠はないが、英検的に観測される相場の規則性や変則性)的には、1年のうち2月に次いで強い月だった10月は、アノマリーどおりにいかず、陰線で引けた。だいぶ落ちた印象だが、マイナス4.6%で済んでいるのはもともとが強い月だった故か。


 この10月・11月はリスク資産にとって非常に強いシーズンで、収穫シーズンが関係しているという指摘もある。収穫期に手に入れた現金で運用し、クリスマス前に換金して物を買う──現代はそこまで単純ではないが、われわれに染みついた習性なのかもしれない。


 そうした観点で見ると、10月・11月の2カ月連続陰線だったのは、過去14年で2回しかない。2011年は古すぎてあまり参考にならないし、2018年はピークアウトの翌年で冬の時代の最後、**BCHハッシュウォーのさなかだ。このアノマリー的には、11月は陽線となる可能性が高いと考える。


** BCHハッシュウォー:ビットコインキャッシュのネットワークのアップグレードを巡り、インフラプロジェクト内の意見が対立、双方が技術面での競い合いを始め、Twitter(現X)で口撃合戦を展開、ビットコインの価格も暴落した


11月上昇に必要な二つの条件:ビットコイン11月見通し

 11月のBTC相場は、まずこの水準で底値を固めて反転、急上昇する展開を予想する。BTCの4年サイクルやピークアウトは知れ渡っているのに、2017年や2021年のピーク近くで売った人をあまり目にしないのは、きっとその前に売ってしまうからだろう。もしくはもっと上がると思って売りを控えるかだ。


 そして、ピーク前に振り落とされるのは、こうした乱高下を繰り返すからだろう。


 今回の下落の本質は、買いの主体がトレジャリー企業からETFフローに戻る間の端境期に生じた、短期勢のポジション調整だと考えている。


 先月も申し上げたが、トレジャリー企業の資金調達は限界に近づいており、一方で米市場の大口投資家におけるBTC ETFの普及率がちょうど3割のクリティカルマスを超え、マジョリティへの普及期を迎えている。プロである機関投資家は落ちてくるナイフは握らないが、いったん相場が下げ止まったことを確認すれば買いが戻ってくると考える。


 なぜならETF投資家の資金は潤沢で、割高となった金や米株に投入していた資金の一部を振り向けるだけでBTC相場は大きく上昇することになる。


 ただし、そうなるには条件が二つある。


 一つは足元のAI相場が破裂しないことだ。最近のAI関連投資の規模には危ういものを感じるが、足元の調整は良いガス抜きとなりそうだ。熱狂はしているが、まだ陶酔とまでは至っていないと考える。


 もう一つはトレジャリー企業の投げ売りだ。彼らは売らないとしており、また多くの株主もそれを支持しているもようだ。BTCを一部売却して社債の返済に充てたSequans Communications社の判断はリスク管理上適切で、これこそトレジャリー戦略だと考えるが、同社の株主には不評だったもようで、同社株は発表後16%下落した。


 もう少しBTC価格が下がれば悲鳴を上げる企業も出てきそうだが、株主の意向に従ってしばらくは我慢する可能性が高そうだ。すでに史上最長となった米政府閉鎖も、いずれどこかのタイミングで解除される。そうなれば経済指標の発表も再開され、そこで12月利下げが濃厚となれば、一段の上昇が期待される。


ビットコイン、最高値更新直後に急落…ここがピークアウト?11月復活はあり?
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 10月の連休、閉幕前日に大阪万博に行って来ました。5月のゴールデンウイークに一度行ったので、今回で2回目です。予想通り、5月とは比べ物にならないくらい、非常に混んでいました。


 関東から万博に行くのは大変で、西ゲートから9時に入り、ドローンショーまで見て帰るには、前泊後泊で2泊3日のちょっとした旅行となります。そこまで時間とお金をかけてまで2回目の万博行きを決めたのは、子供たちにせがまれたからですが、同時に子供たちを万博に連れて行くべきだと思ったからでもあります。


 1回目の万博はあまり情報もなく、企業のパビリオンがどうだとかガンダムを見に行こうだとかだったんですが、実際に行ってみると、万博の主役は「万国」なのだと気付きます。


 日本企業のパビリオンは大屋根リングの外に点在していて、メイン会場に当たるリング内部には各国のパビリオンが並んでいます。意匠を凝らした建物が60棟以上並ぶ姿は壮観で、参加国は158国に上り、まさにリング内は世界の縮図だったのです。


 個人的に面白かったのはアフリカの国が集まっているパビリオンで、おそらく一生行かないであろう国の写真や人に触れることができます。民芸品の首飾りを何となく見ていたら値段交渉する羽目になって、結局、3,500円で買う予定がなかった首飾りを買ったりもしました。僕の人生でトーゴの人のおばちゃんと話すのは、これが最初で最後だと思います。


 大人の場合は、人ごみが嫌いだったり、外国に興味がない人も多いでしょうが、小学生にとってはこうした外国との接触はかけがえのない経験になると確信しています。これも最初に行ってみて気付いたことで、百聞は一見に如かずです。


 ビットコインを食わず嫌いしている人も少なくないと思いますが、100円でも、1,000円でも試しに買ってみることをお勧めしています。楽天ウォレットなら楽天ポイントで買うこともできます。たとえ100円でも自分で持ってみると興味が湧き、理解がきっと進むと思います。「百聞は一見に如かず」です。


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(松田 康生)

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