先週はAI株から非AI株への資金シフトが進み、TOPIXが史上最高値を更新。今週は米国で11月雇用統計、CPIなど重要指標の発表が相次ぎます。

AI株の不安定な値動きが心配ですが、19日(金)の日銀会合で利上げが行われても高市政権の目指す「インフレ日本」を好感した大型バリュー株相場が続きそうです。


今週のマーケット:日銀利上げ後もバリュー株相場で年末高へ!米...の画像はこちら >>

今週のトピック:16日に米国11月雇用統計。19日に日銀金融政策決定会合

日付 イベント 12月15日(月) ・12月日銀短観
・米国の12月ニューヨーク連銀製造業景気指数 12月16日(火) ・米国の11月雇用統計、11月小売売上高、12月製造業・サービス部門PMI速報値 12月17日(水) ・11月貿易統計、10月機械受注
・米国で マイクロン・テクノロジー(MU) が2025年9-11月期の決算発表 12月18日(木) ・米国11月CPI
・米国で フェデックス(FDX) 、 ナイキ(NKE) が決算発表 12月19日(金) ・11月CPI
・日銀金融政策決定会合終了。0.25%利上げが濃厚
・日銀植田総裁が記者会見
・米国の11月中古住宅販売件数
  • 12月16日(火)に遅れていた米国の11月雇用統計・小売売上高、18日(木)に11月消費者物価指数(CPI)が発表。雇用統計悪化、CPIの上昇率想定内なら2026年早々の利下げ継続期待で株価上昇!?
  • 19日(金)終了の日本銀行の金融政策決定会合での0.25%利上げはすでに織り込み済み。日銀の植田和男総裁が記者会見で追加利上げに前向きな発言をする可能性も低く、株価に大きな影響なし!?
  • 日本時間18日(木)早朝に マイクロン・テクノロジー(MU) が決算発表。期待を大幅に超える好決算でない場合、人工知能(AI)株関連がさらに続落!?
  • 15日(月)の日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)、17日(水)の11月貿易統計、10月機械受注が良好な結果なら今週も東証株価指数(TOPIX)が最高値更新へ!

12月15日(月)の日経平均

 前営業日比484円安の5万0,352円の反落スタート。後場になり動きは軟調化、一時は5万円を割る4万9,965円になりました。終値は前営業日比668円安の5万0,168円で取引を終えました。


今週:インフレに強い重厚長大産業株が続騰へ!日銀利上げは波乱なしで終了!?

 今週も人工知能関連(AI)株の不安定な動きが続きそうですが、19日(金)終了の日銀の金融政策決定会合で0.25%利上げがほぼ確実視される中、本格的な日本買いが続きそうです。


 先週は日経平均株価(225種)が主力の半導体、AI株が軟調で前週末比344円(0.68%)高の5万0,836円と小幅高で終了。


 一方、より幅広く重厚長大企業の株価を反映したTOPIXは円安で潤う自動車株、インフレに強い商社株などを中心に1.82%の上昇となり、12日(金)に史上最高値を更新しました。


 株価が割高なAI株から株価が割安な外需系の景気敏感株、建設・不動産といった内需株へのセクターローテーション(業種乗り換え)が続き、今週もTOPIX優位の展開になりそうです。


 15日(月)にすでに発表された日銀の12月短観ではAI関連の需要増加やトランプ関税の不透明感の低下で大企業製造業の景況感が小幅改善する見込みです。


 さらに17日(水)の11月貿易統計や10月機械受注などの結果も良好なら、高市政権の積極財政で恩恵を受ける内需株だけでなく、自動車、機械、半導体株以外の電気機器、精密機器セクターなど外需系バリュー株が幅広く買われる展開も考えられます。


 19日(金)の日銀会合で政策金利が0.75%まで引き上げられるのは1995年以来、30年ぶり。今週、利上げが行われれば、日本経済が長年苦しんだデフレから脱却する記念碑になるでしょう。


 積極財政を打ち出す高市政権は高支持率の下、ある程度の物価上昇を許容し、値上げで企業業績を拡大させ、株高に導く政策を推進しています。


 日銀は賃上げの継続を今回の利上げの理由に挙げそうですが、賃金上昇が物価高に追いつき、できれば追い越して「インフレ日本」が定着する可能性を考えると、日本株の本格上昇はまだ始まったばかりかもしれません。


 ただ、その国策の大敵は為替レート。


 先週の154~156円台の小幅な動きに終始したドル/円レートが19日の日銀会合前に、AIバブル崩壊や米国の深刻な景気後退懸念などが要因で円高トレンドに転じると、順風満帆の日本株には逆風になるでしょう。


米国雇用統計悪化なら逆に2026年利下げ継続期待で株高へ!マイクロン・テクノロジーはAI株を救えるか?

 一方、米国では政府機関閉鎖の混乱で延期されていた11月の雇用統計や小売売上高が16日(火)、11月CPIが18日(木)に発表されます。


 11月20日に発表された9月雇用統計は非農業部門新規雇用者数が11.9万人増と予想を上回ったものの、7月、8月の新規雇用者数が下方修正され、失業率が4.4%に上昇する強弱まちまちの結果でした。


 10月分はデータ収集の遅れで失業率は発表できないものの、非農業部門新規雇用者数は11月分に組み込んで発表予定。


 ここ最近の米国の雇用動向が一挙に分かるため、米国株の波乱要因になりそうです。


 米国市場の最大の関心は、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が先週10日(水)終了の米連邦公開市場委員会(FOMC)での3会合連続利下げに続き、2026年早々に追加利下げを行うかどうか。


 16日(火)発表の雇用統計が低調な結果に終わり、18日(木)の11月CPIの上昇率が想定内に収まると、逆に2026年早期利下げ継続の環境が整うため、米国株は続伸しそうです。


 先週10日(水)終了のFOMCでは12人の政策決定者のうち、2人が金利据え置きの反対票を投じました。


 参加理事たちが今後の政策金利を予想する分布図「ドットチャート」では2026年に0.25%の利下げが行われる見通しはたった1回。FRBが当面、利下げを行わず様子見に徹する姿勢が鮮明になりました。


 ただ、FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は「就業者数が実際には減少に転じているかもしれない」と雇用市場に警戒感を示し、追加利下げに比較的寛容な姿勢を示しました。


 これを受け市場では2026年に2回の追加利下げが行われる見通しが台頭。


 米国の政策金利変更の金利先物市場への織り込み具合を算出したシカゴ・マーカンタイル取引所の「FedWatch」では次回2026年1月28日(水)終了のFOMCでの0.25%利下げ確率が25%近くに達しています。


 ただ、先週は市場予想に届かない2025年9-11月期決算を発表した米国データベース大手の オラクル(ORCL) が前週末比13.0%安。


 市場予想を上回る好決算を発表したものの、AI関連収入の見通しが高い期待に届かなかったAI半導体メーカーの ブロードコム(AVGO) も7.8%安に沈むなどAI株は絶不調でした。


 今週も日本時間18日(木)早朝にAIデータセンター向け半導体メモリーメーカーの マイクロン・テクノロジー(MU) が2025年9-11月期決算を発表。


 同社は2025年に入って前年末比187%高、3倍近く値上がりしていますが、決算内容が高過ぎる期待値に届かないようだと、先週のブロードコム同様、AI株続落の引き金になりそうです。


 今週は16日(火)の11月小売売上高、12月の製造業・サービス部門の購買担当者景気指数(PMI)など、米国の最新景気指標の発表も相次ぎます。


 米国の景気落ち込みの深刻さが浮き彫りになるようだと、「利下げ期待で株高」という楽観主義に傾き過ぎた米国株の停滞につながる恐れもあります。


 日本時間19日(金)早朝に決算発表する航空貨物の フェデックス(FDX) やスポーツシューズの ナイキ(NKE) など「非AI株」の一角といえる有力企業の決算にも注目が集まるかもしれません。


 機関投資家が運用指針にするS&P500種指数はFOMCでの利下げを好感して先週11日(木)にダウ工業株30種平均とともに史上最高値を更新。


 しかし、12日(金)はブロードコムなどAI株が急落し、週間では前週末比0.63%のマイナスで終わっています。


 今週も非AI株へのセクターローテーションでは防ぎきれない、バブル崩壊クラスのAI株急落には注意が必要です。


先週の振り返り:円安で自動車株、インフレで商社株、金利上昇停滞で建設、不動産株。日本株はバリュー株相場に一変!

 先週の日本株の週間業種別上昇率では円安やセクターローテーションの影響で トヨタ自動車(7203) が7.5%高となるなど輸送用機器が2位に食い込みました。


 割安高配当なバリュー株の代表格で、インフレが業績の追い風になる商社株も軒並み急上昇。 住友商事(8053) が10.2%高、 三井物産(8031) が9.4%高となるなど卸売業セクターの上昇率は3位でした。


 長期金利の指標となる10年国債の利回りが2.0%目前の1.95%前後で足踏みしたこともあり、金利上昇に弱い内需株の不動産、建設セクターにも買いが入りました。


 個別株ではAIデータセンター向け蓄電システムに期待がかかり、現在、早期退職者を募集するなど構造改革を進める パナソニックホールディングス(6752) が17.5%も急騰。


 自動車株上昇の流れに乗って、トヨタ自動車傘下で自動変速機世界首位の アイシン(7259) が13.7%高。


 ともに株価純資産倍率(PBR)が1倍前後で株価が割安な外需株が急伸しました。


 一方、人気のVTuber/バーチャルライバーグループ「にじさんじ」を運営し株価が急騰中だった ANYCOLOR(5032) は好決算発表にもかかわらず材料出尽くし売りに押され、18.0%も急落。


 金利が上昇すると、業績に比べて株価が割高な成長株は売られやすくなります。


 中小型のIT、バイオ系成長株が集まる東証グロース市場250指数は12月に入ってから前月末比4.9%下落するなどさえない展開が続いています。


 株価が割高なAI株や成長株が売られ、インフレ時代を値上げでしのげる重厚長大産業の割安株が買われるバリュー株相場が今後も続くかどうかは分かりません。


 ただし、先週2.9%高の アドバンテスト(6857) 、7.2%安の ソフトバンクグループ(9984) 、0.9%高の 古河電気工業(5801) など一部のAI株だけが一極集中的に買われる展開は終焉(しゅうえん)を迎えそうです。


 例年、年末12月は株価が上昇しやすく、来年2026年のスター株候補が誕生しやすい時期。


 銘柄上昇率ランキングの「新顔」などに注目すると、2025年のAI株同様、2026年に株価が何倍にも急騰するようなスター株予備軍を見つけられるかもしれません。


(トウシル編集チーム)

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