JRの東西対決!夏場辺りから、パフォーマンス差が開いたJR東日本(9020)とJR西日本(9021)。年初来高値を更新中のJR東日本は“ディフェンシブグロース株”とも呼ばれ始め、一方、8月20日に年初来高値を付けた後は調整中のJR西日本。

こちらは“ディフェンシブ高配当株”。順張り銘柄のJR東日本と逆張り銘柄のJR西日本、買うならどっち? 


JR東日本 vs JR西日本 ディフェンシブグロース株とディ...の画像はこちら >>

今回のお題 JRの東西対決

JR東日本(9020) JR西日本(9021)
JR東日本 vs JR西日本 ディフェンシブグロース株とディフェンシブ高配当株 買うならどちら?

JR東日本 vs JR西日本 ディフェンシブグロース株とディフェンシブ高配当株 買うならどちら?

 上記両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?


銘柄A: JR東日本(9020)

ここがGOOD

JR東日本 vs JR西日本 ディフェンシブグロース株とディフェンシブ高配当株 買うならどちら?
※筆者作成:週足チャート 2025年初来

業績好調!来期も増益濃厚!

  第2四半期までの営業利益が計画を大幅に上回ったことで、中間決算のタイミングで通期予想を上方修正。営業利益予想は従来の3,870億円から4,050億円に増額、この時点のQuickコンセンサスが4,008億円でしたのでポジティブでした。JR東日本の強みは、スノーレジャー利用者を獲得できること。下期はスノーレジャーによるインバウンド需要を取り込むことが予想されます。ここ数年、極上なパウダースノーを求めた外国人観光客の急増が話題ですよね。


  また、JR各社の中でも、来期業績見通しが特に明るいのがJR東日本。JR九州に続いて、運賃の大幅改定を行います。その実施予定日は26年3月14日。年820億円の増収効果が見込まれ、これに伴う増益もあって来期の営業利益予想のQuickコンセンサスは前期比19%増の約4,880億円が見込まれています。


株主還元は“配当重視"

 今期の業績好調で、上方修正と併せて増配も発表。今期の1株当たり配当予想は、通期62円から70円に増配しました。配当性向でいえば30.9%→33.3%への引き上げに相当。

これでも十分な配当拡大なのですが・・・JR東日本、この配当性向を40%程度まで引き上げる方針を示しています。


 新中計「勇翔2034」では「成長投資が落ち着く2027年度に向けて、段階的に配当性向を40%に引き上げる」と記されています。新幹線利用者の増加、不動産販売益などによる利益拡大が見込める“グロース株"でもありながら、同時並行で配当性向を高めることが、長期の株価上昇を正当化できそう。配当性向40%の目安は28年3月期です(逆にいえば、配当重視なので、自社株買い期待は低下したともいえます)。


ここが心配

相対的な割高感

 JR株ではパフォーマンス上位で、株価も年初来高値圏にあり需給良好です。12月15日時点の年初来騰落率では、JR東海+53%、JR東日本+50%、JR西日本+11%、JR九州+6%(極端な2強2弱ですね)。


 26年3月28日の高輪ゲートウェイシティ開業もカタリストにあり、株価が強含むのは納得感があります。ただ、好材料こそ多く見えているものの、サプライズとなるような新材料が提供される可能性も低そう。それでいえばJR株内で相対的な割高感は強そうにも映ります。


  予想PERは約20倍で、JR東海の約9倍、JR西日本の約12倍、JR九州の約14倍を大幅に上回っています。PBRも最も高いうえ、増配が続くと見られる一方で配当利回りは約1.7%のため2%台後半のJR西日本やJR九州を下回ります。


JR東日本 レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
JR東日本 vs JR西日本 ディフェンシブグロース株とディフェンシブ高配当株 買うならどちら?
出所:筆者作成

銘柄B: JR西日本(9021)

JR東日本 vs JR西日本 ディフェンシブグロース株とディフェンシブ高配当株 買うならどちら?
※筆者作成:週足チャート 2025年初来

ここがGOOD

鉄道株の高配当利回り株

 12月15日時点の年初来騰落率は+11%と、JR東日本の+50%を大幅にアンダーパフォーム。株価が下がった一方、着実に増配してきた結果(今期の1株当たり配当予想は90.5円)、配当利回りは3%に接近しています。これは、JR株の中で配当利回りが最も高かったJR九州も上回り最高水準に。

また、鉄道株全体でも、私鉄で最も利回りが高い京急や小田急の約3%と同等となっています。


 個人投資家からの高配当株人気は根強く、とくにNISA口座を通じた買付では顕著です。2026年のNISA枠でJR西日本株需要は高まるかもしれません。なお、JR西日本の配当利回りが3%を最後に超えていたのは、2020年9月16日。まさにコロナ禍で、それ以来の配当利回りでのエントリーチャンスとも言えます。


ここが心配

万博効果の剥落で…

 今第2四半期までが想定上振れペースだったことで、通期予想を上方修正。営業利益予想は従来の1,900億円から1,950億円に増額しましたが、この時点のQuickコンセンサス1,982億円はやや下回りました。同社が上期好調だった理由は、大阪・関西万博効果が挙げられます。2025年のヒット商品番付の横綱は「大阪・関西万博」でしたが、前評判以上に盛り上がりましたよね。万博期間中の“万博効果"は売上高で440億円と、計画の370億円を上振れたようです。


 ただ、万博が終わった下期は、当たり前ですがその分売上が減ります。つまり、下期は「上期に比べて業績モメンタムが鈍る」となるわけです。また、こちらも当然ですが、来期は「今期に比べて業績モメンタムが鈍る」となります。

27年3月期は万博効果が無くなり、人件費等のコスト増もあって営業減益へ。来期の営業利益予想のQuickコンセンサスは前期比6%減の約1,900億円が見込まれています。


株主還元の増強期待DOWN?

 中期計画2025では、自社株買いなどに積極姿勢を示すなど株主還元の強化期待が常にあったJR西日本。来期始まる次期中計(27年3月期~31年3月期)に関し、アナリストが決算説明会時に質問していました。これに対して同社経営陣は「将来の成長に繋がる投資、社会課題解決につながる投資に引き続き取り組んでいきたい」と回答。また、還元方針については「重要な事項として検討しているところ」と回答しました。


 これを受け、アナリストによる投資判断引き下げが出てしまったことも足元の株安要因といえます。アナリストの受け止めとして、次期中計は「次なる成長に向けた変革ステージ」のため、強い利益成長が見込みづらいという評価になっているようです。そうなると、株主還元の強化に対する期待も低下したという評価に・・・。この懸念を実際の次期中計で払拭できるか?が注目点になりそうです。


JR西日本 レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
JR東日本 vs JR西日本 ディフェンシブグロース株とディフェンシブ高配当株 買うならどちら?
出所:筆者作成

あなたなら、どっちを買う?

JR東日本 vs JR西日本 ディフェンシブグロース株とディフェンシブ高配当株 買うならどちら?
出所:筆者作成

 来期も増益が見えているJR東日本と、来期減益が見込まれるJR西日本…業績良い株を買いましょう!というセオリーからいけば、JR東日本になるわけですが、株価は当然それも織り込んでいるもの。結果、予想PER、PBR、配当利回りのいずれでもJR西日本が割安で、「安く買って高く売る」のセオリーからすればこっちも魅力に映るのが人間の性です。かなり悩ましいJR東日本とJR西日本、ここから買うとすれば、あなたらどちらを選びますか?


銘柄投票にぜひ参加してみてください

【銘柄を投票】JR東日本 vs JR西日本 ディフェンシブグロース株とディフェンシブ高配当株 買うならどちら?


各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。
同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。 PBR 1株当たり純資産の何倍まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。この数値が1倍を下回る企業に対し、東証は「1倍を上回るよう頑張れ」と指令を出しています。 配当利回り 今期の予想配当金ベースの利回りで、高いほど配当妙味が高いと判定します。定義はありませんが、3%以上なら配当利回りが高いと認識されています。 流動性 1日の売買代金がどれくらいあるか?(表では25日平均)を金額で表示しています。同数値が高いほど、機関投資家も大口の個人投資家もストレス無く参加できると考えられます。

(岡村 友哉)

編集部おすすめ