半導体メモリの価格が高騰し、NAND型フラッシュメモリーメーカーのキオクシアHDが爆上げする裏側で、ゲーム機の採算性悪化から対照的に売られ続けた両社。年初来のパフォーマンスは任天堂が-20%、ソニーグループが-13%(※2月6日現在)。
今回のお題 日経平均最高値に逆行安の“国際優良株”
2月に入り、日経平均株価、TOPIXとも史上最高値を更新。トヨタ、三井住友、三菱商事、中外製薬、JT、三菱電機…時価総額10兆円クラブの超大型株が相次いで昨年来高値を更新するなか、ひたすら値を切り下げた国際優良株が任天堂、そしてソニーグループでした。年初来のパフォーマンスは任天堂が-20%、ソニーグループが-13%…。
この2銘柄に対して市場が売り材料としたのが「メモリ問題」です。半導体メモリの価格が高騰し、NAND型フラッシュメモリーメーカーのキオクシアHDが爆上げする裏側で、ゲーム機の採算性悪化から対照的に売られ続けた両社。含み損を抱える投資家が続出する中で迎えた2月の第3四半期決算も受け…任天堂(7974)とソニーグループ(6758)、ここから買うならどっち?この2社で比べてみます。
任天堂(7974) ソニーグループ(6758)
上記両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?
A: 任天堂(7974)
ここがGOOD
「スイッチ2」は大ヒット!昨年6月に発売したNintendo Switch2(以下スイッチ2)、入手困難な大ヒットゲーム機です。25年12月末(第3四半期末)時点の販売台数は1,737万台で、これは初代スイッチを大きく上回る過去最速ペース。スイッチ2でハードウェアの販売が大きく伸び、第3四半期の売上高は前年同期比99%増の1兆9,058億円、営業利益は同21%増の3003億円でした。
第3四半期までの数値はコンセンサス(アナリスト予想)を少し下回りましたが、そもそも決算に向けて株価は下落し、決算警戒がバリバリに高まっていたため、ネガティブサプライズとは言えないように思います。通期予想の上方修正が無かったことも指摘されますが、売上・利益とも進ちょく率は80%超ですので、上振れ着地は確実視されます。なお、第3四半期の営業利益率が15.8%と、前年同期の25.9%から大きく低下しています。こちらについても、新型ハードの売上高比率が高い時期は低下するし、スイッチよりスイッチ2の利益率が低いことが理由です。
2つの”資産”
大型株でも一際株価が低迷している任天堂ですが、反転のカタリストとして注目したいのが「IP(知的財産)」という任天堂の強力な“資産”です。今第3四半期はIP関連収入が前年同期比10%低下しましたが、その理由は「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」からの映像コンテンツ収入の減少でした。
それでいえば、来27年3月期は増加に期待!というのも、2作目となる新作映画「ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー」の公開が4月に予定されているためです。映画でいえば、今年2月21日がゼルダシリーズ40周年となり、来年は「ゼルダの伝説」の実写映画も公開を予定しています。映画の反響がスイッチ2のビジネスでポジティブな波及効果が出ることに期待されます。
また、任天堂は莫大な現預金という“資産”を持つキャッシュリッチ企業として知られています。ネットキャッシュは日本企業でトップの約1.7兆円あり、この歴年で蓄えた資産の株主還流には期待したいところです(そこが任天堂の改善点ではあるのですが…)。
ここが心配
みんな気になる「メモリ問題」止まらない株価下落の理由は、半導体メモリの価格高騰によるゲーム機の粗利益率低下(業績悪化)懸念でした。第3四半期の決算説明会でも、アナリストから真っ先に質問が挙がったのがこの「メモリ問題」。任天堂の古川社長の回答を整理すると、まず直近のメモリ価格高騰が今回の第3四半期のハードの採算性には大きな影響を及ぼしていないようで、第4四半期(1-3月期)も同様なようです。
では、来27年3月期は?となると、「手元在庫や足元で生産している分もあるため、直ちに大きな影響が生じるとは考えていません。ただし、メモリ価格の高騰が想定を超えて長期化した場合には、ハードウェアの収益性に影響する可能性があります。」と回答されています。
ゲーム機(ハード)というのは、一般的に時間の経過とともに量産によるコストダウンで採算性が改善します。本来であれば来期は利益率が高まるフェーズのはずが、「メモリ問題」で一段の利益率低下が危惧される事態に。この問題が厄介なのは、メモリ価格高騰がいつ収束するかまだ見えていない“不透明感”。来期業績への影響について語られる次回5月初旬の本決算発表も、今回同様リスクイベント扱いになる可能性があります。
需給悪く、戻り売り圧力凄そう
昨年8月に付けた上場来高値1万4795円から、半年程度で株価は43%も値下がりしました。世界的にAI関連株が人気化するなか、その手前で人気のあったサンリオなどIPを持つコンテンツ株が売られるという物色変化から始まり、足元は「メモリ問題」で下値を切り下げています。
ただ、TOPIXが最高値をとるなど全体地合いが良好なだけに、「なぜこんなに任天堂だけ下がるんだ?」といった値ごろ感で“逆張り買い”が入り続けた形跡があります。任天堂の信用買い残は、1月末時点で606万株あります。これは、2023年4月第4週以来の高水準です。金額にして512億円…。
今回の第3四半期決算でも自社株買いの発表はありませんでした。任天堂はキャッシュリッチ企業ですが、自社株買い実施が少ない企業です。直近の最後は2022年でしたが、過去を遡ると2014年、2019年など株価パフォーマンスが悪かった年に実施した傾向はあります。今年は株価が低迷しているだけに、4年ぶりの自社株買い、あればポジティブですが…。
任天堂 レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
B: ソニーグループ(6758)
ここがGOOD
PS5は収益増大フェーズへプレイステーション5(以下PS5)も好調です。PS5の第3四半期の出荷台数は800万台で、市場想定より高い出荷水準でした。発売6年目にしてPS5は累計9200万台となっています。来27年3月期以降はこの9,200万台が基盤となって、ゲームソフトやネットワークサービスの収益貢献が見込まれます。いわばここからが収穫期といったタイミング。
ゲームのほか、音楽、イメージセンサーなど想定より好調で、第3四半期の売上高は前年同期比1%増の3兆7,137億円、営業利益は同22%増の5,150億円でした。第3四半期として過去最高益で、アナリスト予想も上振れで着地。また、通期予想も営業利益は1兆4,300億円から1兆5,400億円に上方修正しています。
「メモリ問題」の不安緩和、アナリスト評価◎
任天堂と同様、足元の株価が下落してきた理由は「メモリ問題」でした。ソニーグループの見解にアナリスト・機関投資家が注目を寄せるなか、陶CFOが業績説明会で回答。その内容は、「(メモリの供給確保について)来年度の年末商戦をマネージするために必要な最低限の確保にはすでに目途がついている」という内容でした。メモリ高騰がいつ収束するかは見えないものの、27年3月期の年間分を最低限確保できているという回答は安心感につながりました。
ソニーグループは超大型株の中でも、とりわけアナリスト評価が高い銘柄です。Quick集計によると、19社の証券会社が目標株価を付けており、その全社が強気レーティングを付与しているという最強レーティング株。それだけに、決算発表次第では投資判断&目標株価の引き下げが相次ぐ可能性も危惧されましたが…「メモリ問題」の影響への過度な不安も後退し、決算発表後にレポートを更新した10社中7社が目標株価を据え置きました。投資判断引き下げも無し。現在のアナリストの目標株価の平均は5,151円と、現在の水準から約5割の上昇余地があるとアナリストは見ています。
ここが心配
自社株買い枠増額も、需給はまだ悪い株価が低迷するなかで発表した第3四半期決算ですが、株主還元でポジティブ材料が提供されました。昨年は5月と11月(本決算と中間決算)時に自社株買い枠を設定。11月に設定した1,000億円枠は1月末時点で約500億円しか買っておらず、枠も半分残っている状況でした。
ただ、この需給メリット分も、株価位置が大幅に切り下がったことによる需給悪で打ち消しそう。というのが、任天堂同様、ソニーグループも信用買い残が溜まってしまっているからです。1月末時点の信用買い残は1,298万株と、(24年10月に5分割したため同列に比較はできませんが)2019年2月以来の高水準が積み上がっています。この2019年も前年のピークから約3割値下がりしたタイミングでの“逆張り買い”でした。金額的にも自社株買いの増額分とほぼ同等で、上値の重い展開が想像される需給構図といえます。
ソニーグループ レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
あなたなら、どっちを買う?
外国人が知っている日本企業の1位と2位なのではないか?と思うほど、誰もが認める国際優良株の任天堂とソニーグループ。この2銘柄が、日経平均やTOPIXが最高値を更新する中、これほど軟調に推移するというのは意外でした。だからこそ、押し目買いを入れ続けた個人投資家も多いし、そのほぼ全てが“塩漬け株”となってしまった需給の悪い2銘柄。
ただ、下落理由が明確なだけに、メモリ価格の上昇さえ一服すれば急激なリバウンドも見込めるのですが…。しばらくはメモリ価格上昇(米サンディスク、日本のキオクシアの株価が上昇)のニュースにネガティブ反応を続けそうですが、それにも慣れてくるはず。大幅に株価位置が切り下がった条件で、下げがきつい任天堂か、短期業績がポジティブだったソニーグループか、あなたならどちらを選びますか?
銘柄投票にぜひ参加してみてください
【銘柄を投票】任天堂 vs ソニー 高市トレードに乗れる? 日経平均最高値に逆行安の“国際優良株”
各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。
(岡村 友哉)

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