米国・イスラエルのイラン攻撃をきっかけに原油価格が高騰し、日経平均株価も2025年4月安値からは初めてとなる大幅な調整を強いられてきています。当面は原油相場の落ち着きを確認する必要性が高いでしょう。

今回の株価調整はこれまでの二極化相場の修正につながる可能性もあり、目先的には出遅れ銘柄への関心を高めたいところです。


ヤマハ発動機、LIXILなど出遅れ高配当株5選。原油価格の動...の画像はこちら >>

衆院選での自民党圧勝で一段高も、イラン情勢緊迫化で3月に入り株価は調整

 2月から3月第1週(1月30日終値~3月6日終値)の日経平均株価(225種)は4.3%の上昇でした。


 2月8日に投開票された衆議院議員選挙において、自民党が316議席を獲得して単独で定数の3分の2を上回る予想以上の圧勝となりました。これを受け、財政拡張政策に対する期待感が先行し、直後9日~10日の2日間で日経平均株価は3,400円に迫る大幅高となりました。


 月後半にかけては、日本銀行の次期審議委員の人事案でリフレ派が候補に挙がったことで追加利上げ観測が後退し、日経平均株価はさらに一段高、2月26日には史上高値を5万9,332.43円にまで伸ばしました。


 なお、注目度の高かった米エヌビディアの決算が25日に発表され、好決算にもかかわらず株価は売り先行となりましたが、日本株への影響は限定的にとどまりました。


 3月に入ると一転、日経平均は大きく調整する展開となり、3月4日の終値は、2025年12月19日以来の25日移動平均線割れとなっています。2月28日に米国とイスラエルがイランに軍事攻撃を開始、中東における地政学的リスクが顕在化したことで、リスク回避の動きが優勢となってきています。


 とりわけ、イランが有数の石油産出国であること、イランが石油輸送の要衝となるホルムズ海峡を事実上封鎖したことによる供給逼迫(ひっぱく)懸念から原油相場が上昇していることが警戒感を高めさせることにつながっています。日本は原油をほぼ輸入に頼っていることからより警戒感は強まり、この期間は米国株と比較しても株価の調整が大きくなっている状況です。


 この期間で上昇が目立った銘柄としては、AIデータセンターのインフラ関連株が挙げられます。株価が倍化している 古河電気工業(5801) をはじめ、 三井金属(5706) 、 日東紡(日東紡績:3110) 、 JX金属(5016) などが50%以上の株価上昇となっています。


 一方、赤字見通しへの下方修正が嫌気されて 東洋エンジニアリング(6330) が急落しました。

また、AI脅威論の台頭によって、情報サービス関連分野の銘柄が総じて売り先行となり、 Sansan(4443) 、 NEC(日本電気:6701) 、 富士通(6702) 、 ビジョナル(4194) などが下落率上位となっています。


 ただ、同関連銘柄は総じて、3月に入ってからは買い戻しの動きが優勢となっています。また、イラン有事勃発以降は、空運株やタイヤセクターなどの下げが目立ってきています。


原油価格の落ち着きが日本株反発のカギ

 イラン攻撃開始前には1バレル=65ドル台前後で推移していた原油価格ですが、足元では上昇ピッチが加速化し、3月9日には一時119ドル台にまで達しています。これは、3年9カ月ぶりの水準となります。


 カタールのエネルギー相は、ホルムズ海峡封鎖が長引けば、原油価格が150ドルまで上昇する可能性なども指摘しているようです。ガソリン価格や食品価格などの上昇につながることで、日本のみならず、米国においても個人消費への影響が懸念される状況と考えられます。


 原油価格の先行きについて、焦点となるのはホルムズ海峡の実質的な封鎖状態となりますが、イランと友好関係にある中国にとっても影響が大きくなってしまうことで、現在の状態は目先打開が図られてくる可能性はあるでしょう。


 高市早苗氏が2025年10月4日に自民党総裁に選出されて以降、イラン情勢が緊迫化する前の2月27日までで、日経平均の上昇率は28%の水準となっています。この期間、日経平均との連動性が意識される米ナスダック総合指数は、ほぼ横ばいの状態にあり、この期間の日本株の上昇は明らかに国内固有の要因であるということができるでしょう。


 財政拡張策による経済成長への期待はもちろんですが、政権与党の政策基盤が衆議院選挙の結果を受けて強固となり、これが他の主要国と比べても明確化されたことで、海外投資家によるグローバル投資の選別対象になってきている可能性もあるでしょう。原油価格が落ち着きを取り戻せば、日本株のリバウンドが相対的にも強まる余地はあると考えます。


 ただし、足元で顕在化しつつあるリスク要因は原油価格にとどまりません。

英住宅ローン会社の破綻を受けて警戒感が広がっている金融システム問題が、ここにきての金融市場の波乱を受けて再度警戒感が広がる可能性があります。


 また、米国政府では、エヌビディアなどのAI半導体の輸出規制を検討しているとも伝わっており、半導体関連株の上値抑制材料ともなります。当面は日本株にも慎重な対応が必要であり、少なくとも、原油価格の落ち着きをしっかりと確認するべき局面と判断します。


高値警戒感も強まり目先はこれまでの二極化相場の修正の動きも想定

 イラン情勢、それに伴う原油価格の先行き不透明感の高まりから、日経平均株価は3月に入って大幅な調整に転じています。2025年4月安値からここまで、大きな調整もなく日経平均株価は上昇が続いてきましたが、今回の相場変動を受けて、高値警戒感というものも意識されてくることになるでしょう。


 これまで完全な株価二極化状態にあったことから、目先は出遅れ銘柄の水準訂正に関心が向かうものと考えます。とりわけ、3月に入ってから、これまでAI脅威論で売り込まれていた情報サービスセクターに買い戻しの動きが強まる場面も見られました。この動きが出遅れ銘柄全般の出直りのきっかけにつながる可能性があるでしょう。


(表)株価の出遅れ感が目立つ高配当利回り銘柄 コード 銘柄名 配当利回り
(%) 3月6日
終値(円) 時価総額
(億円) 株価騰落率
(%) 経常増益率
(%) 5938 LIXIL 5.19 1,735.0 4,988 ▲2.8 93.2 6417 SANKYO 4.18 2,155.0 4,956 ▲2.4 4.6 7272 ヤマハ発動機 4.36 1,147.0 11,677 ▲5.5 39.7 7270 SUBARU 4.22 2,725.0 19,547 ▲2.9 60.1 9434 ソフトバンク 4.08 210.6 101,088 ▲2.2 4.4 (注)配当利回りはコンセンサス予想
(注)株価騰落率は1年前比
(注)経常増益率はコンセンサス来期予想、12月決算銘柄は今期予想
(注)ヤマハ発動機は12月決算、他は3月決算 銘柄選定の要件
  • 配当利回りが4.0%以上(3月6日時点でのコンセンサス予想ならびに会社予想)
  • 時価総額が3,000億円以上
  • 1年前比の株価パフォーマンスがマイナス
  • 2027年3月期(12月期決算は2026年12月期)経常利益コンセンサスが増益
  •  楽天証券のスーパースクリーナーにおいて、上記要件の銘柄をスクリーニングし、来年度(2027年3月期、12月期決算銘柄は今年度の2026年12月期)のコンセンサス予想で経常増益見通しの銘柄をピックアップしたものが表になります。


     なお、コンセンサス予想に関しても、楽天証券の銘柄ページにおける業績予測で確認できます。


    【厳選・高配当銘柄(5銘柄)】

    1 LIXIL(5938・東証プライム)

     2011年にトステム、INAXなど5社が統合して誕生した国内最大手の住宅設備機器メーカーです。トイレ、洗面化粧台、浴室、キッチンなどのほか、窓や玄関ドア、エクステリア製品、インテリア建材などを手掛けています。


     2026年3月期第3四半期(2025年4-12月期)事業利益は365億円で前年同期比17.5%増となっています。国内リフォーム商材が堅調に推移、省エネ基準厳格化や補助金に後押しされる形となっています。

    2026年3月期通期事業利益は350億円、前期比11.7%増を計画しています。年間配当金は前期と同水準の90円を計画しています。


     国内住宅着工の想定以上の低迷が株価の上値を抑える展開になっているようです。ただ、2025年度は、建築基準法改正の影響で、4月から確認申請審査が長期化したことが住宅着工にマイナスの影響を与えました。


     2027年3月期はこうしたマイナス影響が軽減されることで大幅増益に転じることが想定されます。会社側では株主還元策として、中期的な利払い前・税引き前・減価償却前利益(EBITDA)の水準に基づき年間配当額を決定し、自己株式の取得は余剰資金の有無により機動的に検討としています。


     2027年3月期は大幅増益が想定されていることで、高い配当水準は維持される公算が大きいとみられます。


    2 SANKYO(6417・東証プライム)

     パチンコ・パチスロ機の大手メーカーです。1980年に開発したパチンコ機「フィーバー」が大ヒットするなど、開発力の高さに定評があります。


     2026年3月期第3四半期(2025年4月-12月期)営業利益は617億円で前年同期比1.2%減となっています。パチンコ機の販売台数・単価が順調に推移し、パチスロ機販売台数の伸び悩みをカバーする形になっています。


     2026年3月期通期では630億円で前期比14.4%減を見込んでいます。第4四半期に投入予定であったパチスロ機3タイトルを次期以降に先送りしたことが下振れ要因となりますが、パチンコ機の販売上振れにより、従来予想据え置き計画となっています。

    年間配当金は前期10円減の90円を計画しています。


    「3.0搭載」機種導入後もパチンコ稼働の抜本的な改善につながっていないこと、パチスロ期待製品の投入ずれ込みなどがネガティブ視されて、足元の株価は伸び悩んでいる状況です。


     ただ、「機動戦士ガンダムユニコーン」などの投入が先送りされたタイトルは2027年3月期での業績寄与が期待できるでしょう。


     2025年12月末の現預金は1,094億円、一方で長・短借入金はゼロであり、ネットキャッシュは総資産比で37%、時価総額比でも23%と極めて高い水準にあります。2026年は東証の改革がキャッシュリッチ銘柄の剰余資金の使途に向けられるとみられることは注目ポイントとなります。


     2025年12月にかけて大規模な自社株買いを行いましたが、今後も機動的な自社株買い実施の可能性は高そうです。


    3 ヤマハ発動機(7272・東証プライム)

     二輪車事業が主力で、船外機やボート、水上オートバイなどのマリン事業、表面実装機やドローンなどのロボティクス事業も手掛けています。180カ国超の国と地域で生産・販売を行っており、海外売上高比率が94%と高いことが特徴です。


     2025年12月期営業利益は1,263億円で前期比30.4%減となっています。マリン事業やRVとゴルフカーの統合事業(OLV事業)が伸び悩んだほか、研究開発費や関税費用などのコスト増が重しとなりました。


     一方、2026年12月期通期では1,800億円で同42.4%増の見通しです。二輪車やマリンなど主力事業の販売拡大を見込んでいるようです。年間配当金は、2025年12月期が前期比15円減配の35円、2026年12月期が同15円増配の50円を計画しています。


     2025年のはじめから株価は低調な推移が続いています。トランプ関税のマイナス影響が大きいと警戒されたこと、実際に大幅減益見通しに業績予想を下方修正したことなどが株価低迷の背景です。米関税のマイナス寄与が軽減されること、構造改革効果による収益回復が期待できることで、株価の出遅れ感が是正されてくる余地は広がりそうです。


     また、為替の1ドル変動は16億円、1ユーロ変動は8億円の利益変動要因となるため、現在の為替水準は見直し買いの材料にもなり得ます。なお、中東情勢の混乱が続いていることは、マリン事業などレジャー分野の需要に影響を与える可能性がある点はリスク要因となります。


    4 SUBARU(7270・東証プライム)

     自動車業界大手の一角で、世界販売の7割超を北米で販売するなど米国向けのウエートが高いこと、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)の比率が85%と高いことなどが特徴になります。


     2026年3月期第3四半期(2025年4月-12月期)営業利益は663億円で前年同期比82.0%減となっています。バッテリーEVの自社生産に向けた工事の影響で、生産台数・販売台数ともに減少したほか、米国の関税影響が大きく響きました。


     2026年3月期通期では1,300億円、前期比67.9%減の見通しです。関税負担の増加、米国環境規制の変更案を受けた関連費用計上などで、従来予想の2,000億円から下方修正しています。なお、年間配当金は前期比横ばいの115円を計画しています。


     米国向けウエートが高く、関税のマイナス影響が大きい銘柄として警戒されてきたほか、業績予想の大幅下方修正もあって、株価は低調推移となっている格好です。米国自動車市場には過度に楽観的になりにくいですが、2027年3月期業績回復期待がある中、今回の下方修正で当面の悪材料出尽くしとも捉えられます。


     新型フォレスターへの期待感なども今後は高まる公算があります。加えて、防衛事業の展開力も今後の見直し材料となるでしょう。


     同事業では、航空自衛隊、海上自衛隊向けの初等練習機システムや陸上自衛隊向けヘリコプターなどを製造しているほか、戦闘機、輸送機、哨戒機などの主要部位の開発・生産も担っています。さらに、無人航空機システム分野の研究開発にも積極的に取り組んでいます。


    5 ソフトバンク(9434・東証プライム)

    「ソフトバンク」や「ワイモバイル」を展開する通信大手の一角です。非通信領域で大型の経営アクションを次々と実行、Yahoo!Japan、ZOZOTOWN、LINE、PayPayを子会社化しています。


     2026年3月期第3四半期(2025年4月-12月期)営業利益は8,841億円で前年同期比7.6%増となっています。主要セグメントが全て増収となり、システム障害に伴うアスクルの減益影響を吸収しています。とりわけ、PayPayを中心とするファイナンス事業が大きく成長しました。


     2026年3月期通期では1兆200億円、前期比3.1%増を見込んでいます。従来予想の1兆円から上方修正しましたが、依然として進捗(しんちょく)率は88%と高い水準にあります。なお、配当金は前期比横ばいの8.6円を計画しています。


     ここ1年間の株式市場は、AI・半導体関連の一極集中による上昇相場でした。このため、業績は堅調ながら、通信セクターというディフェンシブ性の強さがネックとなって、株価のパフォーマンスはさえないものとなっていました。今後、AI・半導体関連株に過熱警戒感が強まってくれば、資金シフトの受け皿となってくる可能性も高いと考えられます。


     また、2026年4月からは、AIの利用に必要なGPUクラウドサービスの提供を順次開始予定であり、ディフェンシブ銘柄から成長期待銘柄への変化も意識されます。PayPayの株式上場による含み益の拡大も目先想定されるでしょう。なお、同社では、1年以上かつ100株以上を継続保有する3月、もしくは 9月末株主に対して、1,000円分の「PayPayマネーライト」を毎年進呈しています。


    (佐藤 勝己)

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