米国とイランは8日、2週間の停戦に合意。足元では原油供給の回復期待から原油価格が急落しています。
中東情勢の長期化懸念で株価は下値模索、3月は記録的な下落率に
3月第1週から4月第1週(3月6日終値~4月3日終値)までの日経平均株価(225種)は4.5%の下落でした。イラン情勢の混迷が長期化することへの懸念から、リスク回避の動きが優勢になりました。
3月の月間下落幅は7,786円で過去最大となり、下落率13.2%も2008年10月以来の高水準となりました。
イラン情勢悪化に伴う最大のリスクは、原油価格の上昇です。イランは有数の石油産出国であるだけでなく、石油輸送の要衝であるホルムズ海峡を実質的に支配できる立ち位置にあります。
ホルムズ海峡の封鎖によって原油供給の逼迫(ひっぱく)を起こし、戦闘を優位に進める腹づもりもあると考えられます。
特に日本は原油をほぼ中東地域からの輸入に頼っているため、ホルムズ海峡封鎖による市況の上昇、さらには将来的な原油や石油製品の枯渇が強く警戒されることになります。なお、戦争が長期化すれば、イランが他の石油産出国のエネルギー施設攻撃を拡大する可能性もあり、その場合、紛争が終結しても原油相場の高止まりが続くことにもつながります。
この期間で上昇が目立った銘柄としては、原油価格の上昇がメリットとなる INPEX(1605) 、 出光興産(5019) など石油株のほか、 商船三井(9104) や 日本郵船(9101) などホルムズ海峡封鎖で海運市況の上昇が想定される海運株が挙げられます。
商船三井はアクティビストファンドの大量保有も材料視されました。
半面、全体相場の地合い悪化から、 アドバンテスト(6857) や KOKUSAI ELECTRIC(6525) など半導体関連の一角が軟調となり、 三菱自動車工業(7211) 、 マツダ(7261) 、 スズキ(7269) など、自動車株も総じて下げが目立ちました。
イラン情勢の落ち着きを見極めへ、長期化なら決算発表での混乱も
4月7日(日本時間8日朝)、トランプ大統領がイランがホルムズ海峡の即時解放に同意することを条件に、大規模攻撃を2週間停止することを表明しました。米メディアなどによると、米軍のイランに対する攻撃は停止、イスラエルも停戦に同意し、イランへの攻撃を2週間停止するとされています。
ちなみに、トランプ大統領は5月14日から15日にかけて中国を訪問し、米中首脳会談が開催される予定のため、ここまでの長期化は考えにくいでしょう。その際、他の中東諸国も含めてエネルギー施設の破壊が最低限にとどまっていれば、原油相場の落ち着きとともに、株式市場も急速な反転が期待できます。
ただ、人工知能(AI)過剰投資リスク、プライベートクレジット問題、SaaSとAIの競争激化懸念など不透明要素が多く残る現状下、戦争終結を楽観的に先取りすべき状況でもないとみます。
4月下旬からは2026年3月期の決算発表が本格化します。最大の焦点は2027年3月期業績のガイダンスですが、仮にイラン紛争が長期化している場合、相当悲観的な見通しになることが予想されます。業績計画が立てられない銘柄も増える可能性があり、株式市場への本格的な資金流入の妨げになっていくでしょう。
とりわけ、エネルギーやガソリンを多く消費する企業、ナフサ由来製品を原材料として扱う企業は、買い手控えムードが強まりやすそうです。
一方、足元の業績動向はさておき、代替エネルギー関連、エネルギープラント関連、中東で事業を展開するオイルマネー関連、脱プラスチック製品を扱っている企業などには、今後関心が高まっていく可能性は高いと想定されます。
原油価格高騰でも影響を受けにくい銘柄に注目
戦争終結を先取りし、直近で大きく売り込まれた銘柄のリターンを狙うタイミングも近づいている印象です。しかし、今はまだ、イラン情勢の先行き不透明感が残るため、投資リスクは低下させておきたいところです。
こうした中、今回は原油相場の上昇による悪影響が相対的に小さいとみられる高配当利回り銘柄に注目します。インフレによる個人消費減退などの影響を考慮すれば、原油高はほとんどの銘柄に悪影響を及ぼすとみられますが、より直接的な影響が小さい銘柄という意味で取り上げています。
(表)原油高の影響が相対的に小さいとみられる高配当利回り銘柄 コード 銘柄名 配当利回り
(%) 4月3日
終値(円) 時価総額
(億円) 株価騰落率
(%) 経常増益率
(%) 6417 SANKYO 4.57 1,967.5 4,525 ▲22.46 4.6 2181 パーソルホールディングス 4.62 238.1 5,424 ▲17.64 10.0 9107 川崎汽船 4.45 2,698 17,244 23.90 3.0 8572 アコム 4.24 471.7 7,389 ▲4.94 7.1 8252 丸井グループ 4.20 3,121 5,732 ▲3.07 10.3 注:配当利回りはコンセンサス予想
注:株価騰落率は3カ月前比
注:経常増益率はコンセンサス27年3月期予想、12月決算銘柄は26年12月期予想
注:アコムはスタンダード市場上場、他はプライム市場上場
銘柄選定の要件
楽天証券のスーパースクリーナーにおいて、配当利回り4.0%以上、時価総額3,000億円以上の中から、原油高の影響が大きいとみられるセクター(選定要件に記載)を除いたもの、かつ、会社予想ベースでの配当利回りが4%未満であるものを除いたものが表の銘柄群となります。
厳選・高配当銘柄(5銘柄)
1 SANKYO(6417・東証プライム)
パチンコ・パチスロ機の大手メーカーです。1980年に開発したパチンコ機「フィーバー」が大ヒットするなど、開発力の高さに定評があります。
2026年3月期第3四半期(2025年4月-12月期)営業利益は617億円で前年同期比1.2%減となっています。パチンコ機の販売台数・単価が順調に推移し、パチスロ機販売台数の伸び悩みを下支えしています。
2026年3月期通期では630億円で前期比14.4%減を見込んでいます。第4四半期に投入予定であったパチスロ機3タイトルを次期以降に先送りし、下振れ要因となりますが、パチンコ機の販売上振れにより、従来予想を据え置いています。年間配当金は前期10円減の90円を計画しており、会社計画ベースでの配当利回りは4.57%です。
パチンコ台の材料となるプラスチック部品は原油価格上昇の影響を受けますが、他の機械メーカーと比較して、相対的な影響は軽微と考えられます。先送りされた新機種投入効果などで、2027年3月期の業績は好望視できるでしょう。
2025年12月末の現預金は1,094億円、一方で長・短借入金はゼロであり、ネットキャッシュは総資産比で37%、時価総額比でも24%と極めて高い水準にあります。
2025年12月にかけて大規模な自社株買いを行いましたが、今後も機動的な自社株買い実施の可能性は高そうです。
2 パーソルHD(2181・東証プライム)
人材総合サービス業界の大手企業の一角です。人材派遣の「テンプスタッフ」創業でスタートし、「doda」ブランドの人材紹介や求人広告なども主力分野となります。
2026年3月期第3四半期(2025年4-12月期)の営業利益は539億円で前年同期比11.5%増となっています。人材派遣や人材紹介などの主力事業が順調に拡大しているほか、買収や合併(M&A)効果によってBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業の増益率が高まっています。
2026年3月期通期では、660億円で前期比14.9%増を見込んでいます。年間配当金は前期比1.5円増の11円を計画しています。
人材派遣業界にとって、原油市況上昇の悪影響は軽微と考えられます。石炭や液化天然ガス(LNG)など資源大国とされる豪州の鉱業向け展開では、ビジネスチャンスが広がる余地も考えられます。
また、現在日本でも賃上げの傾向が強まっていますが、2025年は人材派遣会社が請求する料金単価が主要業種全てで上昇しており、人手不足感が強まっている中、派遣料金の上昇によるマージンの改善も期待されるとみられます。なお、株価水準の値頃感が強い高配当利回り銘柄としても買い妙味がありそうです。
3 川崎汽船(9107・東証プライム)
国内海運大手3社の一角です。もともとウエートが高かったコンテナ船事業は2018年4月以降に大手3社によるコンテナ事業統合会社「オーシャンネットワークエクスプレス(Ocean Network Express、通称:ONE)」へ統合、現在は持分法損益での寄与となっています。
2026年3月期第3四半期(2025年4-12月期)経常利益は886億円で前年同期比69.3%減となっています。自動車船やドライバルクの利益が低調であったほか、ONE社からの持分法投資損益も減少しました。
2026年3月期通期では1,000億円、前期比67.5%減の見通しです。為替前提を円安方向に修正したことで、営業利益予想は上方修正していますが、持分法利益の低迷が続く見通しのようです。年間配当金は前期比20円増の120円を計画しています。
海運各社にとって原油相場の上昇は、燃料価格が高騰するためマイナス材料ですが、出資会社のONEが3月24日から燃料サーチャージ(特別付加運賃)を導入したことによって、燃料高の影響が荷主の負担となり、海運各社のマイナス影響は大きく軽減されます。
一方、今回のイラン紛争ではホルムズ海峡が封鎖されるなどで船舶需給がひっ迫、海上輸送運賃の上昇につながっています。持分法適用関連会社であるONE社の収益拡大が想定されるなど、ポジティブな影響が強まるとみられます。
なお、会社側では、2026年度までの中期計画期間中に500億円以上の機動的な追加還元を実施するとしており、今後、自社株買いアナウンスが行われる可能性も高いとみられます。
4 アコム(8572・東証スタンダード)
消費者金融の専業大手企業であり、 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) の連結子会社となっています。ローン商品の利用客に対して債務保証を行う信用保証事業、ASEAN市場で展開している海外金融事業なども手掛けています。
2026年3月期第3四半期(2025年4-12月期)営業利益は819億円で前年同期比9.8%増となっています。既存顧客の利用が好調推移となっており、ローン・クレジットカード事業、信用保証事業ともに順調な拡大をみせており、請求件数の減少で利息返還損失が減少していることも利益拡大の要因となっています。
2026年3月期通期では886億円、前期比51.3%増を予想、利息返還損失引当金の計上一巡で増益率は高まる見込みです。年間配当金は前期比6円増の20円を計画しています。
原油相場上昇に伴う直接的な影響は乏しいとみられますが、インフレ進行による景気の悪化が進むことで、貸倒れリスクなどは上昇するとみられます。
一方、ローン・クレジット事業における利用者数の増加が見込まれるというメリットも発生します。利息返還請求がほぼ一巡して収益の安定化が図られている中、配当性向の目線が50%にあることは妙味が強いと意識されるでしょう。
加えて注目点となるのは親子上場解消の動きです。三菱UFJグループによる取り込みの可能性が高いと想定される中、今後も折に触れて、再編プレミアムが思惑視される展開となっていきそうです。
5 丸井グループ(8252・東証プライム)
首都圏を地盤とする百貨店の大手企業でしたが、現在では同事業はテナントからの賃料収入が中心となっています。一方、主力事業は、エポスカード利用によるリボ・分割手数料、キャッシング利息などを中心としたフィンテック事業となっています。
2026年3月期3四半期(2025年4-12月期)営業利益は397億円で前年同期比19.5%増となっています。カードクレジット取扱高の拡大やポイント費用抑制でフィンテック事業が伸長し、小売事業もテナント・イベント収入が増加して増益となっています。2026年3月期通期では500億円で前期比12.3%増の見通しです。
原油相場上昇に伴うインフレが進行した場合、長期的には個人消費抑制の動きが強まってマイナスの影響が生じる可能性はあります。ただ、短期的にはキャッシング利用増などフィンテック事業における取扱高の増加が想定されるでしょう。「好き」を応援するビジネス展開の効果などで、足元では新規入会者の増加ペースが再加速化している状況にもあります。
配当政策は2024年3月期から株主資本配当率(DOE)8%めどとしていましたが、2026年3月期からDOE10%程度へと変更しています。2026年3月期は14期連続増配見通しであるほか、2031年3月期までに自己株式500億円の取得も計画しているなど、株主還元に積極的であることも長期投資にとっては妙味と言えるでしょう。
(佐藤 勝己)

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