6月のドル円は日銀の利上げ姿勢の不透明感とFRBのタカ派転換を受け、39年半ぶりの162円台の円安水準で6月を終えました。7月は介入警戒感がありつつも、ドル堅調地合いが続く見通しです。
6月は39年半ぶりの162円台、円安水準で終了
6月30日、ドル円は1986年12月以来、39年半ぶりに162円台の円安水準で6月を終えました。6月の相場を振り返ってみますと、月間値幅が3円超(159.30~162.67円:筆者推計)とレンジが狭く、動意の乏しい月となりました。
6月前半は、中東情勢の緊迫化によってドル買いとなり、159円台で始まったドル円はすぐに160円台に上昇しました。介入警戒感はあるものの、レートチェックや介入の実弾が伴わないことからじりじりとドルは上昇しました。
6月後半は、日本銀行の金融政策決定会合で0.25%の利上げを決定したものの、追加利上げのペースが遅れるとの見方が広がる一方、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ姿勢が鮮明になったことからドル高となりました。ドル円は161円をブレイクすると一気に161円台後半の円安となり、月末には162円台に乗せました。
ただ、ドル円は一本調子の円安の動きでしたが、ユーロ円やポンド円などのクロス円は、4月の円安水準を抜いていないことから、円独歩安の動きではありませんでした。6月はドル高の動きだったようです。
7月も、中東情勢と日米金融政策のタカ派スタンスの強弱から、介入警戒感は残るもののドル堅調地合いが続くものと予想されます。
中東情勢は、和平合意締結後も散発的な衝突が起こっており、和平協議は遅々として進まず、依然として先行き不透明感が残ることから有事のドル買いの巻き戻し(ドル売り)にはつながりづらい状況が続きそうです。
日米金融政策のタカ派スタンスの強弱については、日銀は6月に0.25%の利上げを決定(政策金利1.0%程度)しました。
しかし、内田真一副総裁(植田和男総裁が入院のため代行)の記者会見では、利上げを続ける姿勢を示しましたが、利上げペースやターミナルレート(最終的な政策金利水準)への言及がなかったため、利上げペースが遅くなるのではないかとの見方が広がり、弱いタカ派姿勢の印象を市場に与えました。
内田副総裁は為替相場について「物価に影響を及ぼす重要な要因の一つになっている」との認識を示しましたが、海外の中央銀行が利上げに傾き始めている中、市場はビハインド・ザ・カーブ(政策が後手に回る状態)に陥るリスクを懸念し始めています。
内田副総裁は「ビハインド・ザ・カーブに陥ることがないように適切に運営していきたい」と述べていますが、この市場とのギャップが続く限り、現状の利上げ継続姿勢では円高材料としては乏しいかもしれません。
7月も食料品の値上げが続く中では、半年に1回ではなく、連続利上げか、少なくとも3カ月に1回の利上げペースの姿勢を示さないと弱いタカ派姿勢の印象を払拭できないかもしれません。
さらに、政府が近く策定する「骨太の方針」に「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」との文言が明記されるとのことから、市場では政府の利上げけん制と受け止められ、政府からの圧力によって上記のような利上げペースは難しくなる可能性がありそうです。このことも円売り材料になっているようです。
一方、FRBは6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では市場の予想通り金利据え置きの決定(政策金利3.50~3.75%)となりました。
しかし、声明文からは次回の政策変更で金融緩和を予期させる文言が削除され、金利見通しが3月時点の年内利下げ1回(中央値3.4%見通し)から利上げ1回見通し(中央値3.8%)になりました。これまでの利下げ姿勢からタカ派姿勢に転じたことが鮮明になったことから、日銀よりも強いタカ派姿勢の印象を市場に与えました。
金利見通しについては、ウォーシュ議長を除く18人中9人が年内利上げを見込んでいますが(従来はゼロ人)、8人は据え置きであり、据え置きは前回の7人から8人へと1人増えていることには留意したいと思います。
米・イランの和平協議進展期待で原油が下がっていますが、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)で70ドル台を維持できれば、ガソリンが下がり、物価が下がってくることが予想されます。
物価の低下には数カ月はかかりそうですが、物価高による景気への影響が大きければ、先行きの景気と原油低下を意識してFRB幹部からの発言が変わる可能性もありそうです。
2日の雇用統計で利上げ期待は高まるか。平均時給にも注目
7月2日(木)発表の米6月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月の17.2万人増加から10万~11万人の低下予想となっていますが、10万人以上であれば労働市場は堅調との見方が多いようです。ただ、北中米ワールドカップの影響で雇用が一時的に増えているとの見方もあり、8月以降の雇用者数が維持されるのかどうかも注目です。
そして注目したいのは平均時給です。前月の平均時給前年比+3.4%は5月消費者物価指数(CPI)の前年比+4.2%を下回っています。実質賃金がマイナスになっているこの傾向が続けば、米個人消費に影響が出てくる可能性もあるとの見方も出てきているため、平均時給にも注目したいと思います。
非農業部門雇用者数が予想通りの結果となり、米利上げ期待が高まるのか(ドル高材料)、平均時給の低下で利上げ期待が後退するのか(ドル安材料)注目したいと思います。
このように日米金融政策のタカ派スタンスの強弱からドル高地合いが続きそうですが、介入警戒感も残るため、円安もじりじりと進む可能性があります。
片山さつき財務相は、160円を超えてから「投機的な動きがあれば断固とした措置を取っていく」と円安けん制発言を繰り返していますが、4月終わりの介入直前のけん制発言と比べると、口先介入のトーンはまだ低いようです。162円に乗せてもレートチェックや介入の実弾が伴わないことから、このままだと鈍い動きながらも160~165円のレンジに入ることが予想されます。
ただ、6月22日に片山財務相がベッセント米財務長官とオンライン協議を行ったことは留意しておく必要があります。
過度な円安によって日本の長期金利が上昇し、米長期金利が上昇すれば、米国が動いてくることが予想されます。現状は、原油低下によって、米長期金利も低下しているため、当面は米国も様子見になるかもしれませんが、日米の長期金利が上昇し始めたら、米国からの動きにも注目する必要があります。
(ハッサク)

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