日本はこれまで、米国のAI大革命に追いつく目を見いだせませんでした。しかし、エヌビディアは7月16日、CEOが「ジャパンAIの幕開け」と予告していたとおり、多くの日本企業との提携を公表。

このAI大革命の進展で、日本企業の強みが組み込まれるステージの到来です。その勝ち筋を、日本自体のナラティブ(物語)でなく、外の目線で捉えます。


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「ジャパンAIの幕開け」米国発「AI大革命」が日本株にもたらす影響とは?
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サマリー

●AIで劣勢だった日本企業の強みが、AI大革命に組み込まれるステージ到来
●日本の相場を日本の事情だけから捉えると、妙なバランスの思考に陥りかねない
●日本株相場を捉える視座として、米国、そして韓国・台湾など外の羅針盤に効用がある


日本株の現在地を「クール」に分析

 人工知能(AI)大革命における日本企業の強み、株の勝ち筋はどこにあるのでしょうか。日本では、日本の相場だからと、日本の事情だけであれこれ解釈する論調が少なくありません。その中で、為替市場では円安を、債券市場では日本国債の金利上昇(価格下落)を、悲観的に捉える声が目立ちます。


 一方、株式相場の論調は「それ行けどんどん」と前向きな営業トークが多く、独りよがりな楽観ナラティブが少なくありません。そこでこのレポートでは、日本を米国や韓国・台湾といった、外の羅針盤との比較によって、日本株の身の丈をクールに捉えます。


日本株高の基本背景

 まず、日本株高の歴史的背景として、脱デフレの過程を整理し、AI相場に至る道筋を位置づけます。


 日経平均株価は、1990年の3万9,000円手前から、「失われた20年」のデフレを経て、2011~2012年には8,000円台まで低迷しました。そこからの回復は、2013年のアベノミクス下の異次元の金融緩和が端緒になりましたが、2015~2019年は2万円±5,000円付近にとどまりました。


 次のステップは、不測のコロナ禍によってもたらされました。日本も世界各国も自国経済がこの災厄に負けないようにと、財政支出と金融緩和を積極化しました。この極端なリフレ政策は、コロナ禍のピークアウトと、グローバル供給網の寸断と相まって、強烈なインフレを招きます。


 米欧など海外では、インフレが極端に進行したため、2022年から急速な利上げが行われました。

一方日本では、インフレが相対的に低く、デフレ心理が根強かったため、利上げが遅れます。その結果、内外金利差が急拡大した分だけ超円安が発生。


 それによる輸入コストの上昇と、コロナ禍の積極的なリフレ策の相乗作用によってようやくインフレとなり、名目国内総生産(GDP)が増大……これが、足元の日本株高のマクロ的背景です(図1)。


<図1>日本の名目GDPとTOPIX
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出所:Bloomberg

米AI大革命の始動

 しかし、ここに至っても、日本独自の株高とはいえない事情があります。円安は、もっぱら米金利の上昇に沿って進みました。また、日本株相場は米株相場にも連動します。2023年に至るまで、日経平均は「米国株相場×ドル円相場」によって、ほぼ説明可能だったのです。


 このことは図2のドル建て日経平均と米S&P500種指数、ナスダック総合指数との推移を見れば、明らかでしょう。


<図2>米株指数と日経平均(円建て、ドル建て)
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出所:Bloomberg

 その米国株は、金利上昇を嫌気して2022年に下落します。2023年に入ってからも、高金利下で一般株は圧迫され続けました。しかし同年から、ナスダック、そしてS&P500は上昇しはじめます。先導役になったのは、エヌビディア(NVDA)、GAFAMなどAIをテーマにした巨大企業の数銘柄でした。


 しかし、日本株にはそうした勝ち筋が見えません。

円安効果も一服かという2024年に、日本株相場のリード役である海外投資家マネーが引き上げ、2025年第1四半期まで、ドル建て日経平均は米株指数を下回って低迷しています。


 こうした中、2025年第2四半期から日本株を浮上させたのが、海外マネーの回帰でした。一部はAI大革命から連想される半導体関連株の買いが見られたものの、大半は、米国株一強への集中投資を緩和する国際分散投資の流れによるものでした。


 しかし2026年第2四半期からの加速は、明らかに様相が異なります。日本のAI株への期待が一気に高まっているようです。


ジャパンAIの幕開け

 AI大革命の相場といっても、その内部ではリード役のテーマ銘柄・業種は変転してきました。2022年遅くに生成AIが登場した当初は、誰もAIの収益化をイメージできず、とりあえずGAFAMを買っておこうかというほどの空気でした。


 イメージが具体化したのは2023年5月公表のエヌビディア決算の飛躍からです。しばらくは同社のGPUが独壇場となり、株式相場もエヌビディアを先頭とする雁行飛行の様相でした。


 この列にはやがて、AIソフト株が加わり、やがてAI普及のボトルネックになるとして電力株が加わりました。しかし、AIが経済社会を覆うインフラとして、データセンターの建設計画が急速に進む段階に至り、エヌビディア社のGPUのみならず、より安価なカスタム半導体、CPU、メモリー、蓄電・冷却技術など、AI需要の裾野が広がり、相場の主役がシフトしてきました。


 2025年第2四半期、その流れがついに日本にも及ぶステージの到来です。そのことは、AI関連株の比率が高い日経平均が、東証株価指数(TOPIX)を急速に凌駕(りょうが)していることにも表れています(図3)。


<図3>日経平均とTOPIX
「ジャパンAIの幕開け」米国発「AI大革命」が日本株にもたらす影響とは?
出所:Bloomberg

 データセンターなどAIインフラへの膨大な設備投資が進む中で、キオクシアホールディングス(285A)のメモリーの他、日本企業が世界をリードする半導体の部材や積層技術、フィジカルAI部品・精密機械、光通信技術などへの需要が明らかになってきました。


日本株相場の「根底にあるもの」とは?

 日本企業が優位とされるこれら技術、企業についての詳細は他の方の分析レポートに任せます。筆者は常々、国内では、日本の相場を日本の事情だけで語ろうとして、妙にバランスを欠いた論調が多いことに苦言を呈しています。


 先述したように、日本株相場の根本には「米国株高」と「円相場」があり、円相場を動かす主要因が「米金利」である間、日本株相場の動きの大半は米国次第であり、そのロジックで動く外国人投資家次第だったのです。


日本だけで考えない

 今回は、日本の相場を韓国と対比させます。図4aで円とウォン、図4bで日韓国債10年金利、図4cで日経平均、NF 日経半導体株指数連動型ETF(200A)とKOSPIをご覧ください。


<図4a>日本円 vs. 韓国ウォン(対ドル)
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出所:Bloomberg

<図4b>日韓国債10年金利
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出所:Bloomberg

<図4c>日経平均、日本半導体ETF vs. KOSPI
「ジャパンAIの幕開け」米国発「AI大革命」が日本株にもたらす影響とは?
出所:Bloomberg

 円安や日本国債の金利上昇は、高市政権のリフレ政策を市場が警戒するからという説明は、韓国にも妥当すると考えます。これを欧米や主要国の為替や金利に目線を広げて論じることもできます。


 図5は米欧と東アジア(日、韓、台、香、中)の主要株価指数の対比です。まずは、米AI大革命の恩恵が韓国、台湾、日本に大きく表れていることが分かるでしょう。


<図5>米欧株と東アジア株
「ジャパンAIの幕開け」米国発「AI大革命」が日本株にもたらす影響とは?
出所:Bloomberg

 その中で、サムスンとSKハイニックス2社で6割前後と、メモリー株「一本やり」に近い韓国KOSPIは、足元の相場の調整が大きく出ています。両社のデータセンター用メモリーは、需要の急拡大に供給が追い付かず、価格が急騰し、業績が飛躍的に高まった分、株高を享受しました。


 この2社に集中する相場はレバレッジ上場投資信託(ETF)の売買が極端に増え、ボラティリティを高めています。

いざ相場が下がると、好業績を横目に、いずれ供給が需要を満たすと、メモリー価格が下落し、相場も終わるという懸念も浮上しやすい不安定さが付きまといます。


 これに比べると、台湾加権株は、TSMC1社が4割以上の比重を占めるものの、同社がAI用半導体の製造元として最先端技術を持ち、独壇場であることから、相場に相対的に底堅さがあります。


 日本株の場合、台湾・韓国の両指数と同じ時価総額加重平均のTOPIXでは、AI関連株上位10社で2割に満たず、構成225銘柄の株価の単純平均である日経平均で4割強とされます。これら日本AI関連株の相場は、足元の自律調整でメモリー株であるキオクシアHDの乱高下もあり、神経質になっています。


 しかし、AI大革命に貢献する製造業の裾野の広さから、相対的に底堅く、息の長い相場を形成することを期待しています。


 米AIデータセンター建設の進捗(しんちょく)具合、採算見通し、そこに感度が高いアンテナとしてのKOSPI、需要の根底を教えてくれるTSMC……さらに、米国を筆頭とするマクロ景気と金利など、外部の羅針盤を読むことで、日本の相場へのシグナルとバランス感覚を得られるのです。


*本稿は個別銘柄を推奨するものではありません、投資はご自身の判断と責任において行ってください。


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(田中泰輔)

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