炭素繊維などを手がける帝人<3401>が、事業モデルを転換する。
炭素繊維や樹脂などの素材事業で、自社素材を起点とする従来型の事業モデルを見直し、顧客課題を起点に素材、技術、サービス、外部パートナーなどを組み合わせ、顧客とともに価値を創る事業運営に移行する。
過去2年間(2025年3月期~2026年3月期)、収益力強化に向けた事業ポートフォリオ(事業構成)の変革を進めたものの、素材事業が振るわず、収益力の本格的な回復には至らなかったため、顧客起点の事業運営にかじを切る。
一方、すでに顧客起点型ビジネスを確立している繊維・製品やヘルスケアなどの事業には成長投資を重点配分し、M&Aで同業・周辺企業との統合や顧客基盤拡大を進める計画だ。
素材のみで解決できる社会課題は限定的
帝人はこの2年間、収益力強化に向け、不採算事業の整理などを進め、2024年10月にIT事業のインフォコムを譲渡し、2025年7月には複合成形材料の北米事業を譲渡した。
この結果、収益性に課題のある資産は減少したものの、素材型ビジネスを取り巻く市場環境の変化が響き、収益力の回復は実現しなかった。
2026年3月期は、売上高8731億9000万円(前年度比13.2%減)で、営業損益は707億1400万円の赤字(前年度は718億2800万円の赤字)となった。
アラミド事業での大型定修の影響や炭素繊維での販売量減少に伴う操業度悪化、競争環境の激化による販売価格の低下などが要因で、2期連続の営業赤字となった。
こうした状況を踏まえ同社は、素材自体の競争力をもとに収益を確保する従来型の事業モデルが難しくなり「素材起点型ビジネスモデルの行き詰まり」との認識を持つ。
さらに、ステークホルダーが多様化している現状を踏まえ「素材のみで解決できる社会課題は限定的」と分析する。
このため、今後は同社が強みとする「得意領域での圧倒的なノウハウ」や「差別化されたバリューチェーン・プラットフォーム(原材料の調達から加工、販売、顧客対応までを一体で担う独自の事業基盤)」などを生かし、顧客起点型ビジネスモデルへの転換を進める。
同ビジネスモデルは、顧客課題の解決を出発点に、顧客とともに価値を創る取り組みで、顧客と対話し、曖昧な課題やニーズを聞き出したうえで、収益に結び付く事業設計を行う。
そのうえで、自社素材にこだわらず、技術、サービス、外部パートナーなどの組み合わせによって、幅広い解決策を提供する。
同社は、素材自体の競争力を源泉とする戦い方から、帝人の強みを源泉とする顧客起点の戦い方へ転換するとしている。
繊維・製品や在宅医療で成長投資
一方、繊維・製品やヘルスケアなど顧客起点型ビジネスを確立している領域では、さらなる拡大を目標に、同業・周辺企業との統合や顧客基盤拡大の手段としてM&Aを活用する。
帝人は2026年10月に、子会社の帝人フロンティアと旭化成アドバンスの経営統合を予定しており、この経営統合を機に事業規模や顧客基盤を広げ、繊維・製品分野で業界首位級の地位を目指す。
国内繊維業界では、人口減少や人件費高騰、中国品流入などを背景に業界再編のスピードが加速しており、帝人は同統合を機に顧客起点型ビジネスを拡大する。
また在宅医療では、連携やM&Aによる事業基盤の拡大を目指し、新たな製品、サービスを展開する。
これまで築き上げた患者、地域社会とのつながりなどの強みを生かし、事業を補強・強化できるM&Aやパートナーとの連携に取り組む。
同社は、こうしたM&Aなどを含む成長投資として、2029年3月期までに1850億~1900億円を配分する。
事業ポートフォリオに変化
帝人は2027年3月期からセグメントを変更する。
2026年3月期の売上高8731億9000万円を新しいセグメントで分類すると、事業モデルの転換を進めるスペシャリティマテリアルズ(アラミド、炭素繊維、複合成形材料)が、売上高全体の24.4%を占める。
旭化成アドバンスとの経営統合を予定するアパレル&インダストリーズ(ポリエステル繊維、繊維製品など)は40.1%、ヘルスケア&ライフソリューションズ(医薬品、医療機器、在宅医療サービスなど)が15.9%、エレクトロニクス&エナジー(樹脂、電池・半導体ソリューション)が17.2%、その他(再生医療、埋込医療機器など)が2.5%となる。
同社の強みを生かした事業モデルの転換が進めば、高収益型事業の比率が高まるなど事業ポートフォリオに変化が現れる可能性がある。
同社は2029年3月期の売上高構成比について、帝人フロンティアと旭化成アドバンスの経営統合を予定しているアパレル&インダストリーズが50.5%と、2026年3月期比で10.4ポイント高まると予想する。
事業モデルへの転換を進めるスペシャリティマテリアルズは19.1%、ヘルスケア&ライフソリューションズは10.8%、エレクトロニクス&エナジーは17.5%、その他は2.1%を見込む。
2029年3月期の売上高構成比は、旭化成アドバンスとの経営統合を含むM&A戦略を織り込んだ計画だ。
顧客起点型ビジネスへの転換を進めながら、M&Aを通じた事業基盤の拡大が成長の鍵となる。
文:M&A Online記者 松本亮一

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