出張や旅行で利用することの多い新幹線。長時間過ごす車内では、一人ひとりのちょっとした気遣いが快適さを左右する。
一方で、周囲への配慮を欠いた行動によって、思わぬストレスを感じることも少なくない。
 今回は、新幹線で迷惑行為に遭遇しながらも、最終的には気持ちがスカッとしたという2人のエピソードを紹介する。

通路側の男性は眠ったまま…窓側の席へ入るだけでひと苦労

新幹線の座席に“大股開き”で座る男性…通路にはみ出した足を襲...の画像はこちら >>
 高橋由紀奈さん(仮名・40代)は、岡山駅から東京方面へ向かう新幹線に乗っていた。

 予約していたのは、2人掛け座席の窓側。自分の席へ向かうと、通路側には赤いヘッドフォンをつけた40代くらいの男性が座っていた。そして、大きなキャリーケースを足元に置いたまま眠っていたという。

「足も大きく広げていて、通路にはみ出していました。『どうやって席まで入ろう』と思いましたね」

 男性はまったく起きる気配がない。高橋さんは、キャリーケースと男性の足をまたぐようにして、ようやく窓側の席へたどり着いた。しかし、苦労はそれで終わらなかった。

「肘が、私の席まではみ出していたんです。しかも、キャリーケースを挟んでいたので、足もずっと広げたままでした」

 高橋さんも同じ料金を支払っているにもかかわらず、“自分のスペース”を奪われているような感覚だったそうだ。

「だんだん腹が立ってきましたけど、起こして注意する勇気はありませんでした。
そこで、ちょっとずつ反撃することにしたんです。男性を起こさないように、少しずつ少しずつ肘を押し返し、自分のスペースを取り戻していきました」

通路側にはみ出した足が招いた“自業自得”

 そんな攻防を続けていたときだった。通路を歩いてきた乗客が、通路にはみ出した男性の足につまずいたのだ。

 次の瞬間、手に持っていたアイスコーヒーが男性へかかってしまったという。男性は飛び起きると、「何するんだ!」と大きな声をあげた。慌てた乗客は何度も謝罪していたが、周囲の乗客はそれまでの男性の態度を見ていたからか、男性へ同情する様子はなかった。

「東京駅へ到着する直前だったこともあって、男性は不満そうな表情を浮かべながらも、しぶしぶ引き下がっていました。そもそも、ずっと足を通路へ出していたのは自分ですからね」

 高橋さんは「自業自得だな」と思い、少しだけスカッとしたという。

隣の席から漂う“大阪名物”の香りに複雑な気持ち

新幹線の座席に“大股開き”で座る男性…通路にはみ出した足を襲った“まさかの結末”「自業自得だな」
写真はイメージです
 田村健介さん(仮名・30代)は、出張のため新幹線に乗っていた。窓側の席に座ってしばらくすると、隣の男性が足元の紙袋から、“大阪名物として知られる有名店の肉まん”を取り出したという。

「実は、“あの肉まん”は祖父との思い出の味なんです」

 祖父は大阪へ出張するたび、お土産として肉まんを買ってきてくれたという。そのため、田村さんにとっては懐かしく、大好物だった。しかし、もちろん他人のものとなると話は別だったようだ。

「真横で食べられると、やっぱりニオイはキツいですよね。
窓側の席だったため移動することもできず、懐かしさと居心地の悪さが入り混じった複雑な気持ちで我慢していました」

年配男性の勇気あるひと言に空気が変わった

 すると、通路を挟んだ向かい側に座っていた年配の男性が立ちあがった。そして、肉まんを食べていた男性へ穏やかな口調で「すみません。車内なので、ニオイの強いものは少し控えていただけますか……」と声をかけたのだ。

 一瞬、車内が静まり返り、注意された男性は驚いた表情を見せたが、すぐに頭を下げた。

「申し訳ありません。気づきませんでした」と言うと、食べかけの肉まんを袋へ戻したという。

「私自身は何も言えずにいたので、正直救われました。祖父との思い出がある食べ物だからこそ複雑でしたけど、ちゃんと謝ってくれたことで気持ちがスッキリしました」

 それからしばらく肉まんの香りは車内に残っていたというが、素直な謝罪を聞いた瞬間、不思議とイヤな気持ちはなくなったようだ。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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