「積立か、一括か」。多くの議論では、「右肩上がりの市場では一括投資の方が有利になりやすい」という結論に止まりがちです。

本稿では一歩踏み込み、「どう実行すべきか」という観点で深掘りします。一括か積立か、という手法の優劣を超え、自分に合ったリスク管理のあり方を考えていきましょう。


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「積立投資vs一括投資」。どちらも結局「リスク管理」が明暗を分ける理由
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 前回は、「定期」「定額」で積立投資をする「ドルコスト平均法」の対抗馬として、「バリュー平均法」を取り上げ、積立投資の真価を探りました。


▼前回の記事

なぜ「ドルコスト平均法」が選ばれるのか?「バリュー平均法」との比較で考える積立投資の「真価」


 しかし、積立投資のメジャーな対抗馬として「一括投資」の存在を忘れてはいけません。なぜ一括投資はこれほどまでに議論の的となるのか。積立と比較してリスク管理の考え方はどう変わるのか。


 まずは、一括投資が「平均的に優位」とされる理由からひも解いていきましょう。


「平均的に一括が有利」の正体

 なぜ一括投資は勝ちやすいのでしょうか。その理由はシンプルで、株式市場は長期では上昇している時間の方が長く、早く全額を投じた方が、その上昇を取りこぼさずに済むからです。裏返せば積立は、まだ投資していない資金を長く抱える分、その間の値上がりを取り逃します。一括投資の優位性は、何か特別な因果関係があるのではなく、機会損失の差に過ぎないのです。


図1:資金投入の違いのイメージ(上段:一括投資、下段:積立投資)
「積立投資vs一括投資」。どちらも結局「リスク管理」が明暗を分ける理由
図1:資金投入の違いのイメージ(上段:一括投資)

「積立投資vs一括投資」。どちらも結局「リスク管理」が明暗を分ける理由
※最終的な入金額の合計を100として作成出所:筆者作成

いつでも一括が良いという訳ではない

 ただし注意したいのは、この優位性はあくまでも平均的な傾向に過ぎないという点です。


 図2の検証期間(2005年末~2025年末)では、投資期間の前半にリーマンショックによる下落時期を含んでおり、同じ投資元本100万円でも、5年間にわたって分割していた方が、一括投資より良い結果となりました。


 このように投資期間や分割の仕方次第で、結果は容易に変化します。

「一括が有利」というのは、いつ始めても勝てるわけではない、ということを認識しておく必要があります。


図2:一括投資と分割投資の最終評価額の試算(2005年末~2025年末)
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※S&P500種指数(配当込み・円換算ベース)のデータを基に試算 ※一括投資は投資開始時点の2005年末に100万円、24カ月分割および60カ月分割は、それぞれ毎月末に4万1,666円、1万6,666円を投資する場合を想定(円未満は切り捨て処理) ※費用や税金などは考慮していない ※本シミュレーションは過去データに基づいた参考試算であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではない出所:Bloombergのデータを基に筆者作成

積立によるリスク管理は万能ではない

 ここで、見落とされがちな大事な切り分けをしておきます。一括投資で大きくなるのは、投資タイミングへの依存度であり、その結果は資産額に影響します。一方で、保有する資産そのものの値動きの変動率(ボラティリティ)は、同じ資産に投資する限り、一括でも積立でも変わりません。


 つまり、積立が和らげてくれるのは投資初期の金額的なインパクトであって、持ち続ける間の市場リスクそのものではないのです。


図3:積立投資における保有資産額の変動イメージ(証券価格が±20%振れた時)
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※最終的な入金額の合計を100として作成出所:筆者作成

 これをふまえると、積立には資金の投じ方そのものに、二つの自動的な緩衝装置が組み込まれていると考えることができます。


 一つは、時間をずらして買うことで、一点集中による高値づかみを避けられること。もう一つは、投資を始めた直後は投入額がまだ小さいため、そこで暴落が来ても痛みが限定されることです。


 積立は、資金の投じ方がリスク管理の一部を肩代わりしているわけです。一括投資には、この緩衝装置がありません。投じるタイミングが一点に集中し、初日から資産の全額がマーケットにさらされます。


 では、積立が一部を受け持っていたリスクへの対処は、一括の場合はどうすべきでしょうか。答えは資金の投じ方から、「中身」の設計と「行動」の管理へ移る、ということです。

次にその二つの備えを順に見ていきましょう。
(※一見すると一括投資に限った話に思えますが、この論点は最後にもう一度戻ってきます。)


備え(1):何をどれだけ持つか

 一括投資で本当に痛いのは、株式100%を一度に投じ、その直後に暴落が来るケースです。逆にいえば、痛みの大きさを決めているのは、タイミングだけでなく、投資資産の中身でもあります。


 ここで効いてくるのが、これまでの連載で見てきた資産配分の考え方です。例えば図4のように、株式を始めとするリスク資産の比率を自分が下落に耐えられる水準まであらかじめ下げ、現金や値動きの異なる資産を「クッション」として組み合わせておきます。こうした「中身」の設計が、一点投入のダメージを和らげます。


図4:資産配分別の最大下落率(2005年末~2025年末)
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※本シミュレーションは過去データに基づいた参考試算であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではない ※費用や税金などは考慮していない出所:楽天証券分類平均リターンのデータ(株式:先進国株式(広域)-為替ヘッジ無し、債券:先進国債券(広域・高格付)-為替ヘッジ有り)を基に筆者作成

 また図5のとおり、株式への配分比率が高いほど長期的に期待できるリターンは高くなりますが、同時に運用途中での下落時の振れ幅も増し、それだけ耐える難易度も上がります。


図5:資産配分別のパフォーマンス(上段)とドローダウン(下段)の推移(2005年末~2025年末)
「積立投資vs一括投資」。どちらも結局「リスク管理」が明暗を分ける理由
※資産配分別パフォーマンスは2005年末を100として指数化 ※株式と債券の配分は月次でのリバランス実施を想定 ※本シミュレーションは過去の市場データに基づいた参考試算であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではない ※費用や税金などは考慮していない出所:楽天証券分類平均リターンのデータ(株式:先進国株式(広域)-為替ヘッジ無し、債券:先進国債券(広域・高格付)-為替ヘッジ有り)を基に筆者作成

 こうした投資対象の下落水準を知り、値動きの異なる資産を組み合わせる考え方については、以前のドローダウンや投資リスクを解説した回などでも触れました。一括投資は資産配分の設計の重要性を、より鮮明に映し出します。


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備え(2):暴落が来た時どう動くか

 どれだけ中身を整えても、暴落そのものを避けることはできません。特に一括投資では、資金投入直後の下落で後悔しやすく、ろうばい売りの引き金になりかねません。


 だからこそ下落局面でどのように動くかを、平時のうちにルールとして決めておくことが備えになります。

下げても焦って売らず、むしろ当初決めた資産配分が崩れたらリバランスで戻す。もしくは、一定の割合を下げた時に追加投資をする、と決めておけば、押し目買いの好機として捉えられるかもしれません。


 この連載で一貫してお伝えしている仕組み化やルール化の重要性は、まさにこうした下落局面のためにあります。


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実は一括投資だけの話ではない

 ここまで「一括投資の備え方」として書いてきました。しかし、お気付きでしょうか。中身の管理(配分やクッション)も、行動の管理(暴落時のルール)も、どれ一つとして、一括投資に固有のものではありません。


 積立投資は、資金の投じ方で金額の変動を緩和しています。その分、これらの備えの必要性が見えにくくなっているのに過ぎないのです。


 一括投資には、その自動的な緩衝装置がありません。だから、本来全ての投資家に必要な備えが、一括ではむき出しで立ち現れる。いわば一括投資は、誰にとっても必要なリスク管理を、凝縮して見せてくれる拡大鏡です。まとまった資金を手にした人ほど、この問いに鋭く直面します。


 しかし、積立投資をしている人にとっても、答えるべき問いは何も変わりません。資産配分は適切か。暴落の時、自分は動じずにいられるか。資産が大きくなればなるほど、積立による「緩衝機能」は相対的に小さくなり、一括投資と同じような市場の揺れを受けることになります。


 だからこそ、積立をしている今この瞬間から、自分なりの運用スタイルを整えておくことが重要なのです。


まとめ:「勝ちやすい」と「耐えられる」は別の話

 期待リターンがプラスである限り、平均的には一括投資が有利であることに変わりはありません。しかし、最終的に「勝ちやすい」ことと、途中経過において「耐えられる」ことは、別の話です。一括投資の優位性は、下落局面にも耐え続けられて初めて享受できるものです。


 また、待機資金による機会損失と、一括で投じた直後に下げる後悔の間を取り、まとまった資金を数カ月~1年程度に分けて投じる方法もあります。ただしこれは資金の「投じ方」での緩和策であり、本稿で見てきた備えとは別物です。中身の設計と行動の管理の両方をそろえてこそ、備えは完成します。


 結局のところ一括か積立かを問わず、自分は暴落の時にどれだけのリスクに耐えられるのか、それが分かって初めて投資の仕方も中身も決まってきます。最後に自分を守るのは、優れた投資手法や相場予測ではなく、自分自身の備えに他ならないのです。


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(上源 悠詞)

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