鉄道やバスの事業者で、車内の「リアルタイム混雑状況」を配信する事例が増えています。この「混雑状況」を測る手段はいくつかありますが、中には手作り感あふれるものも存在します。

「混雑度」どうやって測る?

 近年、鉄道やバスの事業者が、スマートフォンアプリなどで車内の「リアルタイム混雑状況」を配信するようになってきました。コロナ禍の影響で、少しでも密集状態を回避するための助けになり、事業者にとってもリスク回避につながります。

 この「リアルタイム混雑状況」、事業者ごとに様々な方法で計測されているようです。

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混雑するバス(画像:写真AC)。

 鉄道では東急やJRなどで順次導入が進められています。東急は駅に独自開発のセンサーを設置。構内を歩く利用者の姿を検知し、混雑状況として割り出しています。

 東京ベイシティ交通も2020年9月23日(水)から、運行するコミュニティバスのバスロケーションシステム(以下、バスロケ)に「リアルタイム混雑状況」の表示を開始しました。この会社が導入したのは、出入口に設置されたセンサーが乗客を検知し、乗降数から計算された車内の乗客数に基づき、混雑度を算出する方式です。

 その他、国土交通省が策定を進めているシステムのガイドライン案では、赤外線センサーをはじめ、運賃支払い時のICカード利用回数、Wi-FiやBluetoothが有効な端末が検知された数などで人数を把握する方法、CO2センサーで人の密集度を測る方法といった手法が挙げられています。

全部手作り! 磁石で取り付ける「密レバー」

 岡山市に本社を置く宇野バスは、独自の方法を採用しています。2020年夏からリアルタイム混雑状況を、自社のバスロケやGoogleマップの運行情報に配信していますが、それぞれのバスから発信される混雑状況は「運転手の判断」です。

 運転手の傍らにはスライダーの付いた小さな端末が。そこには「立ち」「席」などの4つのステータスが書かれています。運転手は車内の様子を確認しながら、停車時に、端末のスライダーを上げたり下げたり。この操作によって、バスの混雑状況がリアルタイムで送信され、地図に反映されます。

鉄道やバス「リアルタイム混雑度」どう測定? 密避ける対策 割とアナログなものも

宇野バスの通信端末組み立て例。実際の車内には左のスライダーが運転手の傍らに設けられる(組み立て例。画像:宇野バス)。

 宇野バスでは、コロナウイルスの影響から、バスの混雑状況を心配する乗客の声もあり、リアルタイムの混雑状況を通信するシステムを急遽バスロケに取り入れることに。数年前のバスロケ導入時のノウハウを活かし、基盤や通信モジュールに加え、スライダーやケーブル、取付用磁石などを買って試作品を制作してみたところ、「案外うまくいきそう」(担当者)だったことから、2020年6月頃からテスト運用を開始、バスロケ車載器と一体化するなど工夫を重ねて全バス車両に導入したとのことです。

 なお、基盤や通信モジュールを含め、部品は全て市販品。端末の制作から取り付け、メンテナンスまで全て自社で行うため、低コストで導入、運用できるのが特徴です。

 先述のとおり、国土交通省では公共交通機関のリアルタイム混雑情報提供システムの導入と普及に向けたガイドラインを策定中であり、手法やデータ利用について整理するとともに、現在運用中の各事業者の事例も参考にしていくとのことです。

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