JR九州が新たに送り出すD&S列車(観光列車)である特急「36ぷらす3」。その車窓には、「超電導リニアモーターカーの廃線跡」という珍しい物が見えます。
JR九州が2020年10月16日(金)から、新たなD&S列車(観光列車)である特急「36ぷらす3」を運行します。
先駆けて行われたその報道向け試乗会で、「超電導リニアモーターカーの廃線跡」に出会いました。
乗車した特急「36ぷらす3」は、土曜日に運行される宮崎空港11時25分発、別府16時46分着の「緑の路」コースです。
宮崎空港駅に入線する特急「36ぷらす3」(2020年10月10日、恵 知仁撮影)。
滑走路を眺めながら宮崎空港駅を発車したのち、ほどなく宮崎駅に停車。ホームからいくつものスマホが、この改造したての黒光りする真新しい列車へ向けられています。
そして11時53分ごろ、ドアが開かない運転停車(客扱いを行わない運行上の理由による停車)で佐土原駅(宮崎市)に到着。私が乗車している5号車に、客室乗務員がやってきました。
まるで観光バスのように、マイクのプラグを車両に隠されていた穴へ差し込みます。そしてこの5号車だけに向けたあいさつと案内のアナウンスが、肉声交じりで耳に飛び込んできました。
「本日ご案内いたしますクルーの○○と申します。1日よろしくお願いいたします……(中略)……中ほど3号車には、九州の食品を取りそろえておりますビュフェカウンターがございます……」
見たことない形になっていた鉄道の高架橋進行方向右手に日向灘をしばしば眺めながら、見晴らしの良いところでは徐行しつつ、特急「36ぷらす3」は快調に北上。
そんな進行方向右手に、しばらくすると高架橋が現れました。「宮崎実験線」の廃線跡です。
国鉄時代の1977(昭和52)年に開設された超電導リニアモーターカーの実験線で、全長7km。1996(平成8)年にそこでの走行試験は終了し、超電導リニアモーターカーの走行試験は、中央新幹線が開業した際にその一部になれるよう建設された山梨実験線へうつって、現在に至ります。
超電導リニアモーターカーが走らなくなった宮崎実験線はその後、メガソーラー太陽光発電所などへ転用されました。
特急「36ぷらす3」からその見た姿は、たくさんの太陽光パネルが断続的に連なり、およそ「鉄道の高架橋」のイメージにない、独特の形をしています。なおこの宮崎実験線についても、特急「36ぷらす3」の車内放送で紹介がありました。

「36ぷらす3」の各車両で行われた客室乗務員のあいさつ(2020年10月10日、恵 知仁撮影)。
特急「36ぷらす3」が走る日豊本線に沿って延びていた宮崎実験線が、「JR鉄道総合技術研究所」と書かれた建物で終わると、列車は12時32分ごろ、美々津駅(宮崎県日向市)に到着(運転停車)。
車内放送から「美々津は神武天皇が東征に出発した場所と伝わる」といった話が流れて、「36ぷらす3」は終点の別府に向け、再び北上を始めます。