新型コロナ禍、JALとANAがコストカットのため飛行機の数を減らす方針を明らかにしていますが、そのやり玉にあがるのがボーイング777です。実は世界記録を複数保有、開発には日本が深く関わるなど、多くの特徴を持つ面白い機体なのです。
新型コロナウイルスで航空業界全体が苦境に陥るなか、2020年10月ANA(全日空)が、その後JAL(日本航空)が、立て続けに自社が持つ飛行機の機数を整理することでコストをカットし、この状況を乗り切ることを発表しています。
2社ともに、おもな整理対象としているのは、これまで国内線と国際線の両方でメインとして使っていたボーイング777シリーズです。
ANAは2020年度内にボーイング777を各タイプ合わせて計22機、JALは年度内に、国際線のボーイング777-200ER全11機を退役(一部国内線へ転用)させるとのこと。さらにJALは、2022年度末までに国内線のボーイング777全13機を退役させる計画を示しています。
なおボーイング777シリーズの運用終了は日本に限った話ではなく、海外の航空会社も同様で、10月をもってアメリカのデルタ航空が全機を退役、日本発の最終便が羽田空港を30日に飛び立っています。
JALとANAのボーイング777型機(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。
新型コロナの影響で急に話題に上がるようになった感のあるボーイング777ですが、どのような経緯で誕生したのでしょう。
いまでこそ「777」という専用型式が付与されているものの、計画当初、ボーイングでは「767-X」と称して開発が始まりました。要はボーイング767型機をベースに巨大化を図り、当時全盛期だった「ジャンボ」ことボーイング747型機と、ロングセラー旅客機の767型との、中間の座席数を持つ双発の旅客機を作ろうというものだったのです。
双発機ながら「超ビッグ」! コスパに優れた面も開発は1980年代に始まりましたが、最終的に見た目こそ「大きな767っぽい」飛行機でありながら、「ジャンボ」こと747-400型機をモデルにしたコックピット、直径6.2mの太い真円型の胴体、新設計の主翼など、中身は全く違うものになります。
初飛行は1994(平成6)年6月12日に成功し、翌1995(平成7)年から商業運航をスタート。ボーイング777シリーズはデビュー後の売れ行きも好調で、基本系である777-200をはじめ、数タイプが製造されます。
先述のとおり「ジャンボと767型の間を……」というコンセプトから始まったモデルではあるものの、その後「ジャンボジェット」に比肩する人員数を収容可能な長胴型の開発にも着手します。これが、777-300型機です。
777-300は、「ジャンボジェット」こと747シリーズのように4発エンジンの2階建てではないにもかかわらず、2020年現在JALでは500席、ANAでは514席を配しています。航空会社ごとに違いはあるものの、これは747-400型機より約50席程度少なく、開発当時の更新対象とされた747SR(ショートレンジ、短距離型)にほぼ匹敵する席数を誇ります。

JALのボーイング777-200ER型機(2019年、乗りものニュース編集部撮影)。
また777シリーズは、エンジン数が2機と「ジャンボ」より少ないことから、燃費も大きく改善。「ニューヨーク発成田行きのフライトをする場合、747-400型機は35万(約15万9000kg)ポンドだったのに対し、777シリーズは約25万ポンド(約11万3400kg)の燃料消費」(JALの整備士)と、約3割も燃料の消費が抑えられているそうです。
ということは、コストパフォーマンスに優れるため、JAL、ANAともに、かつて「ジャンボ」が飛んでいた羽田発着の国内幹線、長距離国際線などを担う機体として大量導入されたのは、合理的といえるでしょう。
こうして747などの更新用として、777はどんどん大きくなった結果、その巨大さから「世界記録」を多数塗り替えるようにもなりました。
ギネス記録&日本との深い関係とは先述のとおり、777シリーズは非常に多くの座席数を配することができます。その客席数は、双発旅客機として世界最大を誇ったことも。また胴体の長さ73.9mは、エアバスの4発機、A340-600型機がデビューするまで世界最長でした。
ちなみに、この後777-200、777-300の後開発された航続距離延長長胴タイプ、777-300ER(ER=エクステンデッド・レンジ)に搭載されるゼネラル・エレクトリック社製の「GE90-115B」のエンジンは、「世界でもっとも強力なターボファンエンジン」としてギネス記録に認定されています。その直径は325cmで、これは150席クラスのボーイング737型機の胴体の大きさに匹敵します。

ANAのボーイング777-300ER型機(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。
なお、ボーイング777シリーズはその名のとおり、アメリカの大手航空機メーカーであるボーイング社が手掛けたものですが、実はパーツ製造の面から見ると、日本企業が大きく関与した「隠れ国産機」ともいえるのもポイントです。
777シリーズの製造には、多くの日の丸メーカーが携わっています。割合から見ると約20%ではあるものの、胴体部分の大半が「メイドインジャパン」。前・中部胴体パネル、主脚格納部、貨物扉の製造を川崎重工が、後部胴体、尾胴、出入口ドアの製造を三菱重工が手掛けているほか、島津製作所や新明和工業なども製造に参画しています。なお、767シリーズから始まったこの「メイドインジャパン」のボーイング機は、777、その後の787シリーズにも続いており、その担当割合も徐々に増えています。
777シリーズの進化は、まだ止まることはなく、もっと大型化した「777X」のデビューも控えています。2020年に初飛行した777Xシリーズの777-9の全長は約77m。実用化されれば現在世界最長の長さを持つ747-8を抜き去り、再び777シリーズが頂点に立つことになります。
なお、777XはANAが2021年に導入予定でしたが、同社によると、新型コロナウイルスの影響で、これは延期になるとのことです。