飛行機に使用する「ジェット燃料」は港から敷地内まで、タンカーやタンクローリーで運ばれるのが一般的。しかし成田空港だけ国内唯一のレアな方法を用いているそうです。

どんなやり方で、なぜなのか、空港運営会社に聞きました。

知る人ぞ知る千葉県内を走る47kmの超ロングパイプ

 多くの空港で見られるのが、空港に備え付けられた巨大な燃料タンクです。一般的にこのなかに貯蔵される、飛行機を飛ばすための「ジェット燃料」は、沿海部にある製油所で精製製造されると、出荷はタンカーやタンクローリーなどを用いるのが一般的です。

 ところが成田空港だけは、このいずれでもない国内唯一の運び方で燃料が供給されているといいます。そこで、同空港を運営するNAA(成田国際空港株式会社)の給油事業部に話を聞くと、そのユニークなプロセスを次のように解説します。

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成田空港を出発するNCAの貨物機。
後ろに見えるのが燃料タンク(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。

「成田空港で使用される燃料は、輸入した原油を国内の製油所でジェット燃料として精製したのち、タンカーで運ばれ、千葉市の東京湾沿いにある燃料の受け入れ施設に上げられます。パイプの長さは47kmほどに及びます。昼は管内のメンテナンスを実施していることから、パイプを使って空港へ燃料を輸送するのは、実は夜がメインなのです。ちなみに、羽田や関西空港などは海に面しているので、タンカーの受け入れ施設自体が空港にありますが、成田空港は内陸にあるので、この手法をとっています」(NAA給油事業部)

 つまり、東京湾に面した千葉市から空港のある成田市まで約50kmにわたって送油用パイプが繋がっている、というのです。

 このユニークなパイプラインが完成したのは、同空港が開港してから5年後の1983(昭和58年)。

それまでは、暫定的に鉄道を用いて燃料を輸送していました。千葉港から伸びるパイプのルートは千葉市内を抜けたのち、宮野木ジャンクション(千葉市稲毛区)から東関東自動車道に沿うような形で空港まで繋がっています。

 なお国内で、内陸部にある成田に次ぐ規模が大きな空港としては、新千歳空港が挙げられます。NAA給油事業部によると、こちらは成田空港と違って、タンクローリーを用いて陸送で燃料を運んでいるといいます。

新千歳は陸送なのに…なぜ成田はパイプ?

 同じような内陸にある大空港ながらも、新千歳空港は陸送、一方で成田空港はユニークなパイプによる送油を実施しているのには、どのような違いがあるのでしょうか。NAA給油事業部の担当者は、次のように話します。

「成田空港は国際線の発着が非常に多いので、フライト時間が長くなるぶん、1機あたりに入れなければならない燃料の量が非常に多いのです。新千歳空港は発着回数こそ多いものの、国内線がメインなので、成田ほど多くの燃料を必要としない、というのもあります」(NAA給油事業部)

実は国内唯一 レアな「成田空港への燃料の届け方」でもなぜ? 運営会社に聞く理由とは

成田空港で燃料を給油する様子(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。

 ちなみに成田空港にはパイプを経由して届いた燃料を複数のタンクに貯蔵したのち、機体へ燃料を送り込んでいますが、「この日はここのタンクの燃料を使う」(NAA給油事業部)といった風に区分けしているのだそうです。

 なお、2020年11月現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響で成田空港の発着数が減っていることから、燃料の使用量も減少しています。そのためNAAは「電気代が比較的安価な土日に、まとめて燃料をパイプで輸送するようにしている」(NAA給油事業部)など工夫をしているそうです。