五輪イヤー、そして新型コロナ禍と目まぐるしい変化のあった2020年。羽田空港には、その世相を反映した飛行機が飛来しました。
2020年は本来、東京オリンピック・パラリンピックが開催される、まさに「五輪イヤー」になるはずでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大が世界中に大きな影響を及ぼしたことで、街の空気は大きく変わってしまいました。結果、羽田に現れた飛行機も、その世相を色濃く受けたものとなりました。
羽田空港。写真は2020年1月のもの(2020年1月、乗りものニュース編集部撮影)。
新型コロナウイルスの影響が出始めた2月17日、同空港に現れたのは2機の「ジャンボジェット」ことボーイング747型機。ともに窓のない貨物専用機で、片方は白ベースに赤と金のラインが入っていたもの、そしてもう1機は真っ白な胴体のもの。2機とも成田空港ではよく見かけることはありますが、羽田空港で見ることは珍しい「ジャンボ」でした。
これらを飛ばしていたのは、アメリカの貨物専用航空会社であるカリッタ航空。新型コロナウイルス集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していたアメリカ人旅客を救援するためのチャーター機だったといいます。このフライトでは、貨物専用機に仮設の座席を配し乗客を乗せて運航するという、羽田空港では珍しい運用をとっていました。
1フライトで終わった特別機&利用客減った今だけ羽田にいるANA機3月にはオリンピックイヤーならではの飛行機が羽田空港に出現。
また、機体前方には「東京オリンピック」エンブレムを挟んで、JAL(日本航空)とANA(全日空)の2社の企業ロゴが並んでおり、その点でも唯一のカラーリングだったといえるでしょう。
「TOKYO2020号」は、ギリシャの首都アテネで採火された聖火を日本に輸送するため、18日に羽田空港を出発、ギリシャで聖火を積み込むと2日後の3月20日に宮城県にある航空自衛隊松島基地に戻ってきました。なお、18日の出発後、同機はこの塗装で再び羽田空港に姿を現すことはありませんでした。

羽田空港に飛来したANAのボンバルディアDHC8-Q400型機(2020年10月、乗りものニュース編集部撮影)。
その後、新型コロナウイルス感染拡大によって日本でも緊急事態宣言が発出。多くの飛行機が羽を休める事態になります。その後同宣言は5月25日に解除されたものの、羽田空港に姿を見せる珍しい飛行機は、コロナ禍に関係したものとなります。
6月、ANAなどが乗り入れる第2ターミナルに、ANAグループが唯一保有するターボプロップ機、「ボンQ」ことボンバルディアDHC8-Q400型機が出現します。これはコロナ禍で航空需要が減退するなか、機材が小型化されたことで、羽田でも6年ぶりに乗り入れるようになったものです。「ボンQ」はいったん7月後半までで羽田から姿を消しますが、10月に再び羽田発着路線に投入されています。
なお、同モデルを羽田空港に投入するさい、中心となって動いたANAの担当者は「もともと羽田空港には、DHC8-Q400型機を導入する体制はありませんでした。通常旅客機は、そのモデルの整備資格を保有する整備士がいなければ、その空港へ発着はできません。そこで、社内においてDHC8-Q400型機の整備資格を持つ人を集めてもらうといったことも実施しました」と当時のことを振り返ります。
機首にマスクをつけた飛行機も出現!10月に入ると、羽田には海外から「コロナ禍」ゆえに生まれた珍しい飛行機がやってきます。

ガルーダ・インドネシア航空の「マスク塗装機」(画像:ガルーダ・インドネシア航空)。
9日、ジャカルタ(インドネシア)からやってきたガルーダ・インドネシア航空のエアバスA330-900neo型機は、飛行機が「マスク」をつけているような、特別なデザインが施されていました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で導入されたもので、機首のマスク塗装のほか、胴体側面にインドネシア語で「マスクを着けよう」というメッセージも描かれています。
12月現在、同社の「マスク塗装機」は5機まで数を増やしており、それぞれ違うデザインが施されています。なお12月6日には羽田に、別の「マスク塗装機」が飛来しています。
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ちなみに羽田特有ではないものの、同空港を拠点とするJAL(日本航空)では、世相を反映した特別デザイン機が9月にデビュー。胴体底部に疫病をおさめるといわれる妖怪「アマビエ」が描かれているもので、一見ごく一般的なJAL機ですが、空に飛び立った状態の機体を下から見上げると、「アマビエ」が姿を見せるという、一風変わったレア機でした。
ただし、こちらは10月から「行こうぜニッポン」のデカールが貼られる形でアップデート。